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第8話 スキルのシステム

今回は全然面白くないので飛ばしてもらってもいいかな、と思います。

2/15(水)レベル直しました。マナシステムも廃止しました。



「ミスト、ちょっと止まるにゃ」

「ん?」


 湿地帯への行きがけに、あーちゃんが突如待てをしてきた。敵襲だろうか。あーちゃんは俺を振り返り――


「今更思い出したにゃ。ミスト、お前どんなスキルが使えるにゃ」


 不意にそう言った。


「どのスキルが使えるかってどうやったら分かるんだ?」

「そのスキルブックに魔力をこめるだけにゃ」


 あーちゃんは、俺のベルトポーチに入っていたスキルブックを取り出し、トントンとスキルブックを叩いた。因みに、この幅広のベルトポーチもあーちゃんに買って貰った。


 俺があーちゃんからスキルブックを受け取り魔力をこめると、スキルブックの中から青白い光が漏れ出て、暫くした後燐光を放った。


「中を見てみるにゃ」


 そんなあーちゃんの声に従いスキルブックを開くと、盗賊系スキル≪夜目≫や魔法使い系スキル≪風刃≫、全職専用スキル≪所持品箱アイテムボックス≫に弓使い系スキル≪追尾≫など、先程眺めていたスキルのいくつかが燦然と輝いていた。

 輝いているスキルは習得可能なスキルという意味だろうか。俺はまだ異世界に来てスキル習得のキーになりそうなことは何もしていないので、突然スキルが使えるようになった、なんてことはないだろう。

 マスターが使っていたと思われる短剣スキル≪ソニックブーム≫はどうだろうか、あれは格好良かったので使ってみたい。

 そう思い、≪ソニックブーム≫の文字を見てみると――



 輝いていなかった。


あぁ、残念だ。俺はこのスキルが使えないらしい。


「ちょっと見してみるにゃミスト」

「あ」


 俺がスキルブックの中を見ていると、あーちゃんが俺のスキルブックを手に取った。

 いや、こういうのは本職に見せた方が良いだろう。俺のスキル情報が流出するのは避けたいが、まだスキルを覚えていないんだし大丈夫だろう。


「…………にゃ……」

「……ん?」


 俺のスキルブックを見て、あーちゃんが突如固まった。


「どうした、あーちゃん? 何か変なことが?」

「なんでミスト、お前こんなにスキル使えるにゃ」


 ……え?


「冒険者登録もしてないルーキーじゃにゃかったのか……?」

「……」


 あーちゃんの言っていることが全く理解出来ない。俺が……スキルを使える……? 俺はスキルを使えるのか……? そもそもこの世界でのスキルの扱いというのはどういうものなんだ。スキルを使えるということに驚いているのか、使えるスキルの個数に驚いているのか。だがどちらにせよ、俺のスキルブックを見てあーちゃんが不信感を持ったのは間違いない。

 なら、結果的には俺があーちゃんを騙していたということになるのか。あーちゃんは異様な事態に直面したかの如く――いや、実際直面しているのだろうが――落ち着きなく手をもにょもにょと動かしている。

 そして何度か俺をちらちらと上目遣いで見やり、固まる。


 日本にいた頃が思い出された。クラスメイトの俺を卑下した様な、蔑んだような目。俺を拒絶するように、近くにいることに嫌悪感を抱くように、不快感を露わにするかのように、汚物を扱うかのように、悪意を持って見られる。


 あーちゃんの様子を見て、急激にトラウマがフラッシュバックした。あーちゃんが、不安げな顔をする。


 あぁ、あーちゃんもそうなるのか……。


 背筋が、寒くなる。


「もしかして冒険者登録してにゃいだけで、窃盗に手を染める盗賊稼業の人間……? あの時きょろきょろしてたのは、目標ターゲットを定めてたってことにゃのか……?」


 あーちゃんは、俺の背景バックボーンを推測する。違う、違うんだ。それは邪推なんだ。俺は全力で、かぶりを振る。


 俺はまた嫌われてしまうのか、異世界に来てもまた尚、嫌われてしまうのか。


 あーちゃんは口を開き――


「……だよにゃ! お前のあの動き、どう見てもルーキーに決まってるにゃ! ≪隠密行動ステルス≫も使ってにゃかったのに、そうに決まってるよにゃ!」


 そう、言った。


「そ……」


 俺は――


「そ……そうなんだよ! 俺全然ルーキーだから!」

「そっ……そうだよにゃ! にゃははははは……ははは」


 あーちゃんに同意した。事実、ルーキーであることに間違いはないのだが、異世界召喚された人間である、ということは隠しているため多少遺恨が残る。

 なんとなく気まずい雰囲気だ。


 盗賊のことは、あのおばちゃんからもマスターからもある程度聞き及んでいた。

 冒険者稼業を生業とする盗賊と、墓荒らしや窃盗などの犯罪行為を生業にする盗賊。盗賊は主にその二種類に大別され、決して交わることのない水と油。法を守る盗賊と秩序を乱す盗賊、その二種類がいると聞いていた。


 あーちゃんが一瞬不安気な顔をしたのも、俺が盗賊稼業を生業とする人間だったのか、と思ったからだろう。まだ少し不安そうに顔を俯かせている。俺は、あーちゃんの不安を払拭するように――


「ほ、ほら! 俺のレベル三だろ? 俺はルーキーだって!」


 ステータスプレートを見せた。

 冒険者ギルドで聞いたが、レベルは公開方式らしいので問題ないだろう。因みに、ステータスと名前は伏せておいた。


 あーちゃんは俺のステータスプレートに目を落とし――


「はぁ~……良かったにゃ」


 ほっと安堵した。


「もしミストが盗賊稼業に身を落としてたら……凄い怖かったにゃ」

「はは……」


 あーちゃんは、体を震わせる。まぁ初めてのギルド員が盗賊稼業の人間だなんて知ったらそりゃあ恐ろしいだろう。冒険者としてのクエストをこなさずに窃盗や強盗を繰り返すような未来が容易に想像できる。


「でも、なんでミストは色んなスキルが使えるにゃ?」

「あ……」


 すっかり忘れていた。何故俺が様々なスキルを使えるのか。

 俺がスキルを使えるということは、あの光っている文字は使えるスキル、ということか。俺はてっきり習得可能なスキルのことかと思っていた。

 なら、≪ソニックブーム≫も習得可能ということなのだろうか。


「それも、全部熟練度最高値でにゃ」

「……え?」


 熟練度が最高値? スキルにも熟練度なんてもんがあったのか。よくよくスキルの文字を見てみると、全てのスキルが金色に光っている。

 何故スキルがいくつか使えるのか、何故熟練度が最高値なのか、決まっているだろう。


 異世界召喚された人間だからだ。


 だが、それを言うことは出来ない。言えばあーちゃんとの関係が破綻する気がする。それに、誰かに聞かれていたりあーちゃん自身がリビア王国の放った間者だったなら、異世界召喚された後にリビア王国から逃げ出した、ということもバレかねない。

 俺は卑怯にもそう思い、嘘をつくことにした。


「……わからない」

「……そっか」


 あーちゃんは、うんうんと呻る。少し悪いが、まだ会って一日の人間を信用して俺自身の秘密を言う事は出来ない。

 あーちゃんは暫くうんうんと呻り、答えを出したのか呻るのを止め、真剣そのものな顔で――


「ミストは、天才にゃのかもしれにゃいにゃ……」


そう、言った。


そんなわけないだろう。やはり、あーちゃんはバカだ。だが、今回ばかりはバカで良かったと思った。

 取り敢えずは、俺が天才だから、そういうことにしておこう。しかし、スキルのシステムについてはよく知っておかなければならない。またスキル関連で大変なことになりかねない。


「あーちゃん、スキルについて教えてくれ」


 俺は、スキルについてあーちゃんから説明を受けることにした。



 スキルは全職対応スキルの他に、盗賊や弓使い等が使用するスキルがあり、盗賊でも戦士や魔法使いのスキルを習得し使用することも出来るが、威力が三分の一になる。

 魔法使いのスキルは便利なものが多く、風魔法を応用して弓使いのスキル威力の向上を図ることが出来る。俺が使えるスキルは風魔法系が多かったので僥倖だ。


 スキルには熟練度があり、使用すればするほど熟練度が向上し、それと共に威力や精度が向上し、発光しているスキルの色が変わるごとに熟練度の向上を視覚で判別することが出来る。金色に発光していたのが熟練度最高であり、最高値に達するまでに紫や青に光ったりもする。


 要約すれば、こういうことらしい。


 だが、まさか俺があんなにスキルを使用できるとは思っていなかったから、スキルブックを見せたのは間違いだったな。俺のスキル情報が一部見られてしまった。


 俺はあーちゃんに、スキルについて教わりながらも歩を進め、ウィングスネークが生息しているという湿地帯に到着した。


 俺はあーちゃんからもらったマフラーで鼻元あたりまでを隠し、パイロットキャップのゴーグルを装着した。


 

 

 さぁ、野生の魔物との初めての戦闘の始まりだ。




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