謎の巻き戻し屋
以前短編として掲載していましたが後に話が頭の中に入ってきたので連載化しました。
『あの時ああすればよかった!!』
『あの時こうすればあんなことにはならなかったのに!!』
と思う読者はいるだろう
実際この小説を書いている作者ですら何度か思ったことがあるくらいだ。
だがもしその『ああすれば』や『こうすれば』がやり直せるとしたら
あなたはどうしますか?
東京・とあるコンビニ内
「これください 」
「きみ、いま手が離せないからレジを頼む! 」
店長が俺にそう告げる。
「はいはいっと 」
俺の名は火祭仁太郎。通称ヒマジン。28歳
職業は一応コンビニ店員だが
「えぇと、お客さん、何でこんなに買うんすか!?少しは店員の気持ちを理解してくださいよ 」
「はぁっ!? 」
こんな態度ばかりしてるからか
「お前はこれでもう何度目だと思ってるんだ!!お前なんてクビだーっ!! 」
かれこれもう三回もバイトをクビにされている。
「ケッ!こんな店、二度と来るかよ!! 」
そう言った俺が自宅に帰ると
「お…おかえりなさいあなた 」
こいつは俺の妻の火祭昌子
「あなた、店から電話がきたわよ。またクビにされたんだって 」
昌子が俺に向かって言うと
「うるせぇ!!俺のことなんだから俺の好きにさせろってんだ!! 」
バチィンッ!!
「きゃっ!? 」
俺は昌子を叩いた。
気の弱い昌子は反撃もできずただただ叩かれるだけだった。
「じゃあ俺はパチンコにでも行ってくるからな 」
俺はそんな昌子を置いてパチンコに出掛けていった。
だけど俺がこんな性格になったのは俺のせいじゃねぇ!!
こうなったのもあの時が原因だ!
「あぁ、タイムマシンにでも乗って過去に戻りたいぜ! 」
俺がそう思ったその時だった。
「なぁなぁ知ってるか?巻き戻し屋の話をさ 」
「巻き戻し屋?何だよそれ? 」
「聞いた話だと、いつでも好きな過去に戻ってやり直しができるんだってよ 」
「そんな話があるのかよ!? 」
「まぁ噂だけどな 」
その話を偶然聞いた俺は
「これは神様がくれたチャンスだ!巻き戻し屋を見つけてあの時に戻らせてもらうぜ! 」
その日から俺は巻き戻し屋を探しまくった。
だがそう簡単には見つからず、三日が経ったある日のこと
「ちくしょう!巻き戻し屋なんてやっぱ噂だけの存在かよ! 」
そう思った俺が路地裏に入ったその時だった。
「んっ?何だありゃ? 」
バンッ!!
俺は路地裏の奥にある小さな店を見つけた。
気になった俺が近づいてみると
「まさか!?ここが!? 」
そのまさからしく
「ここが巻き戻し屋かよ!? 」
俺はついに巻き戻し屋を発見した。
すると
「いらっしゃい 」
ぬっ!
店主らしい男が店から現れた。
何だよ!?魔法使いみたいな爺さんが出てくるかと思ったら俺と同い年くらいの男じゃねぇか
ホントに巻き戻しができるのかね
「あんたお客かい? 」
こうなったら爺さんだろうが若者だろうが時を戻せるのなら誰だって構わねぇ!
「あんたのことは噂で聞いた!俺は過去に戻りたい!!そして… 」
「婆さんを助けたいんだ!! 」
これが俺の過去に戻りたい理由だ。
すると巻き戻し屋は
「ふぅん、まぁあんたが何をしようが俺には関係ないから別に構わないよ。ただし注意点が二つある 」
「注意点? 」
「そう。一つはやり直せるのは一度のみ!もう一つはあんたに何があっても俺には関係なし!この二つさえ守ってくれればタダで戻らせてやるよ 」
「タダ!?マジか!? 」
てっきり魂でも取られるのかと思ったぜ!?
「マジさ。わかったならこの時計を見ながら戻りたい時間を頭に思い浮かばせな 」
「お…おぉ!? 」
そして俺は奴が取り出した懐中時計を見つめてあの日を思い出した。
あれは二年前の〇月×日の△時頃だった。
その後
「うっ… 」
バタンッ!!
俺は意識を失ったのだった。
やがて目が覚めると
「はっ!?俺は一体!? 」
目を覚ました俺はまず時間を確認しようと携帯電話を取り出した。
すると
「間違いない!?今は二年前の〇月×日△時頃だ!? 」
俺は本当に時を戻ったんだ!?
「おっといけねぇ!もうすぐ婆さんが危ないんだ!? 」
過去に戻った目的を思い出した俺は直ぐ様駅の踏切へ向かった。
この日、婆さんが電車に引かれるのを助けるために!!
そして俺が踏切にたどり着くと
「はぁはぁ!?間に合ったな!? 」
俺は何とか事件が起きる前に踏切にたどり着いた。
この数分後、婆さんが電車に引かれそうになるのだが本当に起こるのだろうか?
と、俺が思ったその直後
「ひいぃっ!? 」
あの婆さんが線路で立ち往生していた。
ブオォッ…!!
そしてあの時と同じく、電車が走ってきた。
あの時の俺はただ見ているしかなかったが…
「婆さん!! 」
ダッ!
俺は婆さんを救うため線路へと飛び出し
ガバッ!!
見事婆さんを助け出した。
「あ…ありがとうございます 」
「い…いいってことよ!? 」
やった婆さんを助けたぜ!
これで俺は…
大金持ちだ!!
何故ならこの婆さんは
「私を助けてくれたお礼です。どうぞ受け取ってください 」
ガチャッ!!
そう言うと婆さんは黒服達が用意したトランクを数個取り出した。
実はこの婆さん、とある大会社の会長であり
二年前は大学生が助けたためお金をもらい損ねたが
今回は俺がもらうわけだ!
その金は五億!
当時は側にいた大学生が婆さん救って五億もらうというニュースが流れたからな
悪いが大学生よ、五億は俺がもらったぜ!
「はぁはぁ…これで俺は大金持ちだ!五億あれば数年は遊んで暮らせるぜ! 」
五億のトランクを持ち帰った俺は自宅の庭に埋めたのだった。
そして埋め終わったその時だった。
くらりっ!
「うっ!? 」
俺は再び気を失ってしまった。
それから少しすると
「はっ!?ここは!? 」
目が覚めた俺は巻き戻し屋と出会った路地裏にいた。
「間違いない!今は二年後の現在、ということは自宅の庭に五億が! 」
ダッ!
これで俺は大金持ちだ!
二年経過してるから五億は少しは減ってるだろうけど最低でも一億くらいは残っているはず
そう思った俺は直ぐ様自宅に帰ったのだが
俺を待っていたのは…
「な…何だよこれ!? 」
バァンッ!!
自宅があった場所は何故か犬小屋が建っていた。
しかも名前が…
「火祭仁太郎…、俺の名前じゃねぇか!? 」
何で俺の自宅が犬小屋に!?
驚いた俺だが更にそれ以上に驚いたのが
「やっと来たようだねこのダメ亭主! 」
バァンッ!!
物凄い太ったおばさんと化した昌子だった。
何で!?俺はパラレルワールドにでも来ちまったのか!?
「さっさと金を稼いでこいって行っただろうが!!もうこうなったらあんたの臓器でも売って金作ってやるよ! 」
何がどうなってるんだ!?
俺が?を浮かべていると
「あんたは最悪な道を選んだようだね 」
「お…お前は!? 」
俺の目の前に巻き戻し屋が現れた
だが
「何を言ってんだい!目がボケちまったのかい!! 」
どうやら巻き戻し屋は俺にしか見えないらしい
「あんたは知らないようだから教えてやるよ。あんたがミスしたのは金を庭に埋めたことさ、実は埋めた時に嫁さんは見ていたんだよ。あんたが庭にトランクを埋めたところを 」
なにっ!?
「それを知った嫁さんはトランクを掘り起こしてすっかり浪費妻になってしまい、あんたは犬同様の扱い、嫁さんは豪勢な生活を送るのさ 」
何だとっ!?
「ちょっと待て!?だったらもう一度巻き戻しを!? 」
「言ったはずだぜ。巻き戻しは一度のみだとな 」
「そ…そんなぁーっ!? 」
「何を叫んでるんだい!!さっさとあんたの臓器を売りにいくよ!! 」
「た…助けてくれ〜!? 」
そしてその後の俺の行方を知る奴はいないのだった。
「さて、今の人のように時を戻ってお金儲けを企もうと考えた人、最後まで考えないと彼のようになるかもしれません。ではまた出会う時まで… 」