それが、僕の答え-5
「とにかくだ!」
そこで、今は楽しく談話している場合ではないとクルルとアリスを振りほどいて鏡はセイジに顔を向ける。
「俺たちにはあんたの力も必要だ……手を貸してくれるんだろう?」
その問いかけに、セイジは無表情のまま素直に頷いて答えた。
「なら教えてくれ、グリドニア王国を管理する地下施設……エデンはいったいどこにあるんだ? とりあえずアースの世界で合流を果たしたい」
「ふん……来たいならいつでも来ればいい。空で待ってる」
「空?」
「ディルベルトかダークドラゴンに聞くといい。俺は先に戻ってお前たちが来るのを待っている……後は頼んだぞ」
『……仰せの通りに』
不可解な言葉を言い残し、セイジはここに来た時と同じく光を放つ魔法陣に包まれてこの場から去った。
「空ってどういうことなの?」
『ふむ……我にも信じがたいが、先程セイジ様より情報をいただいた。エデンは今……空に浮遊している。これを見れば早いか?』
そう言うと、ダークドラゴンは一同の目の前にディスプレイを表示させ、アース上の地図を映し出した。
『セイジ様は今……ここにいる』
そして、日本とアメリカとロシアの丁度中心の位置にある何もない海の広がる空間を指差すと、そこが自分たちが目指すべき場所であることを告げた。
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「遂に……やってきましたね。まさかこんなところにあるとは……!」
空に浮かんだ広大な島を視界に、ティナが感嘆の声をあげる。
クラスチェンジの試練から数日後、アースクリアからアースへと戻った鏡たちは現在、アースに置いてきた仲間たちを加えて各々ラストスタンドに搭乗してアメリカ、ロシア、日本の地の中心に位置する空域を移動していた。
本来であれば何もあるはずがない雲の中に紛れて、大きな一本の木がランドマークとなっている島が存在していた。細かな土塊も輪っか状に島の周囲を浮遊しており、島の上はそこに地下施設があるとは思えないほどに自然豊かで、まるで神々が住み暮らす聖域を表現しているかのようだった。
「やっぱり……あの時、雲の中に消えてったのは見間違いじゃなかったんだな」
「あの時って……なんですか?」
「あんたはいなかったからわからないだろうけど、私は一回見てるんだよ……あの空に浮かぶ島。鏡たちと一緒にガーディアンに攻めこもうとした時に一度だけな。なんかでっかいのが雲の中に消えてったって……ずっと心残りだったんだよ」
何の話かさっぱりわからず、ティナは首を傾げる。操縦席で話を聞いていた鏡も、暫く何のことかわからず首を傾げていたが、すぐに思い出したかのように「あ!」と閃いた顔を見せた。
「……思い出した。そういえばなんか見たって言ってたな? 確かアリスが、イルカが泳いでるのを見てめちゃくちゃはしゃいでた時だったっけか?」
『ちょ! 鏡さん! ボクはしゃいでないからね⁉ 皆に声が聞こえるように通信回線開いてるんだから妙なこと言わないで!』
「うわぁぁぁ! イルカさんだぁぁああ! 可愛いよふぇぇぇえ! って言ってたぞ」
『言ってない言ってない言ってない言ってない!』
その場にいないからか、言いたい放題の鏡にアリスが鏡の目の前にディスプレイを出現させて詰め寄る。対する鏡は、「ちょ、前見えないんだけど」と本気で困っていた。
『お父!』
直後、アリスが出現させたディスプレイのすぐ横に並ぶように、タカコを操縦者にウルガとピッタを乗せたラストスタンドから通信が入る。
『…………寂しいです』
「ピッタちゃん? それ今言うことじゃないよね? もうちょっと我慢してもらえないかな? 出発前にたくさんかまってあげたでしょ? あのね? 本格的に何も見えないの」
いよいよ視界にアリスとピッタしか見えなくなり、鏡の乗るラストスタンドが上下左右にふらつき始めた。
『村人よ……このタイミングだから聞くが、何故フラウがアースに出てきたんだ? フラウはクルルのように強くない。僧侶という能ある役割を持ちながら毎日のようにグータラと遊びふけていたからな……何の戦力にもならないんだぞ⁉ 何故だ⁉』
『ぬぁぁぁあああ父上! 身内の恥をわざわざ晒すような真似しないでほしいのじゃ! 妾は妾なりに考えて自分の意志でここにきているのじゃ! 子供扱いせんでくれ!』
「いや、このタイミングで聞くことじゃないからね? それと君たち本当に邪魔だからそろそろディスプレイ消してくれませんかね?」
諦めたのか、鏡は操縦桿から手を離して頭に手を回して「ふ~」と一息つく。直後、アトラクションのようにラストスタンドが更に激しく上下左右に動き出し、耐えきれずティナが「せめて握っててください」と鏡の頭を全力で殴りつけた。
『さて……お話はそこまでにして、そろそろ突入しないかい?』
『そうだそうだ。とりあえずお前らの土産話は後でたっぷり聞いてやるから、先にまずセイジに話をさせろ』
「ああ……そうだな」
無駄な会話に痺れを切らしたのか、別のラストスタンドに搭乗する来栖とライアンから音声だけの通信が入る。
今回、ノアの管轄者である來栖と、ガーディアンの管轄者であるライアンも同行していた。というのも、セイジと直接言葉を交わして、今後どうするかの方針を決めるためだ。
会話を続けていつまでたっても島に着陸しようとしない一同を待ってられないのか、來栖が先陣をきって浮遊したアメリカの地下施設、エデンへと降り立つ。
追って鏡たちもエデンの陸地へとラストスタンドを降ろすと、島の陸地でずっと鏡たちが降りてくるのをずっと待っていたのか、アースクリア内で見た姿と全く同じ格好をしたセイジが、イラついた様子で眼鏡をくいっと上にあげながら待ち構えていた。
「何を遊んでいる……? 空中でいつまでもちんたらちんたらと遊びやがって……俺を馬鹿にしているのか? 折角出迎えってやったのに損した気分だ」
「元はと言えば、君が回りくどいことをしてくれたせいじゃないか……君に言われたくないよ」
「おいおい喧嘩するなよお前ら」
到着するやいなや、全員ラストスタンドから飛び降りて浮遊する島に足をつける。先に降りていた來栖は、セイジと近距離で今にも殴りかかりそうな勢いで睨み合っていた。慌てて來栖と共に先に降りていたライアンが二人の仲裁に入った。
「おいおいやめろよな、折角俺たちが苦労して説得したんだから……殺し合いなんてするなよ」
「いやいや、喧嘩を勝手に殺し合いにまで発展させるな」
この世の全ての絶望を知ったかのようなわざとらしい悲しい顔で語る鏡に、ライアンがすかさツッコミを入れる。
「まあいい……今はライアンの言葉通り喧嘩している場合じゃないか。プランは練ってある……後はどれくらいの戦力が集まるかどうかだな」
「わかっているなら変な挑発はしないで欲しいな。それより……わかっているんだよね? 千年……ようやくだ。ようやく条件は揃ったんだ」
「わかっている……」
セイジはそう言うと背中を見せて、エデンの施設内へと向けて歩き始めた。そのあとに鏡たちも続く。
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