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LV999の村人  作者: 星月子猫
第六部
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それが、僕の答え-4

「これで……認めてもらえるな?」


「ふん……いいだろう。認めてやる。少なくとも……最後にあがく価値はあるとな」


 一同は試練の間から意識を肉体へと戻し、再び王の間へと戻ってきていた。


 鏡の問いかけに、変わらずふてぶてしく髪の毛をかき上げながら玉座に座るディルベルトの隣で、一段とたくましい顔つきになって戻ってきた一同に視線を向けながら、セイジは観念してそう答える。


 結果的に、クラスチェンジを果たしたのは元々高レベルのタカコ、クルル、ロイド、フローネ、そしてレックスの五人だけだった。


 予定の人数クラスチェンジを果たした一同を前に、セイジも認めざるを得なく、それぞれが証明のために開いたステータスウインドウへと目を向け、変化を確認する。



名前……タカコ・ビルダー

役割……粉砕者

覚醒能力……理性で抑えられていた力は今、解き放たれた。拳のみならず、身体全てを駆使して全てを粉砕し、全てを塵へと変える。



 タカコのクラスチェンジの条件は、理性を解き放つことができるかどうかだった。今まで理性が働きかけて抑えられていた力が解放され、今まで拳による攻撃のみ防御力無視だったのが、タックルで攻撃しても防御力を無視することができるという、とんでもない化物となる。


 油断していると、殺されてしまうんじゃないかと全員が恐怖に顔を歪めたのは言うまでもない。



名前……神無月=クルル・ヘキサルドリア

役割……大賢者

覚醒能力……真なる理を得た者の放つ魔法は、常軌を逸した力を秘める。それは魔法がその者に力を貸すのではなく、その者が魔法に力を貸すのだ。



 クルルのクラスチェンジの条件は、見極めることだった。無数の敵と戦う最中に殺気を放っていない者、殺気を放っているが戦う意志のない者、そういった者が紛れ込んでいることにクルルは気付いた。そして、自分に敵意を持った、確実に敵と認識できる相手を倒すことで悟りを開いたのだ。


 必ずしも命を奪うことが正しいとは限らないと。本当に戦うべき相手を見失ってはいけないと。


 それによって得た力は大きかった。殺すも生かすもその者次第。それを表現するかのように魔法はかつての威力を優に超え、回復魔法はどんな致命傷でも瞬く間に治療してしまう。



名前……ロイド・テルミン

役割……剣聖

覚醒能力……その者に窮地は存在しない。生きている限り、闇を切り裂き希望へと繋ぎ続ける。仮に窮地が訪れることがあるとするならば、その者は既にこの世にいないだろう。



 既に完成された人間であるロイドのクラスチェンジの条件は、非常にシンプルだった。


 それは、戦うための手段を常に補えるかどうか。ロイドは常に状況を見て攻め方を考える。だが、それでは駄目なのだと、大量に積まれた武器を目の当たりにして確信した。『状況を作り出せるようにならないと駄目なのだ』と。


 その決意からロイドが得た力は、己が闘気を形状化させ、武器とする力だった。たとえ丸腰であっても、状況を覆すことのできる物体を生み出す力に、鏡とは別種の計り知れなさを感じた。



名前……フローネ・ヴァイルシュタイン

役割……操り師

覚醒能力……その者は愛ゆえに、魔力を経由して物を操る。繋がりさえあれば、それは我が身と同じく力を発揮する分身となるだろう。そう、それは愛ゆえに。



 フローネのクラスチェンジの条件も、至ってシンプルだった。それは包み隠さないこと。好きなものを押し出すことのできる勇気をもつことだった。


 クラスチェンジにより、フローネは物を経由して相手に呪術をかけられるようになっていた。それだけではなく、魔力によって縫いぐるみを動かすことのできる強い呪術も習得している。


 その呪術の本当に恐ろしい部分は、魂がなければ、何でも操れるということだが、それを知るのは、フローネだけである。


「そして……レックスか。全員、随分と規格外な力を得てくれたものだ」


 クラスチェンジを果たした面々の力を素直に認め、セイジは拍手喝采を一同に送る。


「あーあー……無理とはわかってたけど、羨ましいな~。あたしも覚醒したかったかなー」


「正直意味わからなかったからな……私も油機も顔を見合わせて『どうやったらこれ……クラスチェンジできるんだ?』ってやりたいことやってただけだ。本当に……試練だったのかあれ?」


「え? メリーちゃん、やりたいことやってたの? 何してたの? ねぇねぇ」


「う……うるさい」


 結局、終始同じことを続けていた油機とメリーは、まだ試練の内容が腑に落ちていないのか、ブー垂れながら後頭部に手を回す。


「ティナは……なんか惜しいところまで言ってたような気がしたんだけどな」


「私は……全然無理でしたよ?」


「そうか? セイジもなんかもう少しのところまできてるとか言ってたけど?」


「だとしても……多分無理です。私は……傷ついた人を見捨てること……できないんじゃなくて、したくありませんから」


 言葉の意味が分からず、鏡は首を傾げる。


「欲張りさんなんですよ私は、あれもこれも欲しいって思っちゃうタイプなんです。だから、私にクラスチェンジはちょっと難しそうです」


 むしろ、クラスチェンジをしなかったことを誇りに思っているのか、ティナは少し俯くと、すぐに控えめな優しい笑みを浮かべてみせた。天使のような慈愛溢れるその顔を見て、何か思うことがあるのだろうと鏡はそれ以上何も聞かずに、微笑を浮かべる。


「と、ティナさんは言っておりますが、同じくあと一歩のところまできているとセイジに言われたパルナさん? どうですか?」


「妙な聞き方してんじゃないわよ。私はアリスを殺さないとクラスチェンジできないんだったら、クラスチェンジしなくていいわ。クラスチェンジすることで大切なものを見失うなら……今のままの方がきっとあんたの役にたてるもの。つまりはティナと同じってことね」


 その判断に、鏡は否定をこぼさず、「そりゃそうだな」と納得する。パルナが今こうしてここにいるのは、かつてクルルを救出した時の一件があるおかげだった。それを失っては、何も意味がないのをパルナは理解していた。理解していたから、クラスチェンジをしなかった。


 五人に満たなければ世界を救えないかもしれない状況で、それは甘えだったかもしれない。だが、それでも、自分の大切な感情を見限ってまで世界を救いたいとは思えなかった。外の世界よりも、アリスの方がずっと大事だったから。


「クルルも……約束を果たしてくれたな。一段とたくましくなったというか……賢くなったか?」


 鏡がそう問いかけると、クルルは何も言わず、悟ったかのような優しい笑みを鏡に向ける。そのまま、鏡の腕を掴むと、大事そうに胸元へとくっつけた。


「ど、どうしたんですか?」


 あまりにも突然すぎる行動に、鏡が挙動不審に陥って焦りだす。


「見極めることが大事ってことが……わかったんです。だから、多くの言葉は必要ないんですよ?」


「ちょっとクルルさん! そういうのはずるいと思うんだ!」


 しかし、何を言っているのかわからず、でもクルルはそれ以上何も言おうとはせずに鏡へと密着し、鏡はされるがままにクルルとアリスによってもみくちゃにされる。


「あぁぁん鏡ちゃん。私も褒めてくれなきゃ……い、や』


「凄い……なんてすごいんだタカコちゃんは! 俺は一番尊敬してる!」


「全力で褒めましたね」


 あまりの全力ぶりに、ティナが「うわー」と引いた視線を見せる。しかし鏡的には、二人に加えてタカコまで入られれば、粉砕されると畏怖した結果の常識的な反応のつもりだった。

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