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LV999の村人  作者: 星月子猫
第六部
303/441

『ふーん』って感じ-2

「さあ着いたわよ!」


 ヴァルマンの街の市街地方面にあるこじんまりとしたバーと、でかでかとCLUBガチホモと書かれたハイカラな看板が降ろされた店が並ぶ場所で立ち止まって、タカコが意気揚々に手を広げた。


 一瞬、油機とメリーの表情が歪むが、タカコがこじんまりとしたバーの中に入ったのを見て安堵のため息を吐くとその後に続く。その隣の店も、タカコが経営している店だと知っている鏡とアリスも、二人の反応を見て複雑な気持ちになりながらバーの中へと入った。


「ようこそメリーちゃんと油機ちゃん。私の店へようこそ! 好きなところに座って頂戴ね」


 バーの中に入ると、中でグラスを拭いていた二体のケンタ・ウロスたちが無表情のままタカコに視線を向け、持っていたグラスを二体ともドン! と素早くテーブルに叩きつける。


 そして、無言のままタカコの目の前で跪くと、その上にタカコがドカッと勢いよく座った。


「一体私の目の前で何が起きているんだ?」


「これがこのバーでの安定の日常だから、早く慣れよう?」


 何事なのかとメリーは少し引いた様子で椅子となったケンタ・ウロスたちに視線を送る。


 ケンタ・ウロスの特性を知っている油機は、ただただ、人間には決して懐かないはずのケンタ・ウロスを従えているタカコに驚愕し、改めてその存在感に畏怖する。


「ていうかお前ら、久しぶりに会ったのに何か言うことないのかよ? 俺じゃなくてタカコちゃんとかアリスとかにさ」


「貴様の物差しで語るな下等な人間よ。我々は貴様たちとは違い高貴なる存在」


「我等の挨拶に言葉など不要。背中で語るのが我等の――」


「お客様が来てるんだからいらっしゃいませくらい言えないのかしら?」


 つらつらと這いつくばった状態でゴミを見るかのような視線を向けてきたケンタ・ウロスたちの背中に『スパーン』と警戒な鞭の音が鳴り響く。




「「ンギモッヂィィィィィイイイ!」」




 その瞬間、凛々しい顔で這いつくばっていたケンタ・ウロスたちは目をぐりんと上向きにさせ、アヒアヒと息を荒くして鞭を要求するようにくねくねと身体を動かし始めた。


 その動きがあまりにも恐ろしかったのか、メリーは身体をビクッとさせると、逃げるように鏡の背後へと回り、表情を強張らせる。


「おい鏡。なんだこのヤバイ連中は……アースクリアではこれが普通なのか?」


「いや、お前のその感覚は正しい。こいつらは正真正銘ヤバイ奴らだから」


 何が起きているのか全くわからないのか、メリーはオロオロと視線を泳がせた。


 その傍らで既にその光景に慣れてしまったアリスが何食わぬ顔で椅子に座り、「ケンタさん。ボク、アップルジュースね」と、注文したのを見て、鏡は「出来れば、こんな光景に慣れてしまうような成長してほしくなかったなー」と何故か複雑な気持ちになる。


「それで、話は変わるけど。誰もいない場所に来れたし……鏡ちゃんのステータスを見せてくれないかしら」


 気持ちよくなって喘いでいるケンタ・ウロスたちに代わり、アリスの頼んだドリンクを用意しながらタカコが鏡に視線を向けると、鏡は理由を聞き返すことなく、目の前にスキルの一覧が表示されたステータスウィンドウを表示させた。


 その瞬間、元々鏡の持っていたスキルの詳細を知らないメリーと油機の二人を除き、タカコとアリスと鏡の三人は目を見開いてマジマジとそのスキル一覧に視線を向ける。


「スキルが減ってる? ていうか名称が……変わってる⁉」


 鏡はマジマジとステータスウィンドウを見つめて驚嘆する。


 鏡が開いたスキル一覧、そこに記されていた鏡が持っていた半分のスキルの名称が変化していたからだ。


「何で三人共そんなに驚いてるの?」


 あまりの驚きように、少し戸惑いながら油機が問いかける。


「鏡ちゃんのスキルの名称が前見た時から変化してるのよ……半分くらいね。それだけじゃないわ、スキルの数も……減ってるのよ」


 しかしタカコには、何がどのスキルに変化したのかは何となく理解出来た。変化したスキルの名称が、変化前のスキルの名称に関連していたからだ。


 そのことから、スキルの数が減った理由も、なんとなく察する。


「多分……これの影響かしら?」


「……だろうな。これだけ、俺が前に覚えてたスキルのどれとも関連してなさそうだし」


 そう言いながら、鏡は新たに目覚めた己が力の全てを進化させるスキル、『覚醒』の詳細を開く。そしてその内容を見て確信を得たかのように頷いた。


 自動で体力を回復する鏡が最初に覚えたスキル、『オートリバイブ』はそのスキル一覧から消え去り、代わりに『イモータルリカバリー』という名称のスキルが一覧の最初に表示されていた。


 そして次に表示されているはずのレベル200で覚えた指を弾く力を高めるスキル、『スーパーフィンガー』はそこになく、レベル300で覚えたもっと指で弾く力を高めるスキル、『ハイパーフィンガー』もそこになく、レベル400で覚えたもっともっと指で弾く力を高めるスキル、『ウルトラフィンガー』もそこになく、レベル500で覚えた指を痛めなくなるスキル、『ミラクルフィンガー』もそこになく、レベル600で覚えたどんな状況でも指を痛めなくなるスキル、『パーフェクトフィンガー』もなくなり――恐らくそれらのスキルが一つに集約されたことで生まれたであろう『ゴッドハンド』という名称のスキルが次に記されていた。


 その次に名称がカッコいいだけのスキル、『エクゾチックフルバーストAct5』から変化したであろう『エクゾチックフルバーストAct7』。


 そこから変化なく、残り続けているレベルが低ければ低いほど魔法や技をコスト無しに撃ち放てるスキル『リバース』。


 おなじみの3分間だけ力の限界を解放するスキル『制限解除』。


 限界を超えて成長し続ける『神へ挑みし者』が続いて記されていた。


 最後に、身体の一部に魔法を跳ね返す闘気を纏わせる『反魔の意志』から変化したであろう『反魔』と書かれたスキルと、新たに覚えたスキル『覚醒』が続く。


「な、なんだかワクワクするね。どれから見るの鏡さん?」


「落ち着けよアリス。ここは順を追ってこの『イモータルリカバリー』から見ようぜ」


「えー、それは最後のお楽しみにとっておいて、逆から順番に見ようよー」


「お楽しみ袋をドキドキしながら開けるガキかお前らは、どれでもいいからとっとと見せろ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一つ気になったんですが、パーフェクトフィンガーって指で弾いた時の狙いを外さなくなるスキルじゃありませんでしたっけ……?
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