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LV999の村人  作者: 星月子猫
第五部
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全てをぶち壊して、ただ前に -3

「攻撃魔法を扱える者、弓、そして魔力銃機を所持している者は全員鏡さん一人に向かって撃ち放ってください! 早く!」


 ロイドの指示は迅速かつ的確だった。しかし、その指示は何も意味を成さなかった。


 放った矢は鏡が残した残像に触れると空を切り、放たれた魔力弾と炎、雷、氷、爆破等の各種魔法は全て避けられるまでもなく弾かれてしまったからだ。


「まさかあの青白い光は……反魔の意志? 馬鹿な……あれは、身体の一部にだけ纏わせる力のはずじゃ? 全身に……⁉」


 同時に、どうして鏡に身体能力低下の魔法が効かなかったのをロイドは悟る。


「ならば……魔力の籠っていない僕の剣技ではどうです⁉」


 だがロイドはそこで折れず、すぐさまゆらりと剣を上段へと掲げて振り下ろし、真空の刃を鏡へと向けて放った。真空の刃はまだ遠く離れた数百メートル先にいる鏡の元へと威力を落とさずに飛来し、そのまま鏡へと直撃する。


「……これは、自信を失いますね」


 真空の刃は、確かに鏡へと直撃した。しかし、何事もなかったかのように真空の刃は鏡に触れると四散して消え去った。何かをしたわけじゃなかった。ただ、普通に攻撃を受けてダメージがなかっただけ。


「総員! 魔力が駄目なら実弾を使ってください! 貴重な弾薬を失うことになりますが……使っても惜しくない相手です!」


 それでもめげずに、ロイドは次の一手を取った。魔力弾を発射する魔力銃機ではなく、今では資源の確保が難しいため貴重となった火薬を消費して弾丸を射出する銃火器を持ち出し、一斉に撃ち放つように指示を出す。その間、最後に自分自身が止めの一撃を放てるよう、全身の闘気を剣へと注ぎ込み、真空の刃を撃ち放つ剣技よりも大きな威力を誇る剣技の準備を始めた。


 ロイドの身体にチャージによる仄かなオレンジ色の光が灯り、少しずつ体中の闘気が両手に持っている剣へと注がれていく。


「今です! 放て!」


 ロイドの身体に充分な力が溜まると同時に、銃火器を手にした百人余りのガーディアンの到達者たちは一斉に弾丸の雨を鏡一人に向けて撃ち放つ。


「…………は?」


 しかし、青白い光を全身に纏ったその男の歩みは、止まることはなかった。


「どうやったら…………倒せるんだよあんなの」


「知らねえよ……魔法も効かないんだぞ?」


 それを見たガーディアンの到達者たちは全て驚愕の表情を浮かべ、口々に戦意喪失による言葉を吐き出した。中には無意識の内に勝てないと諦め、手にしていた武器を地へと落とす者もいた。


 肉を貫く圧倒的な威力を誇る弾丸の雨。それも大昔に使われていたものではなく、超人と呼ばれていた者たちでさえ貫く改良が施された弾丸を、鏡は一つ残さず目では捉えきれない速度で全てその手に掴み取り、地面へと転がし落としたからだ。


 それはもう、人間技じゃなかった。


「まだだ……まだ!」


 それでも、ロイドは諦めずに闘気による衝撃波を真空の刃に加える己が放てる最強の剣技を撃ち放った。


「そんな、馬鹿な……!」


 そして、それさえも鏡に通じないことを知った時、ロイドは背筋を凍らせ、恐怖を抱かせた。


 213のレベルを誇る最強クラスのモンスター、魔獣ベルセルクでさえ一撃で葬る必殺の剣技。鏡はその大技を、片腕を振り払っただけで打ち消してしまったからだ。


「ラストスタンド部隊! 彼の進路を焼き尽くして足を止めてください! 早く!」


 出せる手を尽くしたロイドには最早、ラストスタンドの力を借りる以外になかった。


 控えていた十数体のラストスタンドの魔力銃器による砲撃で、鏡の前方の大地は焼き尽くされ、地盤が大きく砕けた状態となる。魔力による攻撃の効かない鏡の足場をまず奪い、そしてラストスタンドの驚異的な加速による推進力を上乗せした鋼鉄の殴打を叩きこむ――はずだった。


 その思惑は叶わず、加速を始めたラストスタンドは、鏡に近付く途中で突然減速し、こと切れたかのように機能を停止させてしまう。


 何が起きたのか一瞬理解出来なかった。しかし数秒後、鏡の手元から鈍い光を放つ金属がラストスタンドの部隊に一発ずつ飛来したことで、何をされたのかを理解する。


 先程鏡に撃ち放った弾丸の雨、それを鏡は撃ち返してきたのだ。


 指で弾いただけなのに、銃火器で撃ち放つよりも強く、ラストスタンドの鋼鉄の装甲を貫く威力を前に、誰もが絶句する。


 空中を飛んでいたラストスタンドは、鏡が撃ち放った弾丸によって手足をもぎ取られ、次々に地へと落ちて行った。


 たった数秒の出来事だった。こちらが攻撃したつもりが、逆手に取られて全てのラストスタンドが残らす再起不能の状態となった。


「き……来たぞ!」


 直後、鏡は走り出した。いや、走ろうとした瞬間を見たというのが正しかった。


 走り加速した鏡を、誰も肉眼で捉えることができなかったからだ。


 唯一ロイドだけが鏡の動きを捉えていたが、それでも視認できたのは進む方向の軌道を変えるために一瞬立ち止まるその瞬間のみ。


「制限解除……今までずっと制限解除をしていた? いや、それもおかしいが制限解除だけじゃない? 何だ? あの人は一体なにを?」


 以前までの鏡の制限解除であれば、ロイドでも鏡の動きは視認できた。しかし今は何も見えなかった。何をしたのかわからなかった。でもハッキリと以前よりも力を増しているということだけ認識できた。


 開いた口が塞がらなかった。


 どうすれば目の前に接近している存在を倒せるのか、わからなかったからだ。

そこにいたのは最早、人間と呼べる存在ではなかった。



「……ステータスの…………怪……物」



 超人という領域を超え、悪魔という領域を超え、化け物という領域を超えた何か。


 どうあがいても勝てないと思えてしまう感覚。


 その感覚を全員が知っていた。この世界の秘密の全て知った時に味わった絶望。到達者であれば、誰もが一度は経験するどうしようもないと思える力の差、恐怖、住んでいる次元が違うと感じてしまうほどの圧倒的な絶望。それと全く同じ感覚を一同は味わっていた。


 そして、その絶望が眼前に迫っている恐怖は、逃げるという選択肢以外を与えなかった。

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