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LV999の村人  作者: 星月子猫
第五部
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敗者への現実-7

「安心してよ、ちゃんと約束通り僕を追い詰められたら全てを話してあげるさ……だから、まずはだけど……彼と戦ってもらいたいんだよね」


 機械の身体にも関わらず、来栖を完全に再現しているのか、嫌味のある笑みを浮かべる。


 そして、鏡が問いかけるように「彼?」と尋ねた直後、来栖を模した機械のすぐ隣に、転送による青白い光のサークルが出現し、そこから現れた存在を眼にして、一同は目を見開いて驚愕の表情を浮かべた。


「……メ……ノウ?」


 半信半疑になりながら、鏡は問いかける。


 そこにいたのは紛れもなく、大昔の軍人が使っていたようなサーコートに身を包んだ、女性と見間違えるかのような美しい銀色の髪と、鼻筋の通った美麗な容姿を持った男、メノウだったからだ。


「メノウ!」


 メノウを視界に映した瞬間、失ったはずの存在が現れたことで気持ちを抑えられなくなったのか、アリスが駆け出し、メノウの元へと一直線に向かう。


「アリスちゃん! 駄目よ!」


 だが即座に、メノウの異変を感じ取ったタカコが追うように走り、アリスの身体を掴むと跳ねるように横へと飛んで転がった。直後、メノウの掌から爆破魔法が放たれ、アリスが向かってきていた位置に爆炎が巻き起こる。


「め……メノウ? どうして?」


 躊躇いなく放たれた魔法に、アリスは頬に汗を垂らす。


 メノウの表情に変化はなかった。昔から何も考えないでボーっとしている時の穏やかな表情でずっとこちらを見続けていた。その表情で、アリスに攻撃を仕掛けた。まるで、それが当然の現象だというかのように。


「お前……メノウに一体何をした⁉ いや、どうしてここにメノウが⁉」


「どうしてだと思う? ねぇねぇ! どうしてだと思うぅ⁉」


 メノウを前にしてショックを受けている鏡たちの姿を見るのが極上の悦楽なのか、来栖はより醜悪な笑みへと変化させ、高笑いをあげた。


 あまりにも何が起きているのかがわからなかったからか、あまりにも来栖のその行動が不愉快だったからか、一同は自分でもどうしてなのか理解出来ないままに言葉を発さず来栖を睨みつける。


「おやおやつまらない反応だね……普通すぎるよ。てっきり激情するかと思ってたけど」


「お前がここにいないから何もしないだけで……ここにいたらとっくに掴みかかってるよ」


 言葉通り、ここにいるのであればすぐに殺そうと動こうとするくらいに、来栖の笑みが醜悪になればなるほど、鏡の表情も憎悪に満ち溢れた恐ろしいものへと変化していた。


「やれやれ、なら君がもっと激情するように本当のことを話してあげるよ。それは紛れもなくメノウ君そのものだよ」


「嘘をつかないで頂戴! あのメノウちゃんが……私たちを守るために命を燃やした男が、私たちに攻撃を仕掛けてくるなんてありえないわ!」


 そう言葉にはしつつも、その見た目はメノウそのものであり、タカコは頬に冷や汗を垂らす。


「嘘なんてついていない。紛れもなく、彼はメノウさ……ただ」


「ただ? ……なんだっていうのかしら?」


「ただ……人格を形成するのに必要最低限の知性を与えただけの、僕の操り人形だけどね」


 その場にいた全員が耳と目を疑った。直後に来栖が放った「ほらメノウ? もう一発挨拶してあげなさい」という言葉に反応して、メノウは来栖の指示に従い、再びアリスに向けて爆破魔法を放ったからだ。


 寸前にタカコはアリスの身を抱えて爆破魔法を避けるが、アリスのためにと全てを捧げた男が、アリスに何の躊躇いもなく攻撃を仕掛けた事実が信じられず、タカコは言葉を失う。


「メノウ……お前は何をやってるんだ⁉」


 あまりにも信じられない光景だったのか、暫く放心していたレックスも、その行動を眼にした瞬間、鞘から剣を抜き取ってメノウへと斬りかかった。


 だが冷静にメノウはレックスに視線を映すと、魔力で作り出した刃を腕に展開し、無表情のままレックスの剣を受け止める。


「何か答えろ……メノウ!」


 メノウは何も言わなかった。無表情のまま、レックスが振るう剣の連撃を受け止め続ける。


 レックスも本気を出せていないのか、勝負をつけようと剣技やスキルは使おうとはせず、憔悴した顔で剣を振るい続けた。


「操り人形って……どういうことだ? あそこにいるメノウは一体なんなんだ?」


 ペスを除く全員が驚きで言葉を失う中、鏡は冷静に来栖へと問いかける。


「この世界において、魔族は本来身体のないデータだけの存在だ。これだけ言えば察しのいい君ならわかるんじゃないかな? 前回のテストで、強さはもちろん……耐久度に関してもデータが取れたからね、早速また作ってみたんだよ……彼のデータを参考にね」


「あれは、メノウのコピーなのか?」


「コピーじゃないよ? 正真正銘、遺伝子構造も完璧に再現させた本物さ。それを言うならほんの少し前に生きていたメノウ君もコピーってことになる。アースクリア内にあるデータから彼を再現しただけにすぎないからね」


 見た目、息遣い、その全てがメノウそのものだった。


「メノウ! 目を覚ませ! 僕が……僕がわからないのか⁉」


「メノウ……駄目だよ! 戦っちゃ駄目!」


「メノウちゃん!」


「おい……来栖の操り人形なんかになるような男じゃねえだろあんたは!」


 それがコピーであるとは思えず、鏡とペスを除く一同は必死になってメノウへと声をかけ続けた。自我を取り戻し、再び自分たちの仲間として隣に立ってくれることを望んで。


「元々完成間近の技術だったからね、ノアを出る前に、君たちがバルムンクと戦っている間にもう一体作っておいたんだよ……不要な人格を排除して、僕の忠実な戦闘兵器となった彼をね」



 その瞬間、時が止まったかのような感覚に一同は襲われた。



「彼の尊い犠牲によって……遂に完成したのさ、人間に近い能力と知性を持った戦闘兵器をね? これからはいくらでも作れるよ? まあ……とは言っても、その力は君たちアースクリア出身の人間には遠く及ばないんだけどね?」



 場にいた全員が背筋に悪寒を抱いた。



「いくら死んでも構わない魔族の兵隊さ! 物資の都合上無限に作り出せるわけじゃないけど……最高だよね! アースクリアから人が出てくるのを待たなくてもデータから強靭な肉体を持った存在を作り出せる!!」



 地面が震えているのを感じ取った。



「次はアリスちゃんだっけ? 君のコピーを沢山作ろうか? ああ……アースクリア出身の者たちの戦闘テストにも使うのもいいなぁ……なんせ、いくら死んでもいいからねぇ……」


 誰もが錯覚かと思った。しかし、メノウの放った爆破魔法によって削れた地面の破片が、カタカタと揺れ動いているのを視界に映し、全員が表情を青ざめさせた。


「さあさあ……兎に角だ。僕と直接会って話をしたいなら……そこにいるメノウ君を殺さない限り対面はしない。無論、それ以外で真実を知る方法も、僕に会う方法もない」


 その力が、際限なくどんどんと高まっているのを感じ取り、メノウと交戦していたレックスでさえも、戦っている相手であるメノウから視線を外してそれに注視した。


「ほら? どうしたぁ? 君たちの実力なら、そこにいる僕が作った兵器なんて取るに足らない雑魚だろう? 簡単に倒せると思うんだけどなぁ? どうしてレックス君しか戦おうとしないのかなぁ?」


 そして、地面に転がっていた破片が宙へと浮遊した瞬間、タカコは目を疑った。ただ全身から溢れ出る闘気が、物体へと干渉して宙へと浮かす、そんな物理的な法則を無視するほどの力がこの世にあるはずがないと思っていたから。


「あっはははは! ひゃーっはっはっは⁉ 今どんな気持ちだい? ねぇねぇどんな気持ちなんだい⁉ 憎い憎い僕を殺したくて仕方がないだろう? でも、全ての真相を知って前に進むためには君たちの大事で大事で仕方がないメノウ君を殺すしかないんだよ? さぁどうする⁉」


 だがすぐに納得してその力を発している存在へと視線を向けた。それと同時に、確信する。もう、誰にもあれは止められないと。恐れていた状況に、なってしまったと。


「…………ダマレ」


 その力の片鱗を、ペスを除くタカコたちは一度味わったことがあった。


 バルムンクの手によって痛めつけられ、死の淵へと追いやったメノウを助けに現れた鏡が一度だけ見せた、死神が迫るかのような恐怖。


 タカコ、アリス、メリーの三人の表情にあったのは、「なんとかなる」という期待ではなく、「もう止められない」という不安だった。頬に汗を垂らし。ペスは耳と尻尾の毛を逆立たせて震えあがり、レックスとメノウも戦っていることを忘れ、その脅威的な存在へと視線を送る。


「素晴らしい……制限を解除したようだが、以前よりもパワーが上がっている! この場にいないはずなのにヒシヒシと伝わってくるよ……やはり僕の読みは間違いじゃなかった」


 来栖の言葉通り、今までずっと制限を解除した鏡の戦いを見続けていたタカコとレックスにもその差がわかるほどの力が鏡から溢れ出ていた。

いつも閲覧いただきありがとうございます!

LV999の村人④がいよいよ本日発売となります!

ここまでこれたのも皆様の力があってのことだと思っています。

よろしければ今後ともLV999の村人をよろしくお願い致します!

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つまらん。 もう耐えられん。
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