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LV999の村人  作者: 星月子猫
第五部
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敗者への現実-6

 それから、一同はいつ終わるかもわからないダンジョンとなったガーディアンの内部を進み続け、次々と階層を昇って行った。獣牙族の卓越した五感によりペスが感じ取った強い気配とは、狙い通りそのフロアを守るボスモンスターであり、そのモンスターを倒すことで、一同は階層を上がっていった。


 本来であれば、そのボスモンスターを倒すために何度も地下深くにある施設を行き戻りし、休息を取りつつもじっくりと攻略するべきはずのダンジョンを、鏡たちは休むことなく一気に駆け上がった。


 休む必要が、一切なかったからだ。


『ギョ…………ギ…………』


 丁度、最初のフロアに降りたってから二時間が経過し、既に十二階層は進んだ頃だった。


 まるで海の中をイメージしたかのような光を放つサンゴが壁面に生え、海藻や魚が水もないのに揺られるように動く薄暗いダンジョン内に、深海魚のような見た目のボスモンスターが横たわる。そのすぐ正面には、大剣にモンスターの血液をべっとりとつけて、冷たい目で大剣を肩にのせた鏡の姿があった。


 一同に出番が訪れることは一度もなかった。全てのモンスター、全てのボスモンスターが鏡の手によって一撃のもとに葬り去られたからだ。


 ずっと昔、アースクリア内で古代兵器メシアと戦い、制限解除をした状態ではあったが一撃で葬り去った鏡ならば当然とも呼べる結果ではあったが、それでも、昔よりも確実に強まっている鏡の力を前に、その力を初めてみるペスだけではなく、タカコやレックスたちも驚愕の表情を浮かべた。


「……来栖! もう茶番はいいだろう? とっとと本題に入ったらどうなんだ? お前の望み通り罠にかかってやったんだ。これの繰り返しが無駄なことくらい……わかっただろ?」


 その時、ただ現れたモンスターを一刀両断にするだけの繰り返しに痺れを切らしたのか、鏡が再び次のフロアへと強制的に転送される前に叫び声をあげる。


 声が来栖へと届いていたのかはわからなかったが、今回、次のフロアへと転送されるまでのスパンが一同にはいつもより長く感じた。


 そんな思考を巡らせた直後、一同の身体は再び転送による青白い光のサークルによって包まれる。そこから、次に視界が広がった先は、これまでのようなダンジョンと呼べる場所ではなかった。


 地下施設ノア内にあるセントラルタワー、その内部に似通った自分たちには理解も及ばない技術で作られた発光する壁、何か情報を伝達しているかのように行き交う光の粒子で覆われた円形に広がる出入り口のない部屋。


 その広さは、メノウが犠牲となった地下施設ノアの最下層にある円形のドームとほぼ同じだった。そして、一同は否応なしに部屋の中央に立っている存在へと注視する。


「ようこそ最上階へ……君たちにとっては物足りない試練だったかな? ご注文通り、確かに意味もなさそうだから連れてきてあげたよ?」


 そこに立っていたのは、白衣を身に纏い。一度見れば頭に残るような蟲惑的な美貌を持ちながら、常に人を嘲笑うかのような顔を浮かべる男の姿だった。


「来栖……人をおもちゃのように試すのもここまでだ」


 御託を述べられて何かを仕掛けられる前に終わらせる。そんな気迫を感じさせる勢いで、来栖が再び何か行動を示す前に、鏡は力強く地を蹴って来栖の背後へと回り、首筋をガッと右手で掴みとった。


「俺はもう……お前を逃がさない。少しでも変な真似をすればあんたの首を即座に捻らせてもらう」


「素晴らしいね……最早、凡人の僕じゃあ認識することも出来ない速度だ。村人でその境地に至れたってんだから尚更驚きだよね」


 しかし、来栖はそれでも顔色一つ変えずに笑みを浮かべ続けた。あまりの余裕さに、鏡も表情を歪め、無意識に手に籠める力を強めてしまう。


「……鏡さん!」


 だが、その力はアリスの一括ですぐに止まった。


 それだけは駄目だと、アリスが目で訴えかけていたからだ。瞬時に少し熱くなってしまっていたと鏡は首を左右にブンブンと振り、改めて手に籠める力を緩めて来栖を睨みつける。


「随分と余裕だな?」


「むしろ君たちはもう終わったと思っているのかな? ……ここまでのダンジョンなんてただの前座で、試練でも何でもないんだよ? 一応、見ておこうと思ってね」


「そうかよ……でも、その試練とやらをやらせるつもりもないけどな」


 鏡はもう絶対に逃がすつもりもないのか、首を掴んだ右手に力を籠め、左手にチャージブロウによるオレンジ色の光を纏わせた。


「……話してもらうぞ、異種族を作り出し、レジスタンスと戦わせていたその理由。性能のテストとかなんだ言って、メノウを殺さなきゃいけなかった理由……全てをな!」


「ああ……何でも答えてあげるよ? ただし、前にも言ったけど……僕をちゃんと追い詰められたらだけどね?」


 まるで、今のままでは全然駄目だと言うように、来栖はため息を吐きながら困ったように首を傾げた。


「なんだと?」


「当然だろ? メノウ君がピンチになったあの時……最上階に向かうか最下層に向かうかの選択を与えただろう? そして君は最下層に行ったじゃないか? その段階で君がただ来ただけで教えてあげるという権利はもうなくなってるのさ」


「この状況で追い詰められてないとでも?」


「逆に僕は聞きたいね。こんなに隙だらけで、ご丁寧に最上階で待っていた僕の背後を取っただけで、もう追い詰めた気になってるのかい? 何か裏があるとは思わないのかな?」


 その瞬間、頭上に乗っていた朧丸が「ご主人!」と声を荒げ、鏡は額に汗を浮かべてすぐさま来栖から飛び退いて距離を取った。


 来栖の瞳が、明らかに人間とは思えない機械のような赤いものへと変化したからだ。


「ボス! ソイツ……違う! 臭イがナイ!」


 直後、何かに気付いたのかペスが叫ぶ。


「おやおや、そこの獣牙族に助けられたようだね? ご明察……僕は偽物さ。僕という存在を模しただけの……ただのアンドロイド。機械で作られた人形さ。停止するか壊れたりすると爆発するようになっているけどね」


「どこまで……ふざければ気が済むんだ」


「当然じゃないか、僕が生身で君たちの前に姿を現したら殺されちゃうだろ? だからこうしてこのアンドロイドを経由してお話しているのさ、はは、あまりの怒り具合でそんなことにも気付けなかったのかな? いい……仕上がり具合だね」


 鏡が怒り、冷静さを欠いている状況を見るのが嬉しいのか、来栖は醜悪な笑みを浮かべる。

いつも閲覧いただきありがとうございます。

いよいよ明日。LV999の村人④が全国書店で発売となります。

記念としてイラストを活動報告にてあげさせていただいてますので、ぜひ見ていただけたらと思います。。

WEB版を読んでいる方も楽しめるよう、今回も大きく修正させていただいてますので(WB版にいないキャラが出る等)、お手にとっていただければ幸いです。

それでは今後とも、LV999の村人をよろしくお願い致します!

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