6‐3
「しめた!!」
貨車がようやく停止した。フレッグの言う通り、こちらも遠距離から攻撃したら敵は逃げに転じた。戦いは武器の有無、兵の錬度も大切だが、なにより闘志がモノを言う。精神的に後れを取れば優れた武器も役に立たない。自分も最初の戦いで後れを取っていたが、相手も同じ人間、やってやれんことはない。
トゥルイは正面から弓矢を射る。貨車正面にある透明な板が砕け散る。
「今だ。全員かかれ!!」
トラック正面に兵士が群がる。何人かは例の鉄筒の餌食となる。その中で棍棒を見事に使いこなし棒高跳びの要領で乗り込んだヤツがいた。
「へーい、こんにちは」
フレッグ・アフマドはこんな時も飄々としている。ふざけた侵入者相手に茂はライフルを向ける。
「それだな?いただき!!」
フレッグはあっという間に少女と男の武器を奪いさる。そして外に放り投げた。
「あ・・・」
その時の二人は絶望に打ちひしがれたような顔だった。予想通り、これが切り札だったようだ。仲間が敵の武器を確保したのを見届け、二人も同じ目合わせてやることにした。
「さあて、お前らもいっしょ飛んで行け~」
「きゃあああああ――――」「うわ!!」
「よし、取り押さえろ!!」
ジタバタと暴れるも抵抗むなく、猿ぐつわにされる。しばらく暴れていたが、無駄と分かると二人とも大人しくなった。
こうして佐竹ヒカリと高橋茂は捕虜となった。
帝国軍騎兵隊の戦死者は三十二名中、二十三名。重傷一人、軽傷四名の大損害だった。しかし捕虜にした敵の重要度を考えれば、これは大きな戦功である。ようやく敵の秘密を知るときが来た。
「皆、よくやった」
「よっしゃ――」「勝ったぞ!!」
トゥルイ以下、少なくなった兵士たちは安堵の表情を浮かべた。凄惨な戦いであったが、これで散っていった仲間たちにも顔向けできる。
「アフマド、お前も下りてこい」
「ういーす。ところで、隊長何か忘れてません?」
「な、何がだ?」
「敵がもう一人います。ここに寝てますが・・・」
「ば、馬鹿!早くそいつも拘束しろ」
はいはい、とため息をつきながら、最後の一人、佐竹光一に手を掛ける。
「あれ、朝?」
光一は目を覚ました。そこには知らない男がいた。
「はは、こんにちわ」
「はいはい、お前もまだ寝てろ」
フレッグは光一を再度気絶させ、車外に放り出した。