プロローグ3 妻と甥とその友人の失踪
やっとプロローグが終わりました。
消化不良ですが、投稿します。
高橋茂が帰宅したのは21時。いつもならレナが夕飯を作っているはずだった。門限は特に決めていなかったが、自分より遅い時は記憶になかった。
「夜遊びか」
真面目な娘だが、年頃だしこれくらいは大目に見なければ。しかし連絡がないのは気になる。電話をかけるが繋がらない。焦りが募って来た。
22時過ぎ、友人の佐竹光一に電話をかける。光一の自宅は道を挟んで向かいだが、とりあえず連絡してみる。
「遅くにすまん。ウチのレナはそちらにお邪魔してないだろうか?」
いきなりの切り出しに電話越しに光一が焦って立ち上がる音を聞こえた。
「レナちゃんも?実は守もまだ帰らないんだ」
「二人とも同じ部活だったと思うが・・・」
そこまで言い、茂は「まさか二人で・・・」と思った。光一も同じ想像をしたのだろう。「おいおい、まさか・・・」と返ってきた。
気づけばレナも高校生。亡くなった妻にますます似てきた。いつかは嫁に行くか婿をもらうかするだろうが、想像していたより大分早いのではないか。予定が違う。
「あ、いや・・・実は夏美も連絡がつかないんだ」
「それはまた珍しいな」
「どうする?最近は物騒な事件が多いし、もう少しまって警察とか・・」
「うむ、今すぐ通報しよう」
間髪いれずに答える。
「いや、まだ早いんじゃないか?」
「万が一があったら早く警察に通報していたほうがいい。そうでなくとも本人たちに心配を掛けさせるなと、お灸をすえることができる。まだ高校1年だからな。色々遊びたい盛りかもしれんが・・・どっちにしろこんな時間まで制服でうろついていたら補導の対象だ」
「なぜ、制服だと?一旦返ってきて出かけたかも」
「家に制服がないからな。予備はクリーニングに出している」
なるほど、と相槌が聞こえる。
結局光一が警察に電話した。街に高校生がいれば補導してほしいと付け加えて。二人が夜の街にいると完全に当たりをつけて夏美のことは別の心配をしていたようだが、時間が経てばわかるだろう。と、この時は思っていた。
しかし、朝を迎えても三人は帰ってこなかった。
「眠れたか」
「いや、全然」
朝一番、佐竹家にも訪問する茂。お互い虚ろな目の下は黒くなっている。
「今日は仕事か?」
「あるが、休む。お前は?」
「すでに休講届を出した。大学を首になるかもしれんが・・・私は高校に連絡する。君は夏美さんの会社に連絡した後、警察に昨日の続きを説明するんだ。後で署で落ち合おう」
「わかった」
事態は雪崩のように悪い方向へ転がっていった。
夏美は勤め先の書店より高校へ雑誌と書籍の納入の後、そのまま直帰することになっていた。担当者とやりとりしたのが18:00。その後校門まで見送った。それが最後の目撃談となっていた。
守とレナは16:30に授業を終え、二人で地下の部室に行くのをクラスメートが見ていた。その後しばらく部室にいたらしい。18時20分、揃って校門を抜けるのを教師が目撃していた。それが最後だった。
三人は学校から消えた。校門までは目撃者がいる。その先には「あの神社」がある。
三日経ったが見つからない。テレビと週刊誌が嗅ぎつけた。事件は神隠しと騒ぎ立てられる。茂は専門家であったはずだが、まさか自分の娘はこんなことに遭うとは思っていなかった。光一も今の事態は受け入れられないでいる。
そうこうしているうちに光一の妻、夏美と甥の守、その友人レナが失踪してから三カ月が経とうとしていた。