第2-2
協会の前で人が祈りを捧げている。
我を救いたまえ、我を救いたまえ。
あの忌々しい魔王から、我ををお救い下さい。
何度も何度も祈っている。それも1人じゃない。
協会の外は祈りを捧げる人で溢れていた。
「中に入れそうにも無いな」
ケイトに腕を捕まれたまま、僕は呆然と協会の前に立ち尽くした。腕を引っ張らない所を見るとケイトもどうやら同じ気持ちらしい。
「これじゃあ彼も急がしそうね、出直した方が良いかしら」
ケイトの呟いた声は祈りの声に紛れながらも僕の耳にしっかりと届いた。
「そうだな、1度出直そう。もう昼だし、今の内に宿を探した方が良いだろう」
本当はルイ・ロブロイと話しをした後そのまま協会に泊めてもらおうとケイトに腕をひかれながら思ったりもしたのだが、外だけでも祈りを捧げる者が大勢いるのだ。
中はさぞ忙しかろう。そんな中泊めてもらおうなどと、図々しい話しは出来ない。
「きゃあ!」
急に、ケイトが悲鳴を上げる。
「どうした?!」
言いながら横を見ると、ケイトは見知らぬ男に抱かれている所だった。
「キミ可愛いね〜見ない顔だけど何処から来たの?」
変態だった。
「おい、お前っ……」
何をしている。そう言って男とケイトを引き剥がそうとするよりも早く
「気安く触らないでよ!」
突き刺さる様な鈍い音が耳に響く。ケイトが男の頬を力一杯に平手打ちしたのだ。
「ははは、威勢が良いところもオレの好みだ」
男は赤くなった頬を手で抑えながら、怖じけづく事もなく、ただいやらしく笑っていた。僕はケイトの腕を引き、自分の所へと寄せた。
「この娘は僕の連れなんだ。ナンパなら他所でしてくれ」
「あれ、男と一緒だったんだ? ごめんねぇ。なんか"見たことある顔"だったから、ちょっかい出しちゃった」
そう言って、男はまたケイトに近づく。
「ねぇキミさ、魔王に顔がそっくりだね」
男が耳元て呟いた言葉は悪意に満ちていた。
ケイトはもう1度、男に平手打ちをしたのだった。
「ははは……痛いなぁ」
「なによ貴方、いきなり失礼じゃないのっ」
ケイトは眉間にシワを寄せ、怒りをあらわにしている。
「この娘の言う通りだ。用がないならどっか行ってくれ」
ケイトには助けてもらった恩がある。僕はケイトの腕を強く握った。
しかし男は僕達から離れようとしない。
「あぁ、そういえば自己紹介もしていなかったね。俺の名前はディヴ・ロブロイここの神父様の息子だよ」