第2、旅
「もし妹が、エバが魔王そのものだとしたら、ケイトはエバの事をどうするつもりだ……?」
「もし魔王があなたの妹で、同じ人間なのだとしたら、説得する方法だってあるわ」
曇りの無い瞳が、僕を見つめる。しかし、どうだろう。その瞳にはこう書いてあった。
絶対に、殺してやる。
そんな事を言っている様に僕は思えた。
一睡も出来ないまま朝になり、僕は朝日がまだ昇りきらない内に、起きて朝食を作っていたエリックさんに軽くあいさつをして家を出た。
そして、村を出ようとした時である。
「ちょっと、待ちなさいよ!!」
後ろから酷く甲高い声が聞こえてくる。バレてしまった。気が付いてほしくなかった。僕はケイトを置き去りにしたかったのに。
だから僕は、歩みを止めな。
「なにさらっと置いてってくれてるのよ! 冗談じゃないわ!?」
「……僕は君を連れていくなどとは一言も言っていない」
かなりご立腹の様子であるケイトに背を向けて、僕はただひたすらに歩く。
「一緒に行くって、言ったじゃないの!」
服の袖を引っ張られ、僕は危うく後ろへ倒れそうになる。
「なにをするんだっ」
捕まれた袖を振り払い、僕はケイトの姿を見た。
「置いてかないでっ」
よく聞くと、ケイトの声は微かに震えている。黄色のその瞳は潤んでいた。
それでいて眉を寄せて必死に涙を堪えていた。
「ごめん、そっか。わかったよ」
昨日のあの目は忘れよう。今のケイトを信じよう。
僕はケイトの頭を撫でた。笑った顔が、エバと重なる。