第1、探索
妹を探している。
今の世は大変だ。
何者かの手によって、森で暮らしていた魔物が凶暴化し人々を襲うようになった。
それまでは魔物が無意味に人を襲うだなんて事は無かった。
あるとしても、それは魔物が餓えている時だけだ。
ギルドも軍も忙しい。
行方不明者を探索する暇などない程に。
だから僕1人で、妹を探す旅に出ている。
妹を探して、もう5年の月日が流れていた。
「今時冒険者か……で、君の名前は?」
50過ぎほどの、体格の良い男が、カウンター越しに僕の顔を除く。
「アド・スノードロップ
あと僕、冒険者じゃないです」
「あー…そう。まぁなんでもいいや。何泊するだ?」
「いや、泊まりません。少し伺いたい事があるんです」
客では無いと分かると、男はカウンターに膝を付き、眉間にシワを寄せ、あからさまに態度が悪くなった。
「早くしろ。こっちも暇じゃないんだ」
態度が悪くなろうと、僕には大した問題ではない。
「この写真の人を探しています。妹なんです。
どこかで見かけませんでしたか?」
写真をカウンターに置くと、男は手に持ってまじまじて見てから、左手を顎に当てて考え込む。
嫌そうにしていたくせに、どうやら根は真面目らしい。
「いや、残念だが見ていないな」
「そうですか……」
「悪いね」
そう言いながら、男は写真を僕に返した。
「いえ、ありがとうございました」
この村にも、妹はいないのだろうか