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はじめての授業 2

レトロな家具を集めるのが好きなクレアさんとそれを取りに行かされるお兄ちゃん…

窓の隙間から冷たい風が入り込む。なるべく質素な生活を心がけているクレアに言われて、家具類は国民から買い取ったり拾ったものを持ち込んでいた。


「雨がひどくなりそうですね。台風も近づいていますし…こういう時は授業が繰り上げになってしまったりして、残念でしたわ」


業者を呼んで窓枠を変えてもらおうと思いつつ、クレアは脳裏に学生時の思い出を語る。イグニスは慣れない鉛筆でアルファベットをノートに書いていた。


「この鉛筆も近くの小学校から貰ってきたのか?何だか、甘い香りがする」


ホワイトボードにZまでのアルファベットを書き終わったクレアは箱の中に入った瓶を取り出した。


「はい、お菓子と交換に頂きました。香りが移ったみたいですね。これは、私のものですけど…そうですね。アルファベットを大文字と小文字共にまずは写し終わってください」


コルク栓でしっかり蓋をされ、瓶には動物のシールがぺたぺた貼ってある。その中には練り消しゴムや星、ハートの形をしたものがぎっしりつまっていた。 


「う〜ん。26文字なのは分かった、大文字と小文字はややこしいな」


クレアがノートを覗き込む。銀色の髪が邪魔にならないよう、口に赤いヘアゴムをくわえてポニーテールにまとめた。小さく息をついて赤ペンを取り出す。


「大文字はすべて正解です。基本ですから、毎日宿題を出すことにしましょうか。小文字については確かに難しいですね…ホワイトボードを見て下さい」


大文字に丸を付けた後、ニコニコマークを書く。改めて角張り、すらっとした文字は彼の性格を表しているようで、兄の肩にそっと手を置いて机の前まで戻る。


「大文字の形の面影がない…」


悩みながらも視線をホワイトボードに投げた。鉛筆を机に戻して手を膝に置く。


「歌で覚えると頭に入りやすいと思います。私も本を探す時なんかはよく口ずさみますよ」


小さなラジカセにCDをセットするクレア。CDケースを見ながらボタンを押すと歌が流れだす。


『さぁ、練習を始めましょう。最初の文字はAですよ。A・B・C…』


イグニスは映画に出てくるサウンドオブミュージックのマリアと言う家庭教師を思い出す、そして続く音楽に、ぱっと笑みが浮かぶ。

「あぁ、キラキラ星だ。なるほど…教材になってるんだな」


知っている曲が流れて子供のようにはしゃぐ兄を見て、クレアも歌に乗せてハミングしだす。


止まない雨を負かすような優しい歌声が重なっていく。


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