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キング・ジョー Absolutely world in the goggles  作者: 蘭堂
Huge tower of mystery in the "Baongu"
70/74

8:Holy Land which is not seen

 ジョーは、汚れたジュラルミンケースを拾い上げ、近くにあった廃材の上に乗せ、そのケースをじっと見つめた。


「ジョーさま?」

「……」


 何か考えている様で、ノストゥラが呼んでも、ジョーは固まったまま動こうとしない。

 ゴーグル越しに、いつもの睨む様な眼つきになっていた。


「ジョーさま、奴等も来ますし、早く戻った方がよろしいのではないですか……」

「そうだな、よし!!」

「?」


「 ノスト、ちょっと待っててくれ」


 一人で納得すると、それまでが嘘の様に、急にジョーが動き始めた。

 ケースをチェックし、開こうとする。しかし蓋がロックされていて開かない。見ると鍵穴も無ければ、ダイアル錠も付いていない。ポリポリと頭をかき、ジョーは思い出した様に呟いた。


「そういえば、確かリモコンの様な物使っていたな」


 沙織がリモコンを使っていたのを思い出し、辺りの床を見回してみるが、当然落ちてなどいない。ジョーは、準備運動の様に軽く首を回すと、ARグローブを操作し始めた。


 ゴーグル越しに、光のマトリックスラインが現れジュラルミンケースに重なる様に立体グラフィックスが現れた。指先がそれに触れ、順番にそれを分解して行く。

 次にケースのロック部分を拡大させる。更に、新しい『Blank(空白)/leaf』を開きその四隅に有る 『Stem(接続ポイント)』からガイド線を引き出しロック部分のグラフィックスに繋げた。


「ジョーさま、何をされているのですか?」


 残念ながら、ノストゥラにはジョーが行なっている事は見えない。しかし、はめているグローブが、紫の光りを放ち、闇の中で宙を仰ぎ、動かすその手の中で、何かが起きようとしているのは理解出来た。



「よし、開いた」


 プシューー!!


 気圧調整の廃棄音と共に蓋の部分が少しスライドする。その空いた隙間から光りが漏れて来た。


「!?」


 その蓋が上にゆっくりと起き上がって行った。ケースの中の明かりが部屋の天井部分を照らして行く。

 まるで魔法使いが、呪文で箱を開けた時の様に見えた。

 ノストゥラは、ジョーの様子から、目を離す事が出来なかった。


「へー。他に二つもあったのか」


 ジョーは開いたジュラルミンケースの中から、嘗て沙織が製作したARゴーグルとARグローブを二つ、取り出した。


「ジョーさま、もしかしてそれは……」


 ノストゥラもすぐにそれが、向こうの世界でジョーが装着していたゴーグルと同じ物だという事に気が付いた。


「そう。これは以前俺が掛けていたゴーグルと同じものだ、そして俺の親しい人が残した遺品さ。このジュラルミンケースを見た時、もしかしてと思ってたが、やっぱり他にも予備があったんだ」


 一旦、それらをケースに戻し、近くで床に横倒しになっていた実験用の机を起こす。埃を息で払いその上にゴーグルとグローブを置いた。


「?」


 ノストゥラ は、てっきりそれを持って行くのだろうと思っていたのだが、どうやらそうではないらしく、ジョーは何か別の事を考えているらしい。


「さて、ここからが本番だ。上手く行くと良いが……」


 そう言ってジョーは笑むと、グローブが、再び紫色の光りを放ち始めた。そこから先に起きた出来事は、まさに奇蹟もしくは魔法と呼べるものだった。




 ザイビクスか、開けた壁の穴の前にザンブルのメンバー達は着いた。

 穴の周りは、コンクリートが砂の様に崩れ、断面は鋭利な刃物で切り取られた様に綺麗に無くなっている。影響範囲内と範囲外の差、これが音響兵器の特徴だ。


「やるぞ」


 ズウォームが、先程、ジェミニに見せたあの鉄球をポーチから一掴み取り出した。


「フッ!」


 そして奥をめがけ壁の穴に投げ込んだ。


 コーンコーン……

 コーンコーンコーンコーン……

 コーンコーンコーン……


 金属弾む音が聞こえて鉄球は壁の穴に消えて行く。


 ギュイイィィィィィィーーーーッ!?


 弾む音が聞こえなくなると、鉄球の消えた奥の方から、今度はモーターが回る様な金属音が、聞こえて来た。


「よし。前進!」


 ズウォームが合図を送り、ザンブルのメンバー達は穴をくぐり、施設内に入って行った。




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