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キング・ジョー Absolutely world in the goggles  作者: 蘭堂
Huge tower of mystery in the "Baongu"
68/74

6:Holy Land which is not seen

「ここは…」


 辺りを見回し、ここが以前自分が沙織と別れたマシン 室と工作室だと言うことに気が付いた。


 この部屋は、あの日以来入ってはいない。

 地震により崩れた壁が入口を塞ぎ、入れなかったのだ。


 むろん瓦礫が散らばり、天井から砂が落ちて来るこの部屋に、沙織は居ない。

 全て元の地球に残して来た。


『ジョー君、どうかこれを使って犀川所長達を助けてほしい』


 あの時 沙織がジョーに伝えた最後の言葉だ。


「沙織さん……」


 ジョーは、沙織の言葉を思い出していた。


「ジョーさま、どうかしたのですか?」


 ジョーの、握っていた手に微妙な熱を感じ、ノストゥラは不安そうにジョーに尋ねた。




「……あの日、この部屋で俺の親しい人が亡くなったんだ」

「……。」

「ここの研究員で『北島沙織』さんって言うんだけど、ホント良い人でさ、家に遊びに来てくれた時、色々と親身になって相談にのってくれていたんだ」


 ジャリ……

 ジョーの靴が砂を踏む。


「俺、小さい頃事故で両親亡くして、それからずっと祖父母に育てられていたんだ。だから兄弟とか居なくて、兄貴って憧れていてさ、あの人が本当の兄貴だったらいいなーって思ってたんだ……」


 ノストゥラは、暗闇の中で沈痛な表情を見せた。


「……すいません。私達……が、ジョーさまの地球に行った為に……」


 ノストゥラは消え入りそうな声で、そう応えた。


「それは違うさノスト。キミが謝る必要はない」


 ノストゥラから謝罪を受けてジョーは少しとまどいながも、しっかり応えた。


「あの時、君達には、君達の大事な使命があった。そりゃ沙織さんが亡くなった事は今でも辛いし、憤りを感じるんだけど、でもそれは君達に対してじゃなく、助けられなかった"自分"に対しての事なんだ」

「ジョーさま……」

「……あの時、沙織さんの言葉に従わず、この部屋に来ないで無理矢理にでも外に連れ出せば良かった。そうすれば、もしかしたら助かったかもしれないと、今でもそんな考えがよぎるんだ」

「……」

「……そんな事考えても、今更仕方ないはずなのに……さ…」


 そしてジョーは黙った。


「わ、私達が、なりますっ!!!」

「えっ!?」


 視界もままならない闇の中で、ノストゥラは、ジョーの手を両手でしっかと握り締めた。


「私とヴォルが、その方の代わりになりますっ!! 私達は女なので兄にはなれません。しかし必要であれば、ジョーさまの姉となります! 妹となります! 母となります! 妻となります!全身全霊で、御気持ちに応えて行きます、ジョーさまの思うままに、何でも、何でも、お話し下さい!!!」


 感極まった ノストゥラは、そのままジョーを抱きしめてしまっっていた。


「ば、ノスト……」


 ジョーは、ノストゥラの思いがけない行動と言葉に、茫然としてしまった。

 しかし____。


「ノスト、ありがとう。わかっている。君達は俺に会うために来てくれたんだもんな。大丈夫だ、これからは君達が俺の家族だ」

「ジョーさま……」


 ジョーは愛しむ様に、ノストゥラの頭を撫でた。


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