4:Holy Land which is not seen
バックバックの着陸装置が働き、木々の間を抜け、ザンブルのメンバーはSITL(犀川工科研究所)から1,500M程離れた森の逆傾斜地に着いた。
ここなら視界が通らず施設から直接狙われる事はない。
この辺りは樹齢五百年を超えた、ミワカツラの亜種達が天を覆う様にそびえ立つ。
それはこの森の深さと歴史の厚みを物語っている。
無事着陸出来たメンバーは16人。全員着陸装置を投棄し、辺りの索敵を行った。
「予定ポイントよりかなり後退したな」
「敵もかなりやり手だからな、降下なら是より先は、危険だ。俺達は良い的にしかならん」
出鼻を挫かれ、一旦距離をおいたザンブルのメンバー達は、ミーティングを行う。安全を確認し、ポーチから水筒を出したり、武器の再チェックをしながら会話に参加する。
「さすがに相手は、多次元から来た伝説の悪魔だ、こちらが攻め入る前に察知されるとはな」
「ケッ何が伝説の悪魔だ。ありゃ単なる精密射撃だ。あそこには、手馴れたスナイパーが二人いるだけだぞ」
「しかし、あの距離からエーカーを一発で仕留めるのは、並み大抵の狙撃の技量では無い。十分注意が必要だ」
「あれはプラズマ砲だったよな?」
「ああ。おそらくプラズマ砲だろう」
「はぁ? それがどうかしたのかよ」
「普通、プラズマ砲の射程は、その性質上あまり長い物ではない。威力はあるが、外的要因を受けやす。だから落下している標的を、大気中の熱や、気流、磁界の影響を受けて1200M以上離れた的を当てるのは相当の技術要するまさしく至難の技だ。その状況で、我々のメンバーは瞬く間に4人もやられた。決してまぐれで等ではありえない。」
「ハァ? どーせ、衛星情報か宝珠の自動計算じゃね?」
「何発も撃って、エーカーに当てたならそれも有り得るが、相手は2発目ですでに命中させた。更に、他の者達への時は誤射は一切無かった。もし一発目は試射とするなら、その狙撃は完璧なモノだ」
「うむ。あのレベルなら『オーミット(エル・ハザープ狙撃部隊)』のトップ3と変わらないな」
「イシス達と同等? 馬鹿な」
「ケッ! 敵誉めてどーすんだよ」
「エーカーは塵も残さず消えたな」
「あれでは、ヤツのネームタグも見つからないだろうな」
「そりゃあドップや他のヤツらも一緒だ」
「いずれにしても、ここから先、無謀に突っ込んであんなマヌケな的になるのは、二度とゴメンだゼ」
暫くザンブルのメンバーは互いに言いたい事を言っていた。
頃合いを見てズウォームが、電子マップを出し口を開いた。
「よし、みんな見てくれ。ここが我々の現在位置だ、施設までがおよそ1530M。このまま正面から攻撃しても木々が盾となるだろうが、敵の狙撃スキルを考慮すると、おそらく700M辺りからは、犠牲者が出てくるだろう。だから我々は、少し遠回りになるがザイビクスが破壊した方、東側に回り込む」
ズウォームはマップに赤い矢印を引き示す。
「サジー、ザイビクスが
カイマインを撃った時の動画はあるか?」
「ある」
「全員に送ってくれ」
「わかった」
ザンブルの通信ネットワークを介してメンバーに動画が転送された。
「これを見ると解るが、今、東側の壁にはザイビクスが空けた大穴が開いている。ここら中に突入する」
「しかし、そちら側にもまだ狙撃手が残っているしょ?
メンバーの一人のジェミイが東側の反撃を思い出し、ズウォームに異を唱えた。
「解っている。だからコレを使う」
そい言ってズウォームは胸元のポーチからゴルフボール位の銀色の玉を取り出した。
「ヘェ……良いじゃない」
その銀色の玉を見てジェミイが左側の口元を吊り上げて笑った。
「ゲホッゲホッ! 危なかった。障壁を探すのが遅れていたら、俺死んでたな」
ジョーはパンツの埃を払い立ち上がった。
彼はザイビクスの攻撃の時、『ARゴーグル』を用いて、三つの事を行っていた。
1、アカシックレコードにアクセスし、ザイビクスのカイマイン波長攻撃の特性を見つけ出す。
2、その対応方法を探し出した。
3、相反する波長の壁を自分の回りに作り出し、中和させ、攻撃を無効にしたのだ。
生死を分かつ非常事態とは言え、既にこれだけの事を瞬時に行える様になっているとは、ジョーの判断能力の高さが伺い知れる。
彼は確実にこの『ARゴーグル』を使いこなし始めていた。
「しっかし、あの距離を正確当てて行くとは、バルの狙撃の能力は凄いな。こっちは一発しか撃てれなかったぞ」
ザイビクスの攻撃は、その破壊波長値によりSITL(犀川工科研究所)の外壁の一部を砕き、擂り鉢の様にジョーを囲むコンクリートの砂山を築いてしまっていた。
……サラサラ……
「ん?」
細かく砂の様になってたコンクリートが、足に纏わりつく。
「あ、あれ?」
流砂の様に、どんどん砂に足を埋まって行く。
「おわっ!?」
今度は、勢いをつけて昇ろうとするが、すぐに足が砂に埋もれてしまう。
「アーーッ!? ヤベっ出れないっっ!」
必死でもがくジョー。
しかし、既にその擂り鉢の中心で、腰まで埋もれ、ジョーは完全にはまり込んでしまっていた。
そして悪い事に、その状況のジョーの方に、ザンブルのメンバー16人全員が、向かっていたのであった。