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キング・ジョー Absolutely world in the goggles  作者: 蘭堂
Huge tower of mystery in the "Baongu"
64/74

2:Holy Land which is not seen

 オズルト領 フレイナン森林地帯 上空2000(メルトル)



 雲の合間を縫う様に、一機の大型輸送ヘリが飛んでいる。

 『26ビルゾン・ハーキュリー』航続距離:1,952000(メルトル) 最大離陸重量:56000KG(キログレム定員最大150名、11,240ドッズ式ターボシャフトエンジンx2機を乗せたオズルト領、軍用ヘリコプターだ。


 

『あと、300MSミリセコンドで目的地上空に到着します』


 パイロットからカーゴエリアに通信が入る。

 そのカーゴエリアには、20人の男女が着座していた。


「時間だな」


 顔の上半分を機械化した大きな男が、4個ある電子眼で他のメンバーを見た。


 それぞれ伸びをしたり、あくびをしたり、首を回したり、まとまりが無く実にだらけた雰囲気だ。見るとその者達の出で立ちもバラバラ。全身機械化された者、ケープをまとう者、フルプロテクションアーマーを付けた者、ジャケットを羽織っただけの軽装の者もいる。また持っている武器もバラバラだ。銃を持つ者、レーザーライフルを持つ者、剣を持つ者、杖を持つ者、素手の者。まるで、舞台の出番を待つ役者達の待合室の様だ。

 しかし、そうではない事を伺わせるのは、ここに居る者達の胸元に、オズルト領特殊部隊のマークの、赤い二つ頭のニルカ蛇の刺繍が付いていた。

 この者達は、その技術は世界一と異名を持つオズルト領機動部隊『エル・バザーブ』の中でも特に優秀な兵士達を集めた部隊だ。

 彼らは『Xhamble/ザンブル(硬い鱗)』と呼ばれ、銃器の取扱いから剣技、格闘、そして兵器の操作まであらゆる道を極めた、戦闘のスペシャリスト達だ。

 ここのリーダーは顔を上半分機械化した『ズウォーム』と呼ばれている男。

 彼は、その身体を機械化する事により、脳の容積を増やし、更に彼の持つ天性の技を、増幅させていた。

 もちろん彼らの名は本名ではない。全てコードネームである。


「ギャスターズ、起きろ時間だ」


 ズウォームが、未だに寝ている男に声をかける。


「う、うぅ~んっっ!」


 起こされた男が伸びをする。メンバーの中で一番背は低く色白で細身の身体は、とてもここに居るには相応しくない風体だ。


「え。もう着いたぁ?」

「準備しろ、今から降下する」


 ズウォームはそう言った後、自分の準備に取り掛かり始めた。


「ハァ~。面倒くせぇ」


 ギャスターズは首をかきながら辺りを見回し自分以外が、黙々と準備を始めているのに気が付くとため息をついた。


「なぁ。なぁなぁジェミイ」


 向かいの席で準備している女性兵士に尋ねた。

「今回よぉ。こんな作戦程度ならグリーグだけで十分と思わん? 身柄拘束だろ? わざわざ俺達が出て行かなくてもよぉ」


「あぁ? そんな事は上が考える事だろ? アタシらは、ただ作戦通り生死を問わず目標を連れて帰るだけ」


 ジェミイは無愛想に応えた。それにギャスターズは反論する。


「だからそんなの(毒)ガス撒いて後でグリーグで回収させりゃ終わりだって。ダロ? それをさぁ、何んでわざわざ『ザンブル』のメンバーが出なきゃならないかなァ。だいたい今回の――」


 ギャスターズはぶつぶつ言いながら立ちあがった。どうやら彼は天性の愚痴り屋らしい。


「うるさいねっ、ごちゃごちゃ言ってないで、サッサと『彼』に代わりな!」


 いい加減、疎ましく思えたジェミイは、近くに落ちていたハーネス固定用ピンをギャスターズに投げつけた。


「わっ!あっぶねぇ」


 ピン先がギャスターズの座っていた座席に突き刺さった。


「いや聞けよ。それがよぉ~、アイツ今回の作戦を嫌がって、昨日から出て来ないんだって」


 まだ愚痴りたいらしい。


「はぁ? それを何とかするのがアンタの役目だろうがっ! 早く降下準備しろっ、それともアタシにこの場でぶち殺されたいか、ぁあ?」


 そんなギャスターズの不遜な態度に腹を立てたジェミイは、その赤い髪を逆立て放電させた。


「わ、わかったよ、下に着いたら代わるから……なんだよ……まったく……ぶつぶつ……」


 ギャスターズは、更に小声で愚痴をこぼした。

 そのやり取りの間、他のメンバーは我関せずで無視を決め込んでいる。


『上空に着きました』


 そしてヘリのパイロットから再び放送が入った。

 

「よし。降下開始」


 ズウォームの掛け声であっさりと作戦が開始された。

 カーゴエリアの左右の扉が開く。強い風が中に吹き込んで来た。ザンブルの兵士達は次々と地上に飛び降りて行く。

 先程揉めていた二人もそれに続いた。



「回収は予定通り、2時間後で頼む」

『了解、ご無事で』

「ああ」


 ズウォームは、パイロットに内臓マイクでひとこと言うと最後尾で飛び降りて行った。





 SITL(犀川工科研究所)屋上


 それを見た時、初めは鳥でも飛んでいるのかと思った。雲の間から見え隠れするその姿は、数羽の鳥達が、旋回しながら獲物でも探しているかの様に見えたのだ。


「ん!? 違うか?」


 視線追尾でターゲットを捕捉し、ハンドモーションで倍率を変えて見てみるとそれは鳥ではなく、人間の姿だった。


「?」


 人間達が、空から落ちて来ているのだった。


 その時、『ARゴーグル』に『アラート/リーフ』が現れメッセージが非常事態を告げた。


「ン?」


 落下しているヤツらが武器を携帯している。


「あ~。やっぱりノンビリ観光はさせてもらえない様だな。どうやらお客の方が先に来たか」


 磁石に集まる砂鉄の様に、運命の青写真に則り引き寄せてられて行く。


 持っていた荷物を足元に下ろし、もと来たところを走り始めた。


「おーい、ヴォル、ノスト、お客さんだ」


 ジョーは、彼女達に近付きながら上を指差す。

 見上げる二人。


 ジョーは彼女達に指示を出す。


「長距離射撃の上手い方はどっち?」


 ヴォルティスとノストゥラは互いに見合わせると


「私です」


 ノストゥラの方が応えた。


「よし、じゃあノストは俺と来い」

「ハイ」

「ヴォルはこのままロケットの発射準備を進めてくれ。急げ」

「ジョー様!」


 そのまま行こうとするジョーに、ヴォルティスが呼び止める。


「ン?」 


 ヴォルティスはその場に立ち止まったジョーの肩を掴みクルリと振り向かせた。


「?」


 二人の目線が合う。ヴォルティスの赤いビジョンブラッドは真っ直ぐにジョーを見つめる。ジョーもヴォルティスを見上げた。


 ギュッ。


 ヴォルティスは、淋しそうに笑みを作り、両手を広げてジョーを抱きしめた。


「うぐぅぅ……や、やっぱりか」


 ヴォルティスのプラチナヘヤーが顔にかかり、ジョーの頭が豊かな胸に引き寄せられて行く。

 ジョーより大きな身体が、ぴったりと貼り付く様に身体を抱きしめ、暫くそのままの姿勢を保つ。

 端から見ると、過保護母親の姿の様に見える。しかし、実は見た目とは逆で、子供の様にヴォルティスが、ジョーと離れる事への心の不安の表れなのだ。


「プハッ、ハァハァハァハァ」


 ジョーはすぐに息苦しくなり顔を横に向けた。

 するとすぐ側でノストゥラは少し羨ましそうに見ている。


 ギューーッ!


「ぐへっ!」


 更にヴォルティスがジョーを自分に引き寄せて行く。


(こ、こりゃ、マジで何とかしなきゃいけないなぁ)


 離れる度に、こう抱きしめられてはたまらない。ジョーは、ヴォルティスの胸に顔を埋められながらつくづくそう考えていた。



 地下にある、『M・O・T』の兵士達が残して行ったプラズマライフル『バルチス‐MpA』を6丁持ち出して来た。


「ノスト。屋上まで戻ってる時間が無い、地上から狙おう」

「ハイ」


 崩れ落ちている正面入り口ではなく、裏口から外に出た。場所を確保し二人は片膝をついた。

 ここからだと建物越しに狙えるのだ。

 3丁をノストゥラに渡し言った。



「俺は、向こう側から狙う。ノストは、ココから降りて来るヤツらを撃つんだ」

「ハイ」

「この銃はチャージに時間がかかるから、順番決めて使い回す様にな」

「ハイ」

「後、敵が一人でも地上に着いたら、この場を離れて中に入って応戦する」

「あの、ジョー様」

「ン?」

「もし、アイツらをジョー様より、沢山当てる事ができたら、ご褒美で私も『ギュー』させてもらえませんか?」

「へ?」


 どうやらノストゥラは先程ヴォルティスがジョーの事を抱きしめていた事を気にしていた様だ。


「あははは、そっか。面白いね、よーし。じゃ競争だ、俺より沢山落とせたら、そのご褒美を上げるよ」

「ホントですか?」


 それを聞いてノストゥラは、宝石の様なターコイズブルーの瞳を輝かせた。

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