6.キャトリーヌ ON AIR
アメリカ
ソルトレーク地下シェルター施設内
13人の家族長達は、地下施設内にある『第6車両室』と言う、主に建設作業用の機械類が集められた部屋に全員集まっていた。
建設作業機械と言っても、一つが15メートル以上もあるような巨大な機械ばかりで、複雑なアームが何本も取り付けられてたタイプとか、下向きに大型ドリルが付いたタイプ、また円柱型のタンク四つ斜めに乗せたタイプなど、いろんな建設の作業機械が1000台以上並んでいた。
これら全てに共通された特徴がある。それは、どのタイプにしても、どこにも運転席が無く、無人ロボット化されていると言う事だ。ここにある建設作業機械は『AS計画』後、支配者達が、地球に新たな世界を創る為の、道具が揃えられているのであった。
その巨大な建設作業ロボット達が並ぶ中に、13家族長と医療班、警備班、作業班達、数十人が集まっていたのであった。
「これが、発見されたのはいつ頃かね」
家族長の一人『リンバーマン家』のフレデリックが尋ねた。
『リンバーマン家』はこの地下施設の建設に深く携わってきたのだ。
「はい、警備長の話しによると、15分くらい前から、忽然と監視カメラに現れたそうです」
「その警備長は?」
「私です」
黒いコンバットスーツを着た長身に口髭の男が現れた。
「名前は?」
「ライツです」
警備長のライツはその場でフレデリック達に詳しく説明を始めた。
その様子を少しひいた位置からアレサンドロとマーカスが、他に聞かれぬ様、小声で話していた。
「どうやら、中では本格的に始まってしまったみたいだなアレサンドロ」
「ああ。その様だ」
「『冥約の王』はやはり日本人だったか」
「先代達の言う事は正しかったな」
「しかし、こうもあざやかに事を運ばれてしまうと、我々はまさに道化だぞ」
「フフフッ。そうだな」
「オルグ指令には後で伝えておくとしよう」
「意識が戻ったらな」
「戻れば良いが……」
「『塩の柱』になるよりマシだがな」
「人が悪いぞアレサンドロ」
「フフフッ、すまんマーカス」
家族長達の眼の前に見えるのは、巨大建設作業ロボットに囲まれる様なかたちで、日本の『SITL(犀川工科研究所)』に居たはずのオルグ指令達『M・O・T』のメンバーが、何故かこのソルトレークの地下施設に現れた。そして全員が戦闘していたのであろう当時のまま姿勢で、誰一人動かないのだ。
『バルチス』を構える者、逃げ出そうとする者、血を出し倒れる者、誰かに指示を出している者、全員がその時のまま姿勢で凍りついた様に止まっているのだ。医師班が瞳孔反射を調べても反応しない、しかし脈は打っている。『M・O・T』の兵士達の時だけが、止まっているようだ。そしてそのメンバーの中にオルグ指令も加わっていたのであった。
「医師班、蘇生作業にすぐ取りかかれ、それからこの事は、一般の者達に伝わらぬ様、秘密裏に対処しておけ」
「ハッ」
フレデリックが皆に伝えた。
ヴヴヴヴヴヴヴヴ――。
その時、アレサンドロの携帯電話が鳴った。
「……アレサンドロ様」
「なんだ」
「後、5分少々でミサイルが目標上空に着きます」
「わかった、すぐ戻る。トリガーウィルスの方はどうなっている?」
「はい、既に中身の入れ替えは完了しております」
「よし、では予定通りミサイルの着弾と共に発射しろ」
「かしこまりました」
電話をきったアレサンドロは、微かな笑みを浮かべた。彼の前を医師班により、動かない兵士達を順次担架に運んで行った。
日本
SITL(犀川工科研究所)内
(ジョー、どうやら少し予定が推しているようだ)
「え、どういう事?」
膝立ちのヴォルテス達を、首に巻き付かせいるジョーは、無理やり光るトーラス体の方をに身体を向けた。
(ミサイルがこちらに向かって飛んで来ているんだ)
「え。今何つった?」
(EMPミサイルがこの施設に向かって発射されたんだ)
一瞬ジョーは固まった。
「な、何故っ!?」
(『獣に乗る女』達を施設事破壊すると共に、キミが向こう側に行く前に、建物ごと消してしまうつもりさ)
「ちょっと待て、それはマズイだろう」
ジョーは、慌ててごそごそとヴォルテス達を放そうとするが、まだ彼女達は、すがりついたままで、もがいてもびくともしない。
ギュウウウ――。
「グェェ」
余計に首の締め付けがキツくなった。
(心配しなくていいよ、ミサイルは予定内だから)
「なにが予定内だ、ミサイルなんかが来たら、別の地球とかに行く前に、死んじゃうだろうがっ、早くココから逃げないと」
ヴォルテス達を首に巻いたまま、重い足取りで、ずりずり出口に向かって歩き始めた。
(ジョー心配しなくて良い。実は向こう側地球に行くのにあのミサイルの力が必要なんだ。その為に、ヴォルテス達にベイマスを連れて来てもらったんだ)
「?」
ジョーは、言われている意味がわからなかった。するとトーラス体の光りが、白から淡い黄色に変化する。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ――。
『M・O・T』の攻撃や地震により壊れ果て、活動停止していた『獣に乗る女』のベイマス達が、一斉に稼動を始めた。ある者は首が千切れ、またある者は足がもげていたり、また、上半身が無い者や、両腕がぶらぶらと取れかけの者達等、全ての『獣に乗る女』達が立ち上がり出した。
ペキペキペキッ
パキン、パキン
ガッ、ガガガガガガガガッ
至る所で、金属が無理やり引き曲げる様な音が聞こえる。ジョーは、辺りを見回した。
「アイツら、みんなぶっ壊れているじゃん」
(まぁ、見ていなよ)
ベイマス達が、そびえ立つ様に立ち上がった、そしてそれぞれの背中から伸び上がって来る、三日月状のアンテナの様な物が見える。
「あの、物体はなんだ?」
向日葵の様に、全て同じ方向を向き、伸びたアンテナを見てジョーが尋ねた。
「あれは『念捉鎧』さ」
ジョーの『類魂』という男は、平然と応えた。
その頃、遂にEMPミサイルが『SITL(犀川工科研究所)』上空までやって来たのであった。