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4.キャトリーヌ ON AIR


 ジョーはヴォルテスとノストゥラを見上げながら語った。


(コイツらも、元の場所に帰さなくていいのか?)

「うーん、戻すには戻すつもりだけど、その前にやるべき事があるんだ」


 現在、ジョーの身体に二つの意志が存在している為に、外から見ると、ひたすらブツブツと独り言を言っている様に見える。


 ジョーが新しい『Leafリーフ』を開く。何かグラフを見ながら操作し始めた。


「この二体の『獣に乗る女』達は、元々、キミを向こうの地球に行かせない為に、生身の身体を捨ててやって来た人間なんだ」

(へ? コイツら全部ロボットじゃなかったの?)

「確かに、こちら側でベイマスと呼ばれているタイプは、向こうの地球でも同じ様に『ベイマス』とか『ベヒモス』と呼ばれている機械兵なんだが、レヴィアスンと呼ばれた彼女達は、別なのさ。彼女達の地球でも有機体の物質を、こちら側に来る技術は無かった、だから彼女達はこちら側に来る為に、金属製の身体に変えたんだ」

(こっちの世界より遥かに科学力がありそうだな……)

「それを確立出来そうな技術は、こっちにもあるさ。ほら、コレ」


 そう言って後ろの『転送装置』を指した。


(あー『切り株』か)

「このまま、研究を続けて行けたならば素晴らしい発明になったと思うよ」

(とても過去形な発言だな)

「残念だがここから先は、時間軸が違うから無理だね。とにかく彼女達は、人間だった身体捨てて、決死の覚悟でこちら側にやって来たんだ。もちろん、帰る方法なんて在りもしないから、文字通り片道切符ってヤツだね」

(へぇ~可哀想になぁ……)


 自分がターゲットだった事をすっかり忘れて、同情しているジョーだった。その間にもジョーの身体を乗っ取っている『類魂』の男はせわしく『Leafリーフ』をコントロールしている。


 やがてヴォルテスとノストゥラは青白い光りに包まれ浮かび上がって行った。


「しかし、それは表の理由。自我の観点からすると理由は他にある」

(……どういう事?)

「彼女達は、キミに会う為にやって来たんだ」

(会う?)


 光りに包まれた金属製の身体がバラバラになって行く。腕、脊髄、膝、腹、顎、指、複眼、全てのパーツが壊れたブロックの様に、光りの中で、色が溶け、形が崩れて行くのが見える。


「彼女達は、キミの魂と約束を持っていたんだ」

(まぁたそれか)

「頭で理解出来ないのは残念だが、仕方ないね」

(こらこら、人をアホみたいに言うなよ)

「そんなつもりで言ったんじゃないよ。ジョー、思考って言うのはね、キミと言う『現象』を維持して行く為の経験と言うDBデータベースを軸とした『自己起動式管理システム』みたいな物なんだ。」

(また、変な事を言い出した)

「例えば、キミが『今これから、一切の思考を止める』って思って考えるのを止めても5分もすれば、ついつい何か考えているだろう? それは『自己起動式管理システム』が動いている証拠だ」

(じゃ仏教とかである『無の境地』って言うのは?)

「うん、『自己起動式管理システム』を止めるって事」

(なんだか、身も蓋もないな)

「でも、その『自己起動式管理システム』を止める事が出来ると、真の魂が見えて来るんだよ」


 ジョーが、指先で用済みらしい『Leafリーフ』を幾つか弾き飛ばすと、ヴォルテス達は二つの大きな光りの塊に変わってしまった。その光が、強く、弱く、呼吸する様に色を変え点滅を繰り返す。



「まぁとにかく、この先彼女達は、キミと共に歩むさだめにあるのさ」

(ふうん……。で、その彼女達の姿は既に溶けて消えてしまっているが?)

「いやいや、消えてしまったワケではないよ、ほらっ」


 光りの塊がシュウシュウと音を出し、形を変え始めた。


(やっぱり魔法だな……)

「あはははは、かつては医術も魔法と呼ばれる時代もあったしね」


 光りが床に下りてくる。その輝きが次第に薄れてゆき、気付けばそこには、金属で出来た大きな人型の繭の様な物が現れていた。


(何コレ?)


 まるで棺の様なその繭は、全て鈍い銀色に輝き、中からゴボゴボとの音が聞こえて来る。


 『Information(情報)/leaf』には『シェル(shell)』とだけ表示されていた。


「コレで彼女達を元の姿に戻してあげるのさ」


 ジョーはまた新たな『Leafリーフ』を2枚開き、何やら作業をしている。

 繭はゆっくりと横になり床に倒れていった。


「さぁ、トロシアの娘者よ、長き夢より真実を語り始めたまえ」


 グィイィィィーーーン


 その言葉が合図の様に二つの繭が、真ん中あたりから縦に筋が入り、ゆっくりと左右にに開き始める。


 ザバァァァーーッ!


 中から大量の液体がこぼれ出して来た。



(ムムッ!?)


 そして、その繭の中に人型の影が見えていた。



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