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2.キャトリーヌ ON AIR

 ジョーとそっくりな男は、笑みを浮かべゆるりと語り始めた。


「本来、この世界に満ちている物は全て、キミ達が『波動』とか『純エナジー』と呼んでいるたった一つの存在『絶対領域』なんだ。そしてその中にキミ達が見えている『相対領域』の宇宙が在る。更に言うなら、キミ達の宇宙は唯一の存在ではなく、キミ達がそれをマルチバースと呼んでいる幾つもの宇宙が存在しているんだ。その『相対領域』の宇宙の一つにキミ達が居る地球が存在しているのだが、その地球もまた多層次元に複数存在しているんだ。ここまでは理解出来るかい?」

「うぅ……何とか」

「よろしい。ここからは更に想像力が必要なのだが、その地球は次元的にちょうど時計の文字盤の様に12の存在に配置されていて、そしてそのうちの二つ地球が一定の進化の準備が出来ると、それぞれの地球から互いに『特使』を送る。それが『冥約の王』と呼ばれている者だ。その互いに送られた『冥約の王』が相手の地球で経験した事全てが記録され、それぞれの地球の者達が『冥約の王』に対する行動や、対応により、相応しい方の地球が次の進化をむかえる事になるんだ」

「えーと、自分の地球の『冥約の王』の行いが自分の地球の進化を決めるって事?」

「いや、その逆だ」

「自分の地球の『冥約の王』が相手の地球の進化を決めるのさ、わかりやすく例えて言うと、二つビーカーに入っている謎の液体を、互いに一滴ずつ、混ぜてその化学反応による色の変化を観察するって事かな」

「あまりに突拍子のない話しだな。いったい何の為にそんな事をするんだ?」

「これは進化と言う大いなるゲームだ。宇宙には永遠の変化が続くものなのだ」

「しっかし、なんでそれが俺なんだろな~」

「あはははは。しかし、実はその『冥約の王』をキミが自分で志願したって言ったら驚く?」

「え。そんなワケわからん事を志願した記憶はないがなぁ」

「まぁ、脳みそで考えるぶんには、覚えてないだろうね」

「どういう意味?」

「ジョー……人間は何から出来ていると思う?」

「え? えーと、水分、たんぱく質、脂質それから……」

「あはははは。そう言う事じゃなくて。人間とは『肉体』と『意志』と『魂』の三つの物で成り立っている『現象』なんだよ」

「ああ、そういう事か。でも『現象』って言われると何んだか違和感あるな」

「でも、これほど的確な表現はないよ。例えば、もし今のキミから『肉体』を奪ってしまえば、キミは『犀川丈』と言う存在は無くなってしまうよね」

「そりゃそうだ」

「じゃ『意志』は?『魂』は? どれ一つ欠けてもそれは『犀川丈』では無くなってしまうよね」

「でも、仮に『肉体』だけで『意志』が無くなっても、俺は変わらないんじゃない?」

「そうかな? それは既に『犀川丈』と言うアイデンティティは維持出来ていないから、言うなら『かつて犀川丈だった者』って事じゃない?」

「うーん」

「いささか横道に反れちゃったね。ジョー、キミと言う存在はその三つの総体から出来ていて、そのうち『魂』が持っている約束が、今回の『冥約の王』と言う事だから、総体としての『犀川丈』になってしまえば記憶に無いのは当たり前だろうね」

「つまり『魂の約束』って事?」

「まさにその通り。さて、ここからが大事な話しだが、ジョー。キミは今からその『冥約の王』として向こう側の地球に行かなければならない」

「向こう側のって何処の?」

「あの『獣に乗る女』達が居た地球さ」

「え、『獣に乗る女』達ってエイリアンじゃないの? 地球人?」

「そうだよ、先程言っていた、時計の文字盤で言うなら丁度反対側の地球の住人さ」

「反対側ねぇ」

「反対側って言ってもあくまでもキミに説明する為に言ってる事をお忘れなく。キミに多層次元を説明してもわかってもらえないからね。とにかく、キミには、今から向こう側の地球に行ってもらい、ある物を集めてもらいたい。」

「ある物?」

「そう。『プラウェルコード』と呼ばれる物だ」

「『プラウェルコード』?」

「そう。『プラウェルコード』だ。これは別名『十義の幻想』と呼ばれる物で、その地球に根ざす、人間を人間として縛り付け、進化を妨げるまぼろしだ」

「まぼろし……」

「それは、もしかしたらその地球にある伝説の宝かもしれない、またその辺りに落ちている石ころの中にあるかもしれない。『プラウェルコード』はその地球に現れた人間を縛る十個の象徴なのだ」

「それを見つけるとどうなるワケ?」

「『プラウェルコード』はその地球の象徴であるから、それに触れる時、必ずキミはその幻想を理解する。そして向こう側の地球の人が『プラウェルコード』を中心に関係して来るだろう。それをキミが経験するのだ」

「経験?」

「そうだ。そしてその経験の中に潜む幻想の答えを見つけ、抽出して行くのだ。それが『冥約の王』としての役割だ」

「曖昧過ぎて難し過ぎだろう。意味がわからん」

「もちろん、キミもこのまま状態で向こう側に行っても心細いだろう。だからコイツを用意した」


 男は、上着のポケットからある物を取り出した。


「え!? それ……沙織さんの『ARゴーグル』?」


 男が取り出したのは、かつて沙織がジョーに渡し、また『獣に乗る女』達に壊されてしまった『ARゴーグル』と『ARグローブ』だった。


「ああ、でもコレはさっきまでキミが使っていたゴーグルとグローブじゃないよ」


 確かによく観ると所々のデザインが少し異なるが。


「コレは、『絶対領域』の知識、アカアシックレコードを使いこなす為のツール。つまり今までの『Augmented reality goggle』ではなく『Akashic Reading goggle』なのさ」

「アカアシック・レコード……?」

「そう。アカシック・レコードとは、過去・現在・未来・知識・叡智・記憶それらの全てが集う場所。このゴーグルはそこからデジタル的に必要な情報を引き出す事が可能なのだ」

「でも、どうやって使うんだ?」


 ジョーはそのゴーグルとグローブを手に取ってみる。


「それは、今からレクチャーしてあげるよ。さぁ、まずは装着してごらん。起動方法は既に知っているよね」


 ジョーは、グローブを着ける。『プシュー』と排気音と共に手にフィットさせた。


「なぁ、相手の地球の『冥約の王』ってのは何時頃来るんだ?」

「もう既に来たよ」

「え、マジ?」

「マジ。」

「その……もし、俺達の地球がその進化に相応しくないと判断されちゃったらどうなっちゃうんだ?」

「そうだね、無くなっちゃうかな」

「え! 地球が爆発でもするの?」

「いや。爆発って言うより、次元的に元からその地球は存在しなかった事になる」

「えーーーっ!!! それマズイじゃん」

「元から無かった事になるから大丈夫だよ」

「いやだって、俺の住んでる地球がみんな消えちゃうんだろ? ちっとも大丈夫じゃねーって」

「でも、別次元にはみんな居るから問題無いさ」

「それどういう……」

「さぁさぁ、早くゴーグルも着けて」


 男に促されて、ジョーは『ARゴーグル』を装着した。


「起動っ!」


 ピッピピッピピピッピィィィーーーッ!!

 キュイイイーーーン!

 キュイイイーーーン!


 電子音が響き、こめかみのLEDが紫色にフラッシングして行く。


「……ジョー、キミの身体少し借りるよ」

「え、今なんて言った?」


 ジョーの姿が光りに包まれて行った。



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