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7.VELVET RAIN

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――。


 地鳴りの様に重い響きが施設内を走り抜けて行った。

 割れたガラスがガチャガチャと跳ね上がり、横倒しになっていたフォークリフトが、左右に振られ鉄柵に何度もぶつかって行く。壁には楔を打ち込まれた様に幾つものヒビが入り、床は波の様にうねり出した。兵士達が立っていられず、至る所で転がり、地震というものに経験の無い者達は、助けを求めて叫びを上げていた。『S・A・D』も姿勢制御しきれず倒れ、『獣に乗る女』達も揺れの為、攻撃出来ないでいた。



「こ、これは…な、なんだ……地震か!」


 他の兵士達とは別行動をとっていた為、離れた場所で、意識を取り戻したキースは、すぐに辺りを見渡し、倒れているモブランに気が付いた。


「モブス!」


 しかし、上から物が落ちて来たり、揺れが酷くて、なかなか近付く事が出来ない。



「ちくしょう!」


 キースは、辺りの物と同じ様に、波打つ床に翻弄されながらも、這いながらなんとか倒れているモブランにたどり着くと、そこには広い血溜まりが出来ているのに気が付いた。

 見るとその血は、モブランの右手辺りから出ており、そして、彼の肘から先が無くなっているのが見えた。


「も、モブス、モブス! しっかりしてくれ」


 キースは、モブランを仰向けにして、自分が被っていたヘルメットを取り去り、モブランの胸に耳を当てる。周り雑音で聞き取りにくいが、確かに心臓の音が聞こえて来る。どうやら死んではいない様だ。

 しかし、早く止血処置をしないと、このままではモブランは出血多量で死してしまう。キースはハーネスポケットからメディカルキットを出し、その中から止血用ブレットと半透明のフィルムを取り出した。これは患部にフィルム状の膜を貼り付け、その先にブレットを当ててスイッチを押すと火薬の力で患部にフィルムを焼き付け止血する物だ。しかし、その際は激痛を伴う。


「死ぬなよ、モブス」


 揺れが酷くてフィルムの上にブレットの先をポイント出来ない。キースはカンを頼りにブレットのスイッチを押した。


 カチン!


「ガアァァーーーッ!!!」


 切断された患部が赤く発光し、焼けた臭いがする。モブランはあまりの激痛に絶叫し飛び起きた。


「アアアアアアアアーーーッ!」

「耐えてくれ!」


 地震が続く中、激痛に暴れるモブランの上に馬乗りになり、力ずくで押さえ込む。


「うぅ……」

「ハァハァハァ。大丈夫かモブス」


 暫くしてモブランが落ち着いてきたのでキースは掛けた力を抜いていった。フィルムに染み込ませてある、即効性の鎮痛薬が効いて来た様だ。



 どうやら地震も少しずつ収まってきているようだ。


「ハァハァ……ありがとうMr.キース」


 礼を言うモブランだったが、その顔色は青白く、あまり余裕のある状態ではない。キースは一時的に低下した血糖値を補うタブレットを飲ませた。


「いえ。それよりその腕が……」


 キースはモブランの失った腕を見つめた。


「ちくしょう、俺の腕が」


 絶望的な表情でつぶやく。


「私が意識を無くしていた間に何があったんです?」


「それは―――」


 モブランは『獣に乗る女』レヴィアスンと呼ばれるヴォルテス達が瓦礫の中から現れた時の事をキースに説明した。

 無論、その時ベンが死んだ事も。


「そうですか……」


 モブランに言われて、キースは向こうの方に横たわる、ベンの死体を 見た。

 せめて黙祷を捧げようと、キースが近付こうとすると――。


『GYOOOOOOーー!』


「!?」


 物影から急に『獣に乗る女』ベイマスが現れた。


「逃げろ!」


 モブランは叫び、落ちていた『バルチス』を拾い上げ、構えて撃とうとする。しかし右手が無い為、固定出来ない。


「クソッ!」


 片手で支えるには『バルチス』が重く、床に何度も落としてしまう。


 ベイマスの電子複眼とキースの暗視ゴーグル越しの眼が合う。ベイマスは雷球を撃とうと、右手の先をキースに向けた。キースは『バルチス』を持っていない為に、反撃出来ない。


 ここまでかっ。キースがそう覚悟した時、モブランの横から急に影が飛び出して来た。


「伏せろーーっ!」


「!?」


 聞き慣れない声でその影が叫び、キースに指示を出して来た。モブランの横を通り過ぎざまに持っていた『バルチス』を奪いベイマスを撃つ。


 チュイィィィーーン

 バシューーッ!


 チュイィィィーーン

 バシューーッ!


 チュイィィィーーン

 バシューーッ!


 右腕、頭、左腕、その真ん中を正確に撃ち抜いた。不意をつかれたベイマスは三カ所から火柱を上げ、後ろによろめいて行く。


「トドメだ!」


 最後に胸へ一発。瞬間、『獣に乗る女』ベイマスはその全身に高温の炎を上げて完全停止した。


「おー、凄い威力。この銃ならアイツらを一蹴出きるなぁ」


 『バルチス』の銃身を上にむけ、関心しながら見上げる影。

 それは先程まで、『転送装置』の中にいたジョーだった。


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