4. Apocalypse at the Front
スイス、上空10000メートル
「オペレーター。ノイズが酷くて確認が出来ん、調整を急げ」
大型モニターを、睨みつけながら、オルグ指令は叫んだ。
「現在太陽風の影響がピークの為、暫く使えなくなりました。他から使える映像の検索中です」
無人偵察機からの動画は、『TDエレクトロニクス社』本社ビルが、電波障害によりブロックノイズが酷くて『獣に乗った女』達の確認が出来ない。
「まだかっ!」
オルグ指令が、声を荒げる。
「あと30秒お待ち下さい」
オペレーター達は、返事をしつつも、ひたすらキーボードを叩く。彼らの前にあるパネルには、次々切り替わってゆく、映像が見えた。
「指令、彼らも必死にやっています、落ち着きましょう」
キースが後ろから諭す。
「――今でます!」
オペレーターが、言いきると同時に大型モニターの映像が、切り替わった。
「「!?」」
「この映像は、太陽風の影響を、強制的にデジタル補正している為、実際時間より、約7秒の遅れがあります」
「もう少し、良いアングルの映像はなかったのか」
「これが使える映像で、一番まともなヤツです」
敷地から1キロメートルほど離れた、丘の途中にある、国道の監視カメラからの映像であった。
爆煙は、高さ100メートルを越え、轟々と、『TDエレクトロニクス社』本社ビル全体を覆い尽くしている。
しかし、ときおり風の影響で、見える施設は至るところで火災が起き、コンクリートが崩れたり、大穴があいていたり、その殆どが瓦礫の山となっていた。
逃げのびた兵士達が、カメラの左手、反対側の雑木林の所に、小さく映っている。
その映像を作戦指令室の皆が凝視した。
そして……
「……おかしいですね」
キースが、オルグ指令の横を通り、大型モニターの前に出てきた。
「『TDエレクトロニクス社』のダメージが、少なすぎます」
「…………」
オルグ指令は黙って聞いている。
「…それに、『獣に乗った女』達の姿が無い、無人偵察機からの映像が見えた時、ほら、この駐車場の端の『S・A・D』の残骸の横辺りに『獣に乗った女』の一体がパネルを開いていましたが既にいません、ココも、ココにもいましたが、今はいません。残骸もありません」
キースは、大型モニターに指をさしなから説明してゆく。
「オペレーター、どうだ?」
「はい、キース氏の言われる通り、『獣に乗る女』達の『C・S・T・R(分類別固有熱反応)』が消えています、残骸も確認できません」
「クライン中隊長を呼べ」
「今は、音声だけになりますが……」
「かまわん!」
「了解。――――クライン中隊長でます」
「ザザ…はい、クライン…です」
「クライン中隊長、そこから『獣に乗った女』達の確認できるか?」
「ボス、ザザ…今、ちょうどその件で…連絡を入れようとしていたところでした……ザ…」
「…………」
「まだ、ザ…最終確認がとれていないのですが、兵士達の話しによると、爆発の……『獣に乗る女』達…が全て消えてしまったようです…ザザ…」
「消えただと?」
オルグ指令も戸惑いの色を隠せなかった。
「…ハイ…敷地内に…ザ…『獣に乗る女』達の姿が全て無いのと、それに……。ザザ…爆発の瞬間消えた…のを、見たヤツがいます…ザ」
「その兵士と代われますか?」
キースが急に会話に入ってきた。
「ザザ…今、代わりま…す……」
クライン中隊長のマイクを、目撃した兵士に渡したのだろう、会話途中で声質が変わった。
「私は、キース・ベルメジャースと言います。あなたの所属と名前は?」
「ハイ、…カナージの部隊に所属しています、モブランと…ザザ…言います…」
「何を見ましたか?」
「……先程の爆撃の際、自分は――――」
モブランは、やや疲れた声で『獣に乗る女』達の事を語り始めた。
そして大型モニターには、破壊された『TDエレクトロニクス社』の施設が、これか更に起きる事を予感させる様に、黒々と煙を天に昇らせている姿が映っていた…………。