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6.VELVET RAIN

 ジョーが意識を取り戻した場所、そこは金属製の壁に覆われた、3メートル四方くらいの見たことも無い小さな部屋の中だった。

 ハニカム状のアルミニウムの床に、波打つ銅製の壁、青い照明が床の下から照らしている。そして部屋の真ん中には台の様な物が取り付けられていた。


「エート、ココは……?」

 

 見回しながら、立ち上がり辺りを伺う。

 

「おかしいな。確かマリアと一緒に……攻撃を避けて……飛んで……それから頭を……イテッ!」


 記憶を辿り、何気にオデコに手をあてたら、その時にぶつけたのであろう、コブが出来ていた。


 ジョーは、右手のひらで、囲みながらコブを指先で触った。


「イチチチチ。なんだコレ、コブ出来てる。ゲッ! 血ィも出てる。参ったなぁ……でも……おかしいな? 俺、どうしてこんな所に居るんだ?」


 その部屋の中をうろついてみようと脚を踏み出した。


「あぁっ!?」


 ジョーは着ている服の至る所が、裂けてボロボロになっているのに気が付いた。


「あれっ? 破れてる。へ? 何が起きた???」


 なぜかジョーには、自分がヴォルテス達と人外の死闘を行った記憶が抜け落ちている様だ。


「参ったな……。とにかく、ココから出よう、どこかに出口はないのか?」


 ARゴーグルを使えば良いはずだが、今はその事に頭が回らない。手で壁を触り扉を探す。すると、壁の合わせ目から、音が聞こえて来る。


「ん? ナニか聞こえるぞ」


 ジョーが壁に耳を当てると、低く響く音や、人の叫ぶ様な声が聞こえて来た。


「!?」


 ジョーは壁の合わせ目に指先を入れて、無理やりこじ開け様とする。


「ぐぐぐ……っ。コノ~……開けぇーーっ!!」


 とても開く様子ではない。


「ハァハァハァ。誰かココ開けろってーの!」


 バンッ!


 びくともしないので、叫んで蹴っ飛ばした。


 ……ガチャン、ゴゴゴゴゴゴ――――。



 言った瞬間、ジョーの眼の前に『Open』と書かれた『Audio input(音声入力)/leaf』が現れて、横の壁が、それごと重く開いていった。


「あ。ゴーグルが反応したのか、忘れてた」


 ARゴーグルがジョーの声を拾い、開いたのであった。


 開いた壁の奥はさらに通路になっていて、その先には灯りが見える。ジョーは慎重に足下を確認しながら、そこを進んで行った。


「ン!?」


 出口に近付くにつれ、先ほど壁越しに聞こえていた音は、次第に大きくなり、灯りに見えたところは、光りがフラッシュを繰り返していたのがわかって来た。



「うわぁぁーーーー!?」


 外に出てみると、ジョーが居た所は、元蔵達が、開発テストをしていた切り株、『転送装置』の中だった。

 そして、現在その『転送装置』の周りでは、『獣に乗る女』達とオルグ指令の私設部隊『M・O・T』との戦いの真っ最中だった。


 爆風が、辺りの靄を巻き上げ、大気の質を一変させる。兵士達の使う『バルチス‐MpA』プラズマライフルの発射音が施設内に鳴り響き、『獣に乗る女』達の放つ雷球による爆発が施設を共振させて行く。瓦礫に火が付き火の粉も舞い上がり、至る所で攻防戦が行われていた。


 ズガーーン。


 兵士達に集中攻撃を受けていた『獣に乗る女』ベイマスが破壊され、下半身のパーツを巻き散らせて倒れて行く。


「下がれっ! 気を緩めるな、相手はまだ止まってはいない」


 クラインが自分の隊に向かって叫ぶ。その指摘の通り、ベイマスは上半身だけで動き始め、判断の遅れた兵士の一人が、その脚を掴まれた。強い力で引き寄せられた。悲鳴と共にボキボキと脚の骨が砕かれて行く音が聞こえて来る。必死で兵士は抗うが、『獣に乗る女』は空いてる側の手で兵士の身体を掴み、千切ろうと引っ張り出した。


 バシューー!

 バシューー!

 バシューーーッ!



 他の兵士達が救出の為に、『獣に乗る女』にプラズマを何発も撃ち込む。銃青のボディがじゅうじゅうと音を立て赤く穴が空いて行く。それでもベイマスは、まだ活動を止めていないる。


「クソッ!何てタフなんだコイツら」

「死ねーーッッ!」


 掴まれた兵士は、既に意識が無い。


 バシューー! バシューー! バシューー! バシューー! バシューー!


 バシャッ!


 やがて、全身を蜂の巣の様に撃ち抜かれた『獣に乗る女』は、活動停止し、倒れて行くのと同時に、掴んだ兵士を床に叩き潰してしまった。


 結局その兵士は全身は骨を砕かれ死んでしまった。


「クソッ! いいか、完全に破壊するまで絶対にターゲットから眼を放すな解ったな!」

「了解!」


 クラインが周りの兵士達に叫んだ



 更に、そこから少し離れた西側のエリアでは、オルグ指令が兵士達を直接指示していた。



 バシュー……バシュー……バシュー……。



 『S・A・D』の背に取り付けられた2門の中型≪バルチス≫が連射と言える程の早さではないが、交互にプラズマを発射してゆく。


「威力は、確かにライフルよりあるが、もう少しエネルギーチャージを早く出来ないか」


 オルグ指令がつぶやいた。


「発電用トレーラーでも持ち込めれば本来の連射も可能ですが、現在、『S・A・D』に搭載用の小型発電機なので、この場所ではコレが限界です」


 ドドーーン!

 ドドーーン!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。


 『獣に乗る女』が破壊され火柱が上げてがる。


「よし!」


 オルグ指令は一人で頷いた。

 

 しかし、それと同時にすぐ近くで大きな爆発が起きた。兵士が衝撃で飛ばされ2機の『S・A・D』も脚部が外れ、被害を受けた様だ。


「なにが起きた?!」

「指令、『獣に乗る女』が更に9体、入り口から来ます」


 オルトリッチ式ソナーを見ていた兵士が報告する。

 オルグ指令は、すぐにスコープを望遠に切り換えて隊が来た入り口を見る。


「チッ まだ他にいたか」


 そこには、ヴォルテス達が集めた、11体の『獣に乗る女』達が、遅れてこの場所にやって来た。

 

「クラインに、入り口に隊を回せと伝えろ」

「了解」

「それから、モブラン達からの連絡はないか」

「ありません、こちらからも定期的に呼んでいますが返事もありません」

「相変わらず通信電波の問題か?」

「いえ、善くはありませんが、それ以前に通信状況に無い様です」

「……わかった」


 オルグ指令は黙って破壊した『獣に乗る女』を眺めた。


(まだかキース。時間が迫っているんだ)


 オルグ指令はキース達も、きっと、ここに来ていると考えていた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――。


 その時、施設内が大きく揺れ始めた。瓦礫が更に崩れ、兵士達は足を取られ四つん這いになった。何だ地震か? 何も知らされていない兵士達が慌てふためく。しかしその地震は『妖星ニーブル』の影響がいよいよこの『SITL(犀川工科研究所)』の地下にも現れて来たのであった。



「…う…うぅ……」


 そしてその地震により、意識を無くしていたキースが眼を覚ました。



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