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3.VELVET RAIN

『避けられたかっ』


 ヴォルテスがジョーを狙い電磁ソードを振り下ろしたが、手応えが無かったようだ。

 高速移動しながらノストゥラに話しかける。


『バルッ、何機やられた!?』

『エート……11機ね』


 ヴォルテスのすぐ後ろを走るノストゥラが応えた。


『もう一度、ベイマス達全機に集合をかけて、大至急』

『わかった』


 今度は、ノストゥラがヴォルテスの横に出てソードを振る。衝撃波がヴォルテス達より先に走り、闇に中に消えて行った。

 そのまま、ノストゥラが自分の額に指先を当て、精神感応でベイマス達に集合の印を送り、またヴォルテスの後ろについた。


『ヴォル、落ち着いて。『アミルンの黒砂糖を舐めてる(頭に血が昇っているの意)』』

『ワタシは冷静だ!』


 しかし、そのヴォルテスの声は、言葉と裏腹に少しも冷静には聞こえない。事実、ジョーに2度も窘められ、もはやその心は、自戒と屈辱と怒りが合わさり、嵐となっていた。


 そしてその影響は、やはり悪い方へと向かっているようだった。初動を見逃したのであった……。



 やがてアノ男に追いつくかと思ったその時。


『ン?』


 ヴォルテスは最初に『それ』は、ホコリかゴミが顔に付いたかと思いさほど気にはしなかった。

 しかし、そのまま走っていると、やがて肩や足や胴にも『それ』が付いて来る。

 二人が走る先の闇から白い塊がフワリと飛んで来て、その身体にペタッペタッと張り付いてゆく。やがて『それ』は、身体を紅から白く上塗りして行く様だった。


『ヴォル、その身体』

『!?』


 二人は立ち止まり、自分達の身体を見る。先を走っていたヴォルテスね半身が白い。ノストゥラにも幾つか付いていた。


 『それ』は巣の様に編み上げられた、蜘蛛の糸だった。そしてその内の一つが、紐の様に、先の闇に繋がって消えていた。


『これは……何だ?』

 

 そう言った時――。


 ババババババーーーーッ!!


 その蜘蛛の糸が、発光と供に放電を始めた。

 たまらず悲鳴を上げるヴォルテスとノストゥラ。その蜘蛛の糸は、普通の糸ではなく、通電性の糸であった。


『HEEEEEEEーーーー!!!』


 8000ボルトの電流が、金属製のボディをガクガク痙攣させ、全身がスパークに包まれる。電子複眼にノイズが走り、関節から煙りが上がっている。手から電磁ソードを落とし、二人は両膝をついてしまった。


 それを見据えたかの様に、闇から一匹の大きな蜘蛛が這い出てきた。

 放電は、まだ続いている。


「アハハハハーーーーッ、『獣に乗る女』なんて言っても、呆気ないもんだね~」


 その蜘蛛は、徐に立ち上がり人の言葉を話した。

 それは聞き覚えのある声。そう、変化したマリア・R・バンダールの姿だった。


 昔なら『蜘蛛人間』、今なら『人間と蜘蛛のハイブリッド』語るならそんな表現なのだろう。

 マリアのその姿は、およそ人と呼べるモノではない。

 グレーとオレンジに毛拭くその四肢、濡れた黒真珠の様な眼が八つ、妖艶だったその口元には牙が生え、尻には糸を出す腹を持つ。

 人として残された物は、その豊かな乳房とボディラインを残すのみであった。


「アハハハ、どうだ苦しいか? でもしばらくすると、それが快感になって来るかね~」


 マリアは腰に手を当てながら、その鋭い牙を見せ楽しそうに語った。

 彼女は、蜘蛛の変身能力を持つ『突然変異ミュータント』だ。『バンダール姉弟』は二人供その特殊能力により、ドマ枢機卿に集められたメンバーなのであった。


 ヴォルテス達は、全身を痙攣させながらも意識が飛びそうになるのを必死耐えていた。


「おやおや。なかなか頑張るじゃない。それじゃあ……これならどうだっ!」


 ババババババ―――ッ!!!


 マリアが放電量を更に上げる、辺りも明るくなる程だ。彼女の特殊能力はその通電性の高い糸と身体が持つ発電能力だ。



『GYAAAAAーーーー!!!』


「アッハハハハッ、とっとと壊れな、鉛の兵隊共がっ!!」


 その身を屈して行くヴォルテス達。その様子を見てマリアが勝利を確信した。


 ガキンッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


「!?」


 急に、低く唸る機械音が、『獣に乗る女』達から聞こえて来た。



 ズバーーーーーーン!!!


 突然、ヴォルテスの後ろで痙攣を起こし、四つん這いになっていたはずのノストゥラの左腕が、肘の少し先の部分から取れ、火を噴きながら飛び出して来た。


「な、なにっ!」


 これにはマリアも驚いた。ヴォルテスの影に隠れて動きが掴めなかったのだ。まさか、身体が外れて襲って来るとは考えもなかった。


 ノストゥラの腕は加速してマリアの方へ飛んで行く。マリアは判断が遅れ、その腕に首を掴まれ、更にその勢いのまま後ろの瓦礫に突っ込んでしまった。


「チィィィーークソがっ!」


 毒づきながらも、なんとかその腕を外そうとマリアがもがく。


 ノストゥラの腕は、鱗模様のワイヤーによって肩と繋がっている。有線のロケットパンチみたいなモノだ。


 ギュイィィィーーーン!!!


 ノストゥラは、そのワイヤーを高速で巻き取り始めた。


「クッ、離せコノヤロー!」


 金属製の強靱な腕に首を掴まれ、満足に呼吸が出来ないマリアは苦しがる。腕を掴み放電をしてみる。スパークがワイヤーを伝いノストゥラの身体まで届くがしかし、感電しながらもノストゥラは、その手を決して離さない。そしてマリアを更に強い力で、一気に引き寄せて行った。


『GUOOOOO―――』


 ノストゥラは引く力を利用し、今度はその腕をマリアごと振り回し始めた。


『……こ、今度は……こちらの番……ね……』


 そうノストゥラがつぶやいた。ヴォルテスも何とか持ち直す。


 ブンブンと、まるで風車かプロペラの様に回転させる。

 高速で振り回され、マリアの身体に凄まじいGがかかる。


 バーーンッ!!!


「ゴフッ!」


 そして垂直に上から床に叩きつけられ、吐血するマリア。容赦ない攻撃だ。

 そのショックで意識は完全に失ってしまっていた。

 更に、マリアを叩きつけようとした時――。


 ガキンッ!


 黒い影が現れ、伸びたノストゥラの腕が、引き寄せる途中で止まってしまった。


 ノストゥラの伸びた腕の先、そこには、意識の無いマリアと、さっきまでそこに居なかった、ARゴーグルを付けたジョーが立っていた。


『おまえはっ!』


 ノストゥラの腕を掴んだまま、その口元には、涼やかな笑みを浮かべていた。







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