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4.SYSTEM OVERLOAD

 ヴォルテス達が、『転送装置』のある施設に飛び込む少し前、そこはジョーとザキのゲームセンターと化していた。


「ザキ、左側の壁に行った、消火栓のすぐ横だ。もっと左っ!」

「ち、ちょっと待ってろ今やるから」


 フォークリフトを爆発炎上させ出口をふさぎ、通気口からジョーの指示を受け、ザキが、特殊能力を使い『獣に乗る女』達を順番に倒して行く、そんな作戦だったのだが、ジョー


の指示が、実に的確に相手を見つけ出して行く。


 ガッシャーーーーン!


「左のケーブルとフェンスの影に居る」


 ガッシャーーーーン!


「腕の角度をもう5°上げて」


 ガッシャーーーーン!


「次、階段横のコンテナの影に逃げ込むぞ」


 ガッシャーーーーン!


「ハズレ。更に右横1.2メートル」


 視界の悪い施設の中を苦もなく『獣に乗る女』達のいる場所を指示して行った。


「お、お前、凄いな」


 ザキも感心している。


 ジョーとザキのコンビで、反撃のチャンスも与えず、瞬く間に『獣に乗る女』達を破壊して行った。


「あんた、いったい何者なの?」


 マリアもジョーの指示の的確さに焦りの色を隠せない。


「へへへ……」


 ジョーは、ただ笑っていた。


「爺ちゃーーん、大丈夫かぁーー」


 通気口から真下にいる元蔵に声をかけた。

 研究員や作業者は、『転送装置』用加速器につなぐ動力パイプの影に身を寄せていた。


「ワシは大丈夫だーーそれより、他にケガ人が大勢おる。急いで病院に連れて行きたいんじゃ」


 実は元蔵も、右肩を痛めていたが、他の重傷の者達を優先した。


「わかったー。今、ロープを降ろすから」


 ジョーが肩掛けしていたロープをとり、先の部分に輪を作る。ちょうど『投げ輪』の要領だ。


「輪に身体を通してー、出来たら合図して。後はこっちで引き上げるからー」

「わ、わかったー」


 元蔵が元気のある作業者数人を集め、救出作業の準備を始めた。他の『獣に乗る女』達が来る前に、ここから脱出しなければならない。速やかな脱出作業が始まった。





 その頃、『SITL(犀川工科研究所)』の一階ホールでは、『獣に乗る女』達との攻防戦に変化があった。

 後から来た4体の『獣に乗る女』達の参戦により、オルグ司令達が劣勢を強いられていた。既に『S・A・D』が3機やられ、兵士達にも負傷者が出て来た。

 一旦、体勢を整える必要があるとオルグ司令が判断したその時。


「オルグ指令、『獣に乗る女』達が急に退却を始めました」


 それまで、辺り構わす兵士達に攻撃していた『獣に乗る女』ベイマスが、急に後ろに下がり出したのた。


「気に入らんな。クライン、まだ、奥の連中と連絡はつかないのか?」


 オルグ司令が、クライン隊長に声をかけた。


「ダメです。モブス達とまったく繋がりません。むしろ通信状態は悪くなっています」

「おいカナージ、『星』の予想位置は」


「ハイ、後30分で第一UAB層を通過予定です」


 ドドーーン!


 近くの『S・A・D』の残骸に『獣に乗る女』の雷球が当たる。眩い光と共に爆発をおこした、飛び散る破片に兵士達が傷つく。

 

「司令どうしますか?」


 クラインがヘルメットを押さえ前かがみの状態でたずねた。オルグ司令は、奥に去ろうとする『獣に乗る女』達を一瞬睨むと――

 

「よし、前進する。クライン、シュワンツ、全員に伝えろ」

「了解!」


 オルグ隊が『獣に乗る女』達を追う様に前進を始めた。






「おーいジョー、いいぞ上げてくれ~」


 元蔵が下から声を掛ける。


「わかった~。よし、ザキ引っ張るぞ」

「ん~」


 ケガ人から順番にロープに固定し、元蔵の掛け声でザキとジョーが引っ張り上げている。

 ザキは先ほど、『獣に乗る女』達を相手にできたので、やや機嫌が良いらしい。ザキにとっては狭い通気口内でも、ジョーの指示を愚痴をこぼさす素直に協力している。

 ザキとジョーはすっかり息が合っていた。案外馬が合う様だ。それを横でマリアは黙って見ていた。


 ジョーは、元蔵に沙織が亡くなった事を伝えていない。本当は一番に語りたかったのだが、未だ落ち着いて話せる状況ではない事もあるし、この場でその事を話すと、保たれてい


る、皆の緊張の糸が、プツリと切れてしまうと思ったからだ。

 ジョーは、沙織との約束を守る為に、今は黙って、早くここから脱出するのに専念する事にした。


 後二人で引き上げが完了すると思った、その時――



「あ、何か入って来た!」


 先に引き上げられた研究員の一人が入口にヴォルテス達が入って来るのを見つけて叫んだ。


 ジョーはARゴーグルを使い確認する。


「あ! あの時の赤い奴か。ちくしょうもう来たのか」


 飛び込んで来た、数体の『獣に乗る女』達の中に、階段で遭遇した、あの赤色タイプを見つけだした。


 慌てて下を見てみると、引き上げ作業をやっていた元蔵達が、まだ下に残されている。

 ジョーは暫く考え込んだ後、ザキに声をかけた。


「ザキ、ちょっと行ってくる。残りの人を出来るだけ早く引き上げやって、そのまま安全な場所まで逃げてくれ」

「なに~! 俺一人でかぁ? お前、どこ行くんだよぅ」

「すまない。『獣に乗る女』達の注意をそらせて来る」

「注意って、お前で大丈夫なのか? 俺がやった方が良いんじゃないのか?」

「大丈夫だ。残りの人達を引き上げるまでの時間稼ぎだから。それにザキの方が力もあるし、効率的に考えると、必然的にこうなる」

「ふぅ~ん。それが効率的で必然的なのか。わかった」


 それで理解出来たのかわからないが、ザキはあっさり受け入れた。


「後、たのむ」


 そう言ってジョーは通気口から下に飛び降りた。そのまま、積み上げたコンテナに脚をつき、後はテンポよく飛び移り走り去って行く。


「お、おいジョー、どこ行く」


 通り過ぎて行くジョーに、元蔵が声を掛けた。


「後で追いつくから、爺ちゃん先行ってて」


 そう言って、崩れた資材の影に走って消えて行った。


「身の軽い奴だなぁ」


 それを通気口から見ていたザキが、つぶやいた。


「あのまま行ったら、あの男、死ぬわね……」


 二人のやり取りから、黙って横で聞いていたマリアがぽつりとつぶやいた。

 

「え、そっかぁ……」


 すると、マリアが動き出した。


「気になる事がある。ザキ、先に行ってな」

「ち、ちょっと、姉さんどこ行くんだよぅ」



 引き上げ作業をしていたザキの横を通り抜けて、マリアも下に飛び降りた。そしてジョーの後を追う様に消えて行く。


「なんだよぅ。もう知らないからなぁーー」


 ザキは、マリアの後ろ姿を眺めながら毒づいた。

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