3.SYSTEM OVERLOAD
キースが、一通りの話をした後、皆で『転送装置』のある施設に入る場所を探していた。いたる所で崩れて通れなかったり、完全にふさがれていたりで、入口らしいところが、なかなか見つからない。
「驚いたな。まさかそんな星があるなんてよ、それも、あと数時間で地球に近づいて来るなんて、ディスカバリーチャンネルでもBBCでもやってなかったがなぁ」
ベンが、『バルチス』を腰溜めに持ち先頭を歩くモブランに、独り言の様に話し掛ける。
「予言の話では、結局『獣に乗る女』達との関係が有る様だとしか、解らないな。確かにタイミングは良いと思うが」
モブランはまだ疑心暗鬼の様子で返事をした。
「我々も、その辺りは王立図書館、バチカン図書等、その他歴史的文献を調査したのですが、『妖星ニーブル』『獣に乗る女』それぞれに関する記述は見つかりましたが、それらを具体的に紐付ける物はサンジェルマンが残した、『アシュケナジーへの伝言』の中にしかありませんでした」
「それって、単に記述ミスかなんかじゃねーの?」
「サンジェルマンに関しては、それは無いです。我々家族は、代々それを検証して来ました」
「うへ、深そう」
ベンが肩をすくめた。
ズズズズズズ――
「!?」
「隠れろっ!」
急にモブランが、手合図を送った。
ベンが壁に張り付く。
キースも瓦礫の間に伏せた。
三人が息を潜める、その先にT字路が見える。
薄明かりの通路、緊張に辺りの空気が凍り付く。
ヂヂッ
ノイズの様な音がすると、T字路の真ん中の辺りの天井が、急に円く切り取られ、まるで落とし蓋の様に、上から崩れ落ちて来た。
ガラガラガラッ、ズズーーーン!!
「「!?」」
大きな音がして、辺りに粉塵が舞い上がり、薄明かりの通路が、一層暗くなり、三人の視界が奪われて行った。
そして、その微かな視界の中、落ちて来る天井のコンクリートと鉄材と共に、二つの巨人の影と白く光る眼が見えた。
それは『獣に乗る女』達、ヴォルティスとバルベリーの姿だった。
その影は、床に脚を着けるや、残像と共に、粉塵を更に巻き上げ、T字路を高速で走り去って行った。
すかさずベンが立ち上がり、走ってT字路に近づく。
去って行った方を向き、『バルチス』を構える。
その時、キースが飛びついて、撃とうとするベンを止めた。
グシャッ!
二人がそのまま横に倒れ込んだ。
「痛ッテー。ヘイ、キース! 何するんだ!? せっかくこっちに気づいてないチャンスだったのによー」
ベンが、立ち上がろうとしていたキースの右肩を突き飛ばす。
「ベン、やめておけ」
モブランが、怒るベンを止めに入る。
「でも、コイツがよ……」
「……すいません。相手がA体だったので、とっさにやってしまいました」
キースは、腰についた汚れを叩きながら応えた。
「A体って、あの例の赤色の奴?」
ベンを抑えたままの姿勢で、モブランが振り返って聞く。
「ええ、一瞬ですが、見えた姿は確かにA体でした」
ベンも動きを止める。
「A体と言われる赤タイプは『獣に乗る女』のボスです。先日のスイスで、遭遇されていると思いますが、A体はB体よりはるかにハイポテンシャルタイプで、スピードも攻撃力も比べ物になりません。一体で『S・A・D』二機が数秒で破壊されました。ましてや二体共揃っていると、我々三人では、2秒と持ちません。確実に瞬殺されていたでしよう。危なかったです」
「……」
「……ゴクッ」
それを聞いて、モブランは黙ったまま、ベンは唾を飲み込んだ。
……ポロポロ。
どこかでコンクリートの崩れる音が聞こえて来た。三人共『獣に乗る女』が走り去った方を眺める。T字路に、しばし沈黙が訪れた……。
高速で移動しているヴォルティスとバルベリーは、実は三人には、気が付いていた。
しかし、プライオリティの問題で無視する事にしたのだ。
「運の良い者たちね」
バルベリーが、高速で走りながらつぶやく。
「運も才能。でも次は、死ぬ時」
その前を走るヴォルティスは、意識は他にあり、抑揚のないイントネーションでそう返した。
彼女達は、『転送装置』のある施設に残したグリッグ(B体)から、ヴォルティスが遭遇した、『あの男』の目撃通知が入り、急いで戻っているのあった。
「バル、中に何機グリッグ達残した?」
「5機よ」
「そう。では外で索敵しているグリッグを、全機呼び戻して」
「入口の、兵士達を相手にしているのも?」
「全機よ。もう遊びは終わり」
「残念ね。わかったわ」
バルベリーが額に手を当てると、そこだけか白く光った。
『転送装置』の有る施設の入口が見えてきた。
キースが、一通りの話をした後、皆で『転送装置』のある施設に入る場所を探していた。いたる所で崩れて通れなかったり、完全にふさがれていたりで、入口らしいところが、な
かなか見つからない。
「驚いたな。まさかそんな星があるなんてよ、それも、あと数時間で地球に近づいて来るなんて、ディスカバリーチャンネルでもBBCでもやってなかったがなぁ」
ベンが、『バルチス』を腰溜めに持ち先頭を歩くモブランに、独り言の様に話し掛ける。
「予言の話では、結局『獣に乗る女』達との関係が有る様だとしか、解らないな。確かにタイミングは良いと思うが」
モブランはまだ疑心暗鬼の様子で返事をした。
「我々も、その辺りは王立図書館、バチカン図書等、その他歴史的文献を調査したのですが、『妖星ニーブル』『獣に乗る女』それぞれに関する記述は見つかりましたが、それらを
具体的に紐付ける物はサンジェルマンが残した、『アシュケナジーへの伝言』の中にしかありませんでした」
「それって、単に記述ミスかなんかじゃねーの?」
「サンジェルマンに関しては、それは無いです。我々家族は、代々それを検証して来ました」
「うへ、深そう」
ベンが肩をすくめた。
ズズズズズズ――
「!?」
「隠れろっ!」
急にモブランが、手合図を送った。
ベンが壁に張り付く。
キースも瓦礫の間に伏せた。
三人が息を潜める、その先にT字路が見える。
薄明かりの通路、緊張に辺りの空気が凍り付く。
ヂヂッ
ノイズの様な音がすると、T字路の真ん中の辺りの天井が、急に円く切り取られ、まるで落とし蓋の様に、上から崩れ落ちて来た。
ガラガラガラッ、ズズーーーン!!
「「!?」」
大きな音がして、辺りに粉塵が舞い上がり、薄明かりの通路が、一層暗くなり、三人の視界が奪われて行った。
そして、その微かな視界の中、落ちて来る天井のコンクリートと鉄材と共に、二つの巨人の影と白く光る眼が見えた。
それは『獣に乗る女』達、ヴォルテスとノストゥラの姿だった。
その影は、床に脚を着けるや、残像と共に、粉塵を更に巻き上げ、T字路を高速で走り去って行った。
すかさずベンが立ち上がり、走ってT字路に近づく。
去って行った方を向き、『バルチス』を構える。
その時、キースが飛びついて、撃とうとするベンを止めた。
グシャッ!
二人がそのまま横に倒れ込んだ。
「痛ッテー。ヘイ、キース! 何するんだ!? せっかくこっちに気づいてないチャンスだったのによー」
ベンが、立ち上がろうとしていたキースの右肩を突き飛ばす。
「ベン、やめておけ」
モブランが、怒るベンを止めに入る。
「でも、コイツがよ……」
「……すいません。相手がレヴィアスンだったので、とっさにやってしまいました」
キースは、腰についた汚れを叩きながら応えた。
「レヴィアスンって、あの例の赤色の奴?」
ベンを抑えたままの姿勢で、モブランが振り返って聞く。
「ええ、一瞬ですが、見えた姿は確かにベイマスでした」
ベンも動きを止める。
「レヴィアスンと言われる赤タイプは『獣に乗る女』のボスです。先日のスイスで、遭遇されていると思いますが、レヴィアスンはベイマスよりはるかにハイポテンシャルタイプで
、スピードも攻撃力も比べ物になりません。一体で『S・A・D』二機が数秒で破壊されました。ましてや二体共揃っていると、我々三人では、2秒と持ちません。確実に瞬殺され
ていたでしよう。危なかったです」
「……」
「……ゴクッ」
それを聞いて、モブランは黙ったまま、ベンは唾を飲み込んだ。
……ポロポロ。
どこかでコンクリートの崩れる音が聞こえて来た。三人共『獣に乗る女』が走り去った方を眺める。T字路に、しばし沈黙が訪れた……。
高速で移動しているヴォルテスとノストゥラは、実は三人には、気が付いていた。
しかし、プライオリティの問題で無視する事にしたのだ。
「運の良い者たちね」
ノストゥラが、高速で走りながらつぶやく。
「運も才能。でも次は、死ぬ時」
その前を走るヴォルテスは、意識は他にあり、抑揚のないイントネーションでそう返した。
彼女達は、『転送装置』のある施設に残したベイマス(ベイマス)から、ヴォルテスが遭遇した、『あの男』の目撃通知が入り、急いで戻っているのあった。
「バル、中に何機ベイマス達残した?」
「5機よ」
「そう。では外で索敵しているベイマスを、全機呼び戻して」
「入口の、兵士達を相手にしているのも?」
「全機よ。もう遊びは終わり」
「残念ね。わかったわ」
ノストゥラが額に手を当てると、そこだけか白く光った。
『転送装置』の有る施設の入口が見えてきた。
「見えて来た。そのまま突入する」
「承知」
ヴォルテスが走りながら両手を振り下ろし、手元から電磁ソードを出す。遅れてノストゥラも
ソードを出した。
ヴゥーーン。
ヴゥゥーーン。
ブレイド部分から放つ輝きが、ヴォルテス達を青白く照らす。
ブン!
走りながら放った、ヴォルテスの一閃が、衝撃波と共に入口の扉が切り裂かれ、口を開けた。
その時、通路の横側から、近くにいた奴なのだろう、召集を受けたベイマス数機が、こちらに向かって走って来るのが見えた。
ベイマス達は、走る二体に、合流する様に後ろにつく。
ヴォルテス達は一塊となり、そのまま壊れた扉の中に飛び込んで行った。
「見えて来た。そのまま突入する」
「承知」
ヴォルティスが走りながら両手を振り下ろし、手元から電磁ソードを出す。遅れてバルベリーも
ソードを出した。
ヴゥーーン。
ヴゥゥーーン。
ブレイド部分から放つ輝きが、ヴォルティス達を青白く照らす。
ブン!
走りながら放った、ヴォルティスの一閃が、衝撃波と共に入口の扉が切り裂かれ、口を開けた。
その時、通路の横側から、近くにいた奴なのだろう、召集を受けたグリッグ数機が、こちらに向かって走って来るのが見えた。
グリッグ達は、走る二体に、合流する様に後ろにつく。
ヴォルティス達は一塊となり、そのまま壊れた扉の中に飛び込んで行った。