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7.VISITOR FROM PLUTO

「走れ「走れーーーっ!!!」


 モブランが、薄暗い通路で『バルチス‐MpAプラズマライフル』を撃ちながら叫ぶ。

 白人のキース・ベルメジャースと黒人のベン・ブレイザーが仲良く全力疾走していた。

 激しい爆発音と、閃光が二人を巻き込んで行く。


「ちっ外した!」


 後ろを向きモブランが走りだした。

 今度は奥から、雷球が飛んで来た。


「クソッ! モブス(モブラン)、ちゃんと狙えっ!!!」


 ベンが爆煙の中、叫びながら飛び出して来た。その後ろからキースも続く。


Sorryワリィー―――」


 モブランは必死に先を走りながらも、どこかふざけた様子だ。


 後方から『獣に乗る女』ベイマスが床を砕きながら、追いかけて来ていた。


「そこっ左! 左っ!!!」


 十字になっている通路を指差し、ベンが叫ぶ。



 先を走っているモブランが肩越しにOKサインを送り、角を曲がる。

 スライディングし、振り向き射撃の姿勢をとる。

 遅れてベン、キースが走り込んで来た。

 二人も片膝立ちで『バルチス』を構える。


「ハァハァ……」


 キースの息が少し荒い。




「!?」

「……?」

「ン?」



 ドーーーーーーーーン!!!



「「うわぁ!!!」」


 裏をかき『獣に乗る女』ベイマスが三人のすぐ横の壁を付き破って現れた。


「クソーーーッ!!!」


 ガラガラ崩れ落ちて来るコンクリートの中、ベンが叫ぶ。パワーシャベルの様な左腕が、三人に振り下ろされた。


「に、逃げっ!!!」

 

 避けるキース、転がるベン、飛び退くモブラン、各々が『獣に乗る女』ベイマスの攻撃を必死に対応する。

 鈎爪の付いた腕はフロアを破り、下の階まで届きそうな勢いだ。

 更に右腕が横からの攻撃、三人は後に転がる。

 壁に鈎爪が食い込み、隙が出来た。

 

「ウォオオオォーーー!」


 ベンが、焼けた逞しい腕で『バルチス』を至近距離から発射、プラズマ弾が、一瞬辺りを照らし、その後、『獣に乗る女』ベイマスの体に吸い込まれた。

 

「下がれっ……」


 そうモブランが言い切る前に、通路に爆発か起こり天井が崩れ出した。


「ヤバかったーー」


 瓦礫の山を前にして、モブランが床の腰を下ろし、暗視ゴーグル付きヘルメットを上げて額の汗を袖で拭いながらつぶやいた。

 辺りは埃っぽい臭いが充満していた。




「モブスッ!!!」

「ん?」


 呼ばれて横を向くと、ベンがカンカンに怒っていた。


「テメェ、あの距離外しやがって、もう少しでこっちが、おっ死ぬ所だったわっ!!!」


 ベンが、モブランの胸ぐらを掴み自分の方へ引き寄せた。

 ベンの身長は197センチメートル、モブランは172センチメートル、その差は大人と子供くらい違う。

 しかし――



「Mr.キース。ケガはありませんか?大丈夫です?」


 モブランはベンに掴まれたまま、横で息をきらせているキースに声をかけた。



「ハァハァハァ……。えぇ、大丈夫です」


「えっ? ああぁ……」

 

 この状態でキースを気遣うモブランに気を削がれたベンが、戸惑う。モブランが、ベンの手をゆっくり剥がしながら言った。


「なぁベン。お前みたいに筋肉バカは理解出来んかもしれないが、俺みたいな小男には『バルチス』は、すこぶるキツいんだよ」


 地面に降りて、右手で『バルチス』を持ち上げて続けて言う。



「だいたい元々コイツは、戦闘ヘリや装甲車、戦闘機などに取り付ける重機関銃のグループ用に開発された代物だ、それを無理やりライフルなんかにするから、発射時の反動がヒド


くて見ろ、連射したせいでまだ手が痺れてる」


 モブランが、まだ白くなっている手の平をベンに見せた。


「オルグ司令なんか、こんなの口笛吹きながらガシガシ撃つんだから、殆ど人間じゃないな」


 モブランはキースを見る。


「あなたも、たいしたものだ。どこかで訓練を経験していまたね?」

「ハァハァ……。えぇ、以前、カルナバル(訓練学校)で教育を受けました……」

「なる程、ただのハンサムなお坊ちゃんじゃないワケだ」


 モブランが、さらりと言った。


「あの、Mr.モブラン」

「モブスでいいですよ、みんなそう呼んでるし」

「じゃ、モブス。何故アナタが『バルチス』の開発事情を知っているんです?」

「あぁ、俺の従兄が『バルチス‐MpA』の開発関係者だったんですよ」

「なる程」

「1年半前に、心不全で亡くなりましたが」

「そうでしたか……」



「おいモブス、この先どうする? ここを闇雲に歩いても、『獣に乗る女』と遭遇する確率が上がるだけだぞ」


 急にベンが、話に割り込み、話はそこで途切れた。


「うーんそうだなぁ、オルグ司令からはMr.キースと共に行動しろと言われただけだからな」


「それなら問題はないです」


 キースはバックシェルを下ろし、中をごそごそ掻き回すと、そこから黒い小箱を取り出した。


「ここから先は、コイツが案内します」


 そう言って小箱を開き、水晶玉を二人に見せた。


「これは、『フェノロサムの地球儀』と言って、昔、ある男が残して行った代物です。こいつが、『冥約の王』の所まで案内してくれます」

「評定する…者?」


 モブランが身を乗り出した。


「ええ、その『冥約の王』に、会うのが我々の本当の目的です」



「やっぱり『獣に乗る女』の殲滅がミッションの全てじゃなかったのか」


 モブランが言う。

 ベンが、眼を丸くして尋ねる。


「ち、ちょっと待て、モブス、どういう事だ?」

「え? わかってなかったのかよ筋肉バカは」

「テメェ、さっきもそれ言いやがったな」


 ベンは右手で拳を作り顔の前に出した。


「いいか? 『獣に乗る女』達を殲滅させるだけなら、この『バルチス‐MpA』を従来通りに『ティーガーARH』や『S・A・D』に積み、取り囲んで施設ごと掃射してしまえ


ば、終わる事だ。しかし、今回のミッションではわざわざスケールダウンさせて兵士達に持たせ、突入させてるなんて効率考えるならそんな判断はありえない。だから『獣に乗る女


』達の殲滅ミッション以外に何かしら他の目的が有ると思っていたんだよ」


 腰を叩きモブランが立ち上がる。


「当然そんな事、上は誰も言っちゃくれないがね」

「秘密事項が絡んでいますからね」

「俺達は、金で雇われた私兵。ただ与えられたらミッションをクリアする捨て駒だからな」


 ベンが愚痴っぽく言った。


「だからこそ、些細な情報でも必要なんだよ、自分の命がかかっているからな……」


 モブランは冷めた視線で、暗い通路の奥を見つめた。



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