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2.VISITOR FROM PLUTO

 日本 SITL(犀川工科研究所)


 柴田と伊沢に無線が入ったのは、いつもの巡回パトロールに出てから15分後の事だった。

 

『ザッザザ――犀川工科研究所より、ザッ緊急通報の――ザザ、信号が入りました。ザ――場に急行し――ください』


「んもーー。無線が、なんか調子悪いな今日は」

「それ、今朝からずっとズットなんです」


 運転している柴田が答えた。


「意味わからんなぁ、叩いて治らんか?」


 伊沢が、バシバシ無線機を叩いてみる。


「無理ですって。出て来る時、車両班に言ったら、今日は朝から全部電波状態が悪いって言ってました。なんか、太陽がどうとか……」


「なんだかなぁ~」


 そう言って伊沢は、叩くのを止めて、シートにもたれて両手を頭の後ろで組んだ。


 パトカーに付いているGPSに、『SITL(犀川工科研究所)』のポイントが表示された。


「こちら201。直ちに急行します」


 サイレンと共に、ランプが点灯、Uターンをすると一気に加速する。


「伊沢サン、ここからだと消防学校の方からが速いので、そちらから向かいます」

「お。夜中だから、途中の市営団地近くを通る時は、サイレン消してな」

「ハイ」


 交差点を左に曲がり、消防学校のある方へ向かった。市営団地を通り越し、更に10分ほど走ると『SITL(犀川工科研究所)』の建物が見えてきた。

 普段、灯りの点いている筈の施設は、今日は何故か明かりが消えて、何とも無気味に、そびえ立っていた。


「こちら201、現場に到着。今から中に入ります」


 パトカーを敷地内の駐車場に止めて降りる。

 非常の駐車場の使用許可は、『SITL(犀川工科研究所)』との了承済みだ。2人は懐中電灯を持ち施設に近付いて行った。


「変だな。おい柴田、ここって、いつもこんなに暗かったっけ?」

「いや、そんなはず無いですが。いつも遅くまで研究とかしているって聞いてますケド」


「だよなぁ」


 違和感を覚えながらも、正面入口のガラスを覗き込む。中は、暗くなってよく見えない。


「裏に回ろう」


 伊沢が顔を横に振り指示する。

 


「!?」


 裏通用口に向かうと、そこはまるで戦場様に荒れていた。フェンスは飴の様に曲がり、地面は掘り起こした様に大穴がいくつも空いている。木々は焦げ、ブスブスとくすぶり、辺り一帯に焼けたニオイがする。とても普通の状態とは言わない。


「な、なんだコレは?」


 懐中電灯でへこんだ穴などを照らし、足元を注意しながら用心深く進む。


「い、伊沢サン……」

「!?」


 それを見て二人は緊張し、ホルスターのホックを外して拳銃に手をかける。

 通用口の扉が、ごっそり穴が空き、もはや原形を留めておらず、瓦礫が辺りに散らばり、まるで爆発でも起きた様に見えた。


 伊沢が無線機を取り、本署に連絡を入れようとした時――


「!?」


 ドーーーーーーン!!!


 辺りが急に白くなり、伊沢と柴田が吹き飛ばされた。


 

「「ワァァァアァァーーー!!!」」


 2人は訳も分からずになり、叫びながら転がった。


 2人の前にヘビーウェイトの『獣に乗る女』ベイマスが現れた。


「う、動くなっ止まれっ! ああぁぁぁぁっ!」


 パンッ!

 パンッ!

 


 柴田が膝立ちのまま拳銃を撃つ。


「柴田っ!?」


 伊沢が叫ぶ。



 ブンッ!



 『獣に乗る女』ベイマスが手を祓う様な動きをさせると、柴田は壁に飛ばされ、そのまま動かなくなった。


 柴田に近付いてその身体を調べ始める。



「ひっ、ひいぃぃぃーー!!!」


 奇声を発しながら逃げる伊沢。完全にパニックをおこしていた。

 転び転がりなから駐車場の方へ走っ行く。遅れてその後を柴田への調べが終わった『獣に乗る女』ベイマスがついて行く。


 ドーーン!

 

「はうがぁっ!」


 ドーーン!


「へひぃっ!」


 いたぶるかの様に、雷球を撃ち、爆発する。


「た、助けっ……」


 伊沢は泣きながらも、無我夢中で走った。


 何とか、駐車場のパトカーに乗り込みキーを回す。しかし、エンジンが掛からない。


「な、なんでっ。かかれぇよ!!!」


  ハンドルを叩く、しかしエンジンは一向に掛からない。『獣に乗る女』ベイマスは近付いてくる。

 伊沢は焦り過ぎて、ギヤがドライブに入っているせいでエンジンが掛からない事に気が付かないのだ。

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ」


 伊沢は涙目で奇声を上げている。


 バキンッ!


「!?」


 パトカーが急に揺れだした。


「おあぁああぁぁーー!!!」


 フロントが垂直に持ち上がり、伊沢は車内にある書類や荷物等と一緒にシェイク。そのままリヤウィンドに叩きつけられる。


 コンッ!


「テッ!」


 頭にヘルメットが当たった。


 下を見るとガラス越に『獣に乗る女』ベイマスが、パトカーをトランクの所を掴み、持ち上げているのが見えた。


「ひぃぃぃーーーーっ!!!」


 パトカーは、まるでモノリスの板の様に、そそり立っている。


 そして、地面に叩き付けようと、『獣に乗る女』ベイマスはモーションに入った。


「もぉダメだぁぁぁーー死ぬ死ぬ死ぬ死ぬーーーーっ!!!」


 ヘルメットをかぶり頭を抱え込みながら、伊沢はパトカーの中で絶叫していた。


 

 その時、高周波と共にに爆発音が聞こえた。

 

 『獣に乗る女』ベイマスの左足首から先が消えている。その後、更に数度、爆発がおこり、急に持ち上げていたパトカーが『獣に乗る女』ベイマスと共に傾きだした。


「なっ? おわわあぁぁぁーーーっ!!!」


 ガッシャアァァーーーーン!


 パトカーが大きい音を立てて地面に落ちた。衝撃で、バンパーははずれ、右側のタイヤは、二つ共ホイールごと無くなり、左フロントフェンダーはドア近くまで捲れあがってしまった。


 『獣に乗る女』ベイマスも、そのボディに数ヶ所大穴が空き、活動を停止している。



 そしてその前に、男が悠然と立っていた。


「クライン。この『バルチス‐MpAプラズマライフル』はなかなか良い感じだな」


 オルグ司令が、葉巻をくわえ、片手にライフルを持ち、満足そうに笑みを浮かべていた。


 クラインは、オルグ司令からライフルを受け取りながら言う。


「これなら行けそうですね」


 偽装された大型トレーラーが次々『SITL(犀川工科研究所)』の駐車場に入って来る。

 トレーラーの扉が開き中から兵士が降りてきた。


「ヨーシ、すぐにみんなに渡せ。解除コードは『CAT38892263』だ。部隊長を集めろ」

「ハイ、司令」

「それから、誰か、あの不幸なポリスマンを車から出してやれ」


 伊沢は潰れたパトカーの中で脱糞して意識を失っていた。





 数人の兵士が、『SITL(犀川工科研究所)』の敷地図を見ているオルグ司令の所に集まって来た。

 


「ジョージの隊は、この辺り1.5キロ圏内を封鎖して立ち入り禁止にしろ。シュワンツ、お前の隊は『S・A・D』を起動して裏を固めるんだ。クライン、ミラー、カナージの隊は俺と正面玄関から突入する。内部の見取り図は、後3分程で準備出来る。各自DLのチェックを忘れるな」


「「了解」」


「質問は?」


 周りを見回す。兵士達は沈黙。


 オルグ司令は、少し離れた所に立っている、黒装束の二人組みに声をかける。


「――そちらの二人は、あくまで別行動という事で良いかね?」


 『バンダール姉弟』のマリアが、妖艶な笑みをうかべお辞儀をした。


「作戦開始は今から15分後、目標は『獣に乗る女』達の殲滅だが、かなり手強い相手だ、心して懸かってくれ、以上だ」


 集まった兵士達は散開し、各々準備に取り掛かる。


「Mr.キース、ちょっと」

 オルグ司令は戻ろうとするキースを呼び止めた。


「ハイ、何でしょうか」

「中に入ったら、キミはすぐに隊から離れて、『冥約の王』を捜してくれ。ここに『獣に乗る女』達が現れたというなら、必ず居る」

「わかりました」

「クライン!」

「ハイ、司令」

「彼に誰か付けてくれ」

「わかりました。ベン、モブランちょっと来い」


 クラインが、たまたま近くで出動準備をしていた二人の兵士を呼んだ。


「ハイ、ボス」

「ハイ」


 小柄な白人と、タフそうな黒人がやって来た。


「お前達、突入後はキース氏と共に行動しろ。彼の護衛を頼む」

「了解」

「了解」


「よろしく。おや? あなたはTDエレクトロニック本社で『獣に乗る女』の逃走の報告をした方ですね」


 キースは、白人の男を見て気が付いた。


「『モブラン・オジェーリ』です。あの時は失礼しました」

「よろしくモブラン、よろしくベン」


 キースはモブランとベンに握手をした。


「ヨシ。Mr.キース、何とか『冥約の王』に接触し、予言の真実をその眼で見届けろ、それが君の使命だ」

「ハイ」


 そして突入の準備がそろった様だった。

 

「突入ーーっ!!!」


 オルグ司令の掛け声と共に兵士達は『SITL(犀川工科研究所)』の施設に突入して行った。




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