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1. Apocalypse at the Front

 スイスジュネーブ郊外、『TDエレクトロニック本社』


 普段、田園風景が眺められる静かな『TDエレクトロニック』本社敷地内も、現在は、3機の攻撃ヘリが上空を爆音を立てて旋回し、機関銃やロケットランチャーを携えた完全武装の兵士達や、機動装甲車などが本社施設を囲むように配置、すっかり様相を異していた。


 『Takeda-Data-Electronic L,T,D』――今から36年前、『武田電子株式会社』として創業、電子器械メーカーの中堅所で、主に業務用測量器具の製造販売や大手電子メーカーの下請けとして営んでいた。

 2代目武田直治社長の英断により、集積回路の開発に携わる様になる。

 今から11年前、バレン式遊離性積層型集積回路『佐助:(CordName-Sasuke-PR777225T)』や『響:(CordName-Hibiki-PR788494M)』の開発により、近年まさに飛躍的に業績を向上させた企業である。

 現在は、本社をスイスジュネーブ郊外に移し、電子機器全般を扱う世界的企業となった。


 アメリカ陸軍ですら持っていない様な最新装備で身を固めた兵士達が、本社施設内の別部隊と交信を行っていた。

 兵士達は、緊張した声で口元のマイクに喋りかける。


「――ナッシュ、IDカメラの画像が乱れている、現在の状況の説明をしろ!」

『ザ、ザザザ……こちらナッ……れ以上敵を…構内に……けません至急増援を…… ザザザザザザ――――』

「ナッシュ応答しろ!ナッシュ!」


 肩に金とオレンジの部隊長バッジを付けた男が、マイク向かって叫ぶ。


「クライン隊長! パーシーとビヤンコ、サカザキのIDも消えました。全滅です! すぐに敵本隊が出てきます」


 クラインの横でCST探知モニターを見ていた兵士が叫んだ。

 どうやら既に、本社施設内は、敵勢力に征圧されているらしい。


 クライン隊長が、カーゴヘリの方向を睨み付けて叫ぶ。


「『S・A・D』の第二陣はまだかっ、はやく前に出せ!」


 4メートル位のツノグモの様な6脚歩行のメタル機体が兵士達の間から現れる。

 『S・A・D:(StandAloan-Automatic-Dhifens)』。

 紛争地域での活動や対テロリスト等に最近用いられる小型ロボット戦車である。

 『GAU―12』20mmガトリング砲や、『スターストリーク』地対空ミサイルなど状況に応じ取付可能な、多目的型無人兵器。

 試作機がボスニア紛争末期に秘密理に投入され、その後、開発は進み現在はVer14となる。

 ソフトウェアも向上し著しく、軽度の占領ミッションであれば、『S・A・D』のみで総て賄えるようにまでなっていた。


 独特の機械音をたてながら、9機の『S・A・D』が正面入口に進んで行く、


 ギュイィィィィーーン――

 ボボボボボボボボボボッ――!


 ガトリング砲の銃身が機械音と共に回り出し、『S・A・D』達が『TDエレクトロニック』本社入口に向かい一斉攻撃しだした。

 1分間に3600発もの掃射に、本社ビル外壁の窓ガラスやブロック、コンクリートなど、あらゆる物が粉々に砕けてゆき、まるで建物の外壁がみるみる削られてゆく。

 すぐに辺りは粉塵が立ち込み始め、視界を奪っていった。


 粉塵が煙となって本社ビルの高さまで昇る頃、施設の中から何かが現れた。

視界が悪い為、その姿をよく見届けることができない


 その何かが、1機の『S・A・D』に素早く近づく。――瞬間、40ミリの特殊合金できている装甲を上下に千切り飛ばしていた。


「「!?」」


 見ていた兵士達は、何が起きたのか理解出来ず、トリガーに掛かった指が一瞬止まる。


 飛ばされた『S・A・D』の上部は、本社施設西側の駐車場に停めてたあった、1987年製『スタリオン GSR-VR』と、2011年製『フォルクスワーゲン・ゴルフTSI』に激突し爆発炎上。

 下部は、上空を旋回していた攻撃ヘリの1機、『ティーガーARH』(改良型)のコクピットを直撃、ヘリと共に本社施設すぐ横の地上に叩きつけられた。


 ――爆発。


 衝撃波と遅れて来た爆風に辺りは、パニック状態になる。

 その隙を狙って更に2機の『S・A・D』を破壊された。


「け、『獣に乗る女』が出て来た!」


 爆風に粉塵があおられ、影達が姿を現す。

 高さは約2.5メートルくらい。その姿は、重く血を思わせる朱色の金属ボディに細身シルエット。

 全身に電子記号の様なペイントを施し、人と虫、そしてロボットを掛け合わせ様な異様な姿であった。


 『獣に乗る女』と呼ばれた者達は辺りを見渡し、かるく両手を肩から下に振り下ろす。その手首の部分から片刃の長剣が飛び出してきた。

 蒼い放電現象と、こもった振動音が聞こえる。

 電磁ソードだった。


「撃て、撃てー!!」


 ガガガガガガガガ――ッ!


 銃撃をかわし、間合いをつめてくる。

 兵士達は、応戦を試みるが、『獣に乗る女』達の素速さに、銃口をついていかせる事が出来ない。

『ティーガーARH』からの攻撃も、『S・A・D』からも、闇雲に掃射するのが精一杯であった。


 跳ぶ。回る。切る。


 『獣に乗る女』達は物も人も差なく、そこに形ある物すべてを高速で切断してゆく。

 兵士達は皆、血溜まりを作りのたうち回りる。

 『S・A・D』は装甲を、まるで紙の様に切りきざまれていった……。

 数十秒で『TDエレクトロニック』本社施設の前に、死体と鉄くずの山が築かれて行った。



 ドーンと言う地響きと共に、本社ビルの中からいくつもの影が現れた。奥から更に何十体も出て来たのだ。

 『S・A・D』を千切り飛ばした先程の赤い奴とは違い、凶々しい青紫色のボディを持った重量級の別のタイプの様だ。

 これまで生き延びていた兵士達の顔に、絶望的な表情が浮かび上がっていた。

 そしてその絶望感は、兵士達の眼の前で現実の物となってしまった。


「クライン隊長! ダメです、このままでは全滅します」

 隊長と、呼ばれた男は口元のマイクをつまむと、のみ込む唾もなく、乾いた声で喋った。

「こちらクライン中隊、本部応答せよ――――」

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