表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/74

2. PROPHETIC DREAM

 ここでキースは横に置いてある水に手をつけた。


「更に『TDエレクトロニック本社』の件以降、既に5時間前から、サンジェルマンが残した、『嘆くメルデの地球儀』に3度目の座標が現れ始めています。いよいよ三度目の鐘をならす事になります」

「場所は?」

「もう少し待てば詳しい所が判りますが、現在では大平洋側としか判断出来ません。別チームを揃えて調査中です。それから『星』の動きの方ですが、予定の軌道に乗っていると、1時間前にシミュレーションの結果が出ました。チベット側とも確認が出来ています。」

「全て予言通りと言う事だな」

「ハイ、最後に。『14‐7 冥約の王評定する時、悠久なる世界は終焉するなり。残されしオブドールとアシュケナーの民、全ての信仰と秩序を失い離し行くが定め。これ『十義の幻想プラウェル・コード』の清算に他ならない』となります」


「よろしい」


「今回、『獣に乗る女』の出現ポイントですが、先程話しました、本社施設の地下4階の大型実験施設からです。ここは、何か大掛かりな実験をしていた様ですが、現在、使用していたと思われるサーバーのHDDを取り出し、復旧と解析を行っていますが、もう暫らく掛かりそうです。」

「地下4階かね」

「ハイ、かなりのエネルギーを使用していた地下施設の様で、その実験と『獣に乗る女』の出現との因果関係を調査中です」


 家長達は、ボソボソと小声で語り始めた。


「よろしい、他には?」

「『ジズー』と呼ばれる別の種類の『獣に乗る女』がいます、おそらく三度目の出現時には現れるかと思われます。十分な注意が必要です」

「わかった」


キースはそのまま元の席に着いた……。



 暫くして……


「次、オルグ指令報告を」

「ハイ」


 呼ばれて今度は、オルグ指令が大型モニターの前に立った。


「今回、ジュネーブでの『獣に乗る女』の遭遇ですが、一部キース氏からの指摘もありましたが、今回、我々の武器では殆ど相手になりませんでした。ロケットランチャーも『S・A・D』の20ミリガトリング砲も、『ティーガーARH』からの攻撃もまったく歯が立ちません」


「…………」


オルグ司令の後ろでは、爆炎が立ち昇る戦闘中の状況がモニターに映し出されている、そのまま沈黙している家長達。


「最終的に、爆撃機からのミサイル攻撃をかけましたが、結果を先に言いますと逃げられました」


「どういう事だ?」


 アレサンドロが厳しい視線で訪ねたが、オルグ指令は無表情に応待する。


「映像を用意しました。生還した兵士が、『獣に乗る女』が消えるのを目撃したと言う事だったので、映像を全て調査した所、その瞬間を捉えた部分が見つかりました。太陽風の影響を受けているのでかなり状態が悪いのですがご覧ください」


 パネルモニターに、監視カメラの映像が流れる。

 そこは、TDエレクトロニック本社の駐車場、攻撃により、既に辺りは破壊され、車は炎上し、コンクリートや鉄くずが散らばっている。監視カメラ自身も、固定するステーが曲がっているらしく、映像が斜めになっており、更に左側のカバーの一部が垂れて画面に映り込んでいた。

 時々ノイズが現れる。

 その映像の中央よりやや右端の瓦礫の向こう側に『獣に乗る女』ベイマスの姿が見え、片膝を付き前傾姿勢をとっていた。

 その首元から背中にかけて逆三日月状の透明パネルが開きだす。


「ここから、スローにして見ます、よく観ていて下さい」


 オルグ指令がパネルモニターを横に眺めながら話す。


 パネルを開いたまま『獣に乗る女』は動かない。すると画面が急に明るくなる。どうやら『ロックウェルB‐1』が爆撃した様だ。爆風が画面を横切る、監視カメラも揺れだした、画像がブレる。家長達が画面を見つめる。

その時、画面に映っていたベイマスのパネルの部分が光り出した。


「こ、これは!?」


 眼を凝らす家長達。

 背中のパネルの放つ光の色が、白から青に変わった瞬間、ベイマスの姿が黒ずみ歪んだ。まるで画面のエフェクト効果の様に見える。そしてその場から消えてしまった……


 黙っている家長達。その後、監視カメラの画像はノイズのまま止まってしまった。


「考えるとするなら、おそらく爆撃機が発射したミサイルの爆発のエネルギーをあのパネルで吸収しその力でテレポートしたのではないかと推測します」


「どこに?」

「わかりません。『C・S・T・R(分類別固有熱反応)』ごと消えてしまったので。『獣に乗る女』達の科学力が何処までなのか判断出来ない以上、地球の反対側なのか、向こうの世界に戻ったのか……」


 オルグ指令は、眉間に皺を寄せて、暫く床を眺めると


「しかし……次はどこに現れるかは地球儀が教えてくれます。私は、今回の『獣に乗る女』との遭遇により、多くの部下達を亡くしました。必ずや汚名返上してみせます」


「手立てはあるのかね?」

「ハイ、今回の戦闘により、通常武器では歯が立たない事がわかりました。次回は『プラズマライフル』の使用を予定しています。更に非常事態に備えて、『EMSミサイル』と衛星からの『レールガン』を準備しております」


「ちょっとよろしいでしようかぁ。」


 ドマ枢機卿の代行として来ていた、チヤゴフ神父が急に立ち上がり声を掛けた。


「ずっと聞いていましたがぁ、根本的な問題は『獣に乗る女』ではなく『冥約の王』の存在ではないでしょうかぁ」


 チヤゴフ神父は、辺りを見渡し


「ん…次回ぃ、『獣に乗る女』が現れた場所にはぁ、必ず『冥約の王』が居るはず……その者を始末すれば事は簡単に片付きますぅ。

 我々のぉ……同胞を準備いたしましょう」


「同胞と言いますと?」


 アレサンドロが訝しんだ。


「ん…『バンダール姉弟』です」


 13家長達は、予想通りの答えに、皆一瞬、嫌な顔をした。キースやオルグ指令も一緒だ。


 『バンダール姉弟』

 ヴァチカンが飼っている、闇の仕事を受け持つ暗殺者達。

そのやり方は残忍かつ愚劣で、『バンダール姉弟』が殺したとされる遺体は、骨も肉も全て小さく押しつぶされ、まるで人肉で出来たボーリングの玉の様になっている。それもおそらく生きたままそれを行われた形跡がある。

 FBIが国際指名手配している猟奇殺人鬼だ。

 今回、『冥約の王』を『バンダール姉弟』に殺させようと言うのだ。

 ドマ枢機卿がよこしたこの神父は、どうやらヴァチカン内の汚れ仕事専門のようだ。


 アレサンドロは、チヤコフ神父にたずねる。


「その件は、ドマ枢機卿も承知の事ですか?」

「ん…問題ごさいません、枢機卿は、『獣に乗る女』の件全てを私に託されましたぁ。つまり……私の言葉は枢機卿の御言葉で御座います。」


 権力志向の、鼻につく言い方に、近くに座ってたキースも、あからさまに馬鹿にした眼つきで立っているチヤコフ神父を見上げていた。


「わかりました、では今すぐ手配をお願いします」


 アレサンドロが、あしらう様に、話を切り上げさせた。


「ん…畏まりました。」


 チヤコフ神父は、再び鼻先から一礼すると、満足そうな顔をして部屋から退出していった。


「……キース君」


 暫く沈黙の後、それまで、静かにしていた『オールウィン家』のマーカスが急にキースにたずねた。


「『星』の影響による、想定被害の方はどれ位の予測なのかね?」



「はい、『ニーブル』による影響は、未曽有の不確定要素が多すぎる為、あくまで予言の術解と推理の領域を出ませんが、現在の情報だけでシミュレーションをかけますと、太陽風、磁場変化、大陸プレート移動による大地震、火山の噴火等により、およそ40億人、被害総額218兆6000億ドルの想定をしております」

「退避計画の進行状況は?」

「既に各国のロッジに『チベットリスト』を送り、密かに対象者の退避計画を進めております」

「一般メンバーには何時知らせる?」

「発表は最終段階まで伏せておく予定です。メンバーとて漏れた者には耐えられぬ悲劇ですから」

「金だけ出させて選ばれぬではたまらぬわな」

「なに、今まで我々の名を語り散々甘い汁を飲んで来たのだしかたあるまい」


「アレサンドロ、どうやら『真のAS計画』の宣言の時が来た様だな」


 マーカスはアレサンドロの方を向く。

 他の13家長達も向く。


「『真のAS計画』とは、残されし魂の救済だ。我々は、最後の扉を閉める者であり、旅立つ朝の残り火だ。これが13家長の使命であり存在の全てである」


 アレサンドロはメンバー達の顔を見渡し

 

「我々は小さな祈りであり、光である。闇に立つ灯台となり、海原に漂う小船を導く者だ。世間で話題になっている5億人への人口削減や、ウィルスなどによる第三次世界大戦勃発など戯言ではない。

 しかし、それを理解出来ぬ他のメンバーや、愚かな羊達が、無智ゆえの判断に、正義と悪の二元しか持たない。正義の反対は悪ではなく、もう一つの正義なのだ」


 13家長達は、全員立ち上がった


「ここより宣言する。『獣に乗る女』の第三の出現を持って『真のAS計画』の発動する」


 パチパチパチパチパチパチ――


 『歓喜の間』は13家長達の拍手に包み込まれていった。


 そこに、電話のベルが鳴る。扉に立っていた、お付きが受話器を取り、2,3言話すと、受話器をキースに渡す。

 そのまま、キースは黙って聞き、受話器を下ろすと、13家長に伝えた。


「『獣に乗る女』の出現地点が解りました。調査チームの話しによりますと『嘆くメルデの地球儀』は『ジャパン(日本)』の座標を示しているそうです」


「本当か!?」


 アレサンドロが、驚いている。


「ハイ、間違い無いそうですが……?」


 何故か13家長達が、皆、首を横に振たっり、自虐的に笑みをこぼす。

 そして、アレサンドロが話し出す。


「諸君、『冥約の王』は『ステファラディーユダヤ』の末裔らしい、どうやら我々は、復讐を受ける時が来たのだ、ワハハハ――」


 13家長達、皆が笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ