Sweet sixteen girl
湿り気のある土を、疎らに割れた瓦が夥しく覆っている。しかし、宵からの雪により、今はその多くが隠れてしまっていて見えない。その中で、一筋の堀建て柱だけが、その土地のかつての姿を踏襲するように、白く立ち尽くしている。
ここはどうも家屋であったらしいが、小綺麗に整ったこの一角が、さながら夢の島のようなその体たらくを許すとは思えない。通りすがるだけの僕には真相を知る由もないが、とにかく奇妙な光景に間違いなかった。
立ち止まる僕を、期せず見慣れない制服が追い越した。
女だった。白い蒸気を上げながら、何やら携帯電話で話し込んでいる。カーディガンを着ているため、どの学校の生徒かは分からなかったが、背丈や骨の秀でた顔立ちからして、おそらく高校生だろう。
融雪された路肩のみぞれを、鈍く光るローファーで踏みしめながら歩いている。
もちろん、それを疑う余地はなかった。
夕暮れ時に、駅前のこの道を通る女子高生など、あの瓦礫の山とは違い当たり前の光景であり、いわば注目に値しないものに他ならないはずだ。
誰も気にとめるものはいない。気にしていないふりをしていなければならないのだ。




