第38話:父との再会
前書き 男子嫌いで鈍感な女子高生、蓮花はいつも遠くからさり気なく助けてくれる中学の同級生田中とは安心して会話ができるようになった。高校に進学し、田中とは真逆のタイプの瀬野と出会い・・・続きは本編でどうぞ・・・。
父(徹):・・・あ・・久しぶり・・・。
蓮花:瀬野、今日ありがと。
4人がぎこちない様子でいると、家の中から祖父(健三)と祖母(咲)が出てきた。
祖母(咲):まぁ、瀬野くん送ってくれたの?
瀬野:・・あ、はい・・。
祖母(咲):わざわざありがとね。上がって行ってって言いたいんだけど・・・・。
瀬野:いえ、大丈夫ですよ!・・・・あの、俺今、蓮花さんとお付き合いさせてもらってる瀬野といいます。
瀬野は蓮花の父と後妻の涼子に挨拶をした。
蓮花:・・・・。
父(徹):そうか・・あの・・・・・ありがとう。
瀬野:?
涼子:・・・。
蓮花:瀬野、また連絡する。今日は本当にありがとう。
瀬野:・・あぁ・・またな。
瀬野は、蓮花の気持ちと状況を察したように蓮花の背中にそっと手を置いた。
瀬野:じゃ、また来ます!
祖父(健三):気をつけて帰れな。
瀬野:はい!
瀬野は蓮花を心配そうに見た後、家に帰って行った。
祖母(咲):あの、ここに居てもなんだから、も一度家入りなさい。徹。
父(徹):あぁ。
蓮花:・・・・。
家に入ると、祖母(咲)はお茶を入れた。リビングに全員座っているが、会話は無いままとても静かだった・・・。
蓮花:今更どうしたのよ・・・。
目を合わす事なく蓮花が問いかけた。
父(徹):お前には・・・合わす顔が無くて・・・なんて言っていいか検討もつかなくて・・・。
涼子が徹の背中に手を置きながら、じっと徹を見つめていた。
父(徹):あれから大分月日も経って・・・本当に今更なんだが、やっと・・・普通に生活できる様になって・・・お母さんを失ってから、喪失感でいっぱいで、何をやっても埋まらなくて・・・。
父(徹)は、涙を流しながら話していた。
蓮花:・・・・。
父(徹):子育てまで・・・放棄する事になってしまった私を・・・この弱い私を、許してくれとは言わないが、どうしてもお前にだけは謝りたくて・・・・・やっとここに来れて・・・。
蓮花は泣きながら話す父とそれを黙って見つめている涼子を見て、胸が苦しかった。よく一緒に公園で遊んだ父とは違って、とても弱々しく見えた。
涼子:・・・・蓮花ちゃん・・徹さんね、いつも蓮花ちゃんの事は思ってたのよ・・ただね・・・。
蓮花:・・・解ってる・・・。
涼子の話を遮る様に蓮花が話した。祖父(健三)も祖母(咲)もただ黙ってそこに居た。
蓮花:・・・解ってる・・・・・解ってる・・・・・・あたしは大丈夫だよ。
蓮花は父に何を伝えるべきか一生懸命考えた。
父(徹):・・・。
蓮花が父の目を真っ直ぐ見ると、父(徹)も蓮花を真っ直ぐ見た。
蓮花:・・あたし・・・じぃちゃんとばぁちゃんに大切に育てて貰ったよ・・・あたしは幸せだよ。だから大丈夫だよ。
蓮花は父を責める事はしなかった。
父(徹):・・・・ありがとう・・・。
涼子:蓮花ちゃん・・・。
蓮花:・・・・気が向いたら、また家来てよ・・・・涼子さんも。
すると、父(徹)と涼子は2人で泣き始めた。祖父(健三)と祖母(咲)も目に涙が溜まっていた。
祖母(咲):そんなに泣かないで・・・徹!ほらっ涼子さんも!
祖父(健三):徹・・・さっき会った瀬野くん、なかなか良い青年だぞっ。
父(徹):・・・・蓮花の彼氏だったよな・・・。
蓮花:・・・うん・・・今度ちゃんと会ってくれる?
父(徹):・・あぁ、勿論。
涼子:・・・夕ご飯時にすみません、今日はひとまず帰ります・・・。
祖父(健三):・・・そうじゃな・・・また改めて来る時は、一緒に飯食おうな!
父(徹):・・・。
蓮花:嫌なの?
蓮花は冗談まじりに、少し怒った様な風に言った。
父(徹):まさか・・・いいのか・・・?
蓮花:いいよっ・・・・。
父(徹):アハハ・・・ありがとう・・・。
父(徹)はまた目に涙を浮かべながら笑顔で言った。
蓮花:涼子さんも一緒に来てね・・・。
涼子:・・・ありがとう!
祖母(咲):今日は寒いから、風邪引かないように帰りなさいね。
父(徹):あぁ、ありがとう。
父(徹)と涼子が玄関へ向かうと・・・
蓮花:涼子さんっ。
涼子:?
蓮花:・・・・今まで父を支えてくれてありがとう・・・・これからも宜しくお願いしますっ。あたしは、十分幸せだからっ、今度は涼子さんが父と幸せになってっ。
蓮花は頭を下げながら言うと、涼子はまた泣きながら・・・
涼子:蓮花ちゃん・・・頭を上げて・・・ありがとう・・・。
父(徹):・・・父さん・・・母さん・・・ありがとう。
祖父(健三):何の何のっ、体に気をつけろよっ。
祖母(咲):また今度ね!!(^^)!
そう言うと、2人は帰って行った。玄関のドアが閉まった後・・・
蓮花:・・・わぁぁぁっっ!!!。
その場に座り込み、泣き崩れる蓮花の背中を祖父(健三)は何も言わず擦っていた。
祖母(咲):蓮花・・・ありがとね・・・あなたは自慢の孫よ。