第33話:縮まる距離
男子嫌いで鈍感な女子高生、蓮花はいつも遠くからさり気なく助けてくれる中学の同級生田中とは安心して会話ができるようになった。高校に進学し、田中とは真逆のタイプの瀬野と出会い・・・続きは本編でどうぞ・・・。
金曜日―
高橋:瀬野、お前木内と何かあったのかぁ?
瀬野:いやぁ・・何もねぇよ・・・。
高橋:・・・そか、最近あんま話してる所みねぇっつぅか・・・避けてるっつぅ感じでもねぇし、距離置いてる感じだよな・・・いよいよフラれたのか?
瀬野:・・・いや・・・だけど結構ショックだなぁ・・・。
高橋:・・・逆じゃねぇの?
瀬野:逆?
高橋:・・・自分で考えれっ。
瀬野が廊下を見ると、田中と蓮花が話をしていた。
瀬野:(・・・・そろそろ限界かなぁ・・けど俺あいつ以外考えらんねぇんだよなぁ・・・)
田中:じゃ、明日な。
蓮花:うん。
美里:明日って・・田中と映画行くの?
蓮花:うん・・・最初で最後のお願いらしい・・・。
美里:・・・返事したんだ。
蓮花:うん・・・。
美里:そっか。楽しんどいで。
美里はニッコリ笑いながら言った。
下校時間―
瀬野は靴箱にいると、部活へ行く途中の田中に遭遇した。
田中:よー瀬野!
瀬野:おー今から部活か。
田中:まぁな、部活あって助かってるよ・・・そうそう、俺明日木内と映画行ってくんな!!
瀬野:は!?
瀬野は眉間にシワを寄せながら言った。
瀬野:お前が誘ったの?
田中:そだよ。
瀬野:・・・・・あっそ・・・。
田中:じゃぁな!
田中は素知らぬ顔でその場を去り、部活へ向かった。
田中:(これくらいいいだろ・・・黙って行くのも木内も嫌だろうしな・・・)
瀬野:(まじでイライラしてきた・・・・)!!あ゛ーもう!!
靴箱にいた周りの人が触れてはいけない人を見るような眼差しで瀬野を見ていた。
そして土曜日、田中と蓮花は約束通り映画を観に行き、蓮花の家まで歩いて帰っていた。
田中:映画良かったなぁ~。
蓮花:うん、途中泣きそうだった・・・頑張ってこらえたけどっ。田中くんも泣きそうだったでしょ?鼻すする音聞こえてきたよ(笑)。
田中:俺もこらえたよ!!でもまじでやばかった・・・。
蓮花:あはは!
田中:・・・・良かった。
蓮花:?
田中:いつもの木内!
蓮花:・・・。
田中:今日は付き合ってくれてありがとな。
蓮花:ハハ・・付き合ってないよ。あたしも来たかったから来てるし、楽しかったよ。ありがとね。
田中:じゃ、また学校でな!
蓮花:うん!
田中は蓮花を家まで送ると、笑顔で手を振りながら帰って行った。
蓮花宅―
蓮花:ただいまぁ!
祖母(咲):おかえりぃ、楽しかった?
蓮花:うん!今日の晩御飯は~・・・おでんだ!
祖父(健三):当たり~!
蓮花:ラッキィ!あたしお風呂入ってくるねぇ!
PM19:30-
祖母(咲):ねぇ蓮花、今日夕刊取ってないわ、取ってきてくんない?
蓮花:はぁい!
蓮花は玄関を開けてポストを見ようとすると、戸口に誰かいる様な気がした。
蓮花:(・・・・誰・・・・!?・・・あれ?)瀬野?
瀬野:あ・・・。
蓮花:どうしたの?
瀬野:あー・・・ごめん帰る。
そういうと瀬野はUターンして帰ろうとした。
蓮花:ちょっと!待って!
蓮花は瀬野の様子が少し普通と違うのを察して慌てて腕を掴んだ。
蓮花:何でもなくてここまで来ないでしょ。何かあったんでしょ?
瀬野:いや・・・・親父がさ・・・再婚するかもっつって・・・別にいんだけどさ、色々考えてたら俺っているのかな・・・とか思ってきて・・・気が付いたらここまで歩いてた・・・。
蓮花:・・・・・・。
いつもとは少し違い、どこか寂しげな瀬野を蓮花はしばらく見つめた後、そっと瀬野を抱きしめた。
瀬野:・・・・!
蓮花:ばぁちゃんがさ、昔よくこうやってくれたんだ・・・お父さん居なくなった時・・・・。
しばらく蓮花は瀬野を抱きしめていた・・・瀬野は何が起きているのか状況を把握しようとしたが、そのままボーっとしていた。
蓮花:瀬野がいないと・・・あたしが困るよ・・・。
瀬野:・・・え?。
そう言うと、蓮花はそっと離れ、瀬野の両手を握った・・・。
蓮花:・・・どんだけ歩いたの・・・冷たい手・・・家入ろ!
瀬野は我に返り・・・
瀬野:・・・えっ!!
蓮花:家ね、今日おでん!
蓮花は瀬野の手を引いて家の中に入っていった。
蓮花:ばぁちゃぁん!お客さぁん!