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夢乃本  作者: マーたん


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13/15

十三

よう来てくれた

この章から『夢乃本』はさらに深い所へ潜っていく

読んだ人間の“内側”を覗き込むような話になる

物語と現実の境目を置き忘れてしもた人は、そのまま吸われんように気ぃつけてな

暗闇の中

壁に映ったはずの画面はいつの間にか消え、代わりに細い裂け目が開いとった

黒い紙を破いたような、不自然な光の線

そこから冷たい風が吹いてきて、肌を撫でるたび心臓が一拍遅れる気がした


誰かおるんか?


声を出してみたが、返って来たのは自分の息の音だけ

それでも裂け目は、まるで呼吸する生き物みたいにゆっくり脈打っていた


やあ

囁き声が中から響いた

さっきよりも近い

耳元で話しかけられたような、生温い吐息まで感じる


もう逃げられへんよ

君は見てしまったからね


裂け目の奥に“何か”が動いた

形はぼやけてる

目だけが光り、こちらを覗き込んでいる


おまえ……誰や?


君の後ろに立ってるよ


反射的に振り返った

そこには何もいない

ただ、首筋に残る妙な温度だけが嘘をついていない


再び目を裂け目に戻すと

奥から白い腕が伸びてきた

五本の指はありえん方向に曲がり、ゆっくりこちらへ触れようとしていた


いやや…触るな…


けど腕は止まらん

その瞬間、電車の走行音みたいな轟音が闇を裂いた

視界が揺れ、裂け目も腕もかき消えるように消滅した


次の瞬間

目の前には白い本が一冊浮かんでいた


夢乃本

タイトルだけが赤く光っていた


君はようやく“入口”に立ったところや

声が、耳の奥で笑った


気づけば俺は見知らぬ家の前に立っていた

古い日本家屋

柱は歪み、窓は割れ、表札だけがやけに新しい

墨で書かれた名前は読めるようで読めへん

文字がぐにゃぐにゃと動いて見えた


夢乃本の力や

勝手に場所を移動させられたんや

理解が追いつかんのに、足だけが前へ進む


玄関の扉を触ると、ドアノブが脈打った

まるで心臓みたいに

握った手に鼓動が移ってくる


嫌や…開けたくない…

そう思っても手が勝手に回す

ギィィと耳障りな音が響く


中は真っ暗

その真ん中に、ぽつんと椅子が一つ置かれていた

誰かが座っている


黒い髪

こちらに背を向けてじっと動かない

いや、微かに揺れている

呼吸している?


あの…すんません


声をかけた瞬間

椅子の人物がゆっくり振り返った

顔は笑っていた


だが、

眼球がなかった

くぼみの奥から黒い煙がゆらゆらと漏れ出していた


ずっと待ってたよ

よう来たな

君は“読まれる側”になったんや


その言葉とともに

家中に無数の扉が現れた

天井にも、床にも、壁にも

まるで家全体が生き物みたいに開いたり閉じたりしている


どれか一つ

選んでみ

間違えたら…帰れんけどな


黒い笑顔が、裂けた口の端からずるりと伸びていく


鼓動が跳ねる

逃げ場所はどこにもない

夢乃本が勝手にページをめくり始めるように、扉が一斉に俺を見た


ここが“試練の家”や

君の恐怖そのものが形になった場所やで

ここまで読んでくれてありがとう

『夢乃本』はまだ“本編”に触れてへん

この家の中にある扉は、全部あんた自身の記憶と恐怖でできてる

どの扉を開けるかで運命が変わる

次から、もっとディープで逃げ場のない章に入る

覚悟してついてきてな

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