十二
今回からホラーの度合いをさらに強めています。
“夢乃本の正体が少しだけ覗く回”。
読んだあと、静かな部屋が怖くなる感じを意識しています。
苦手なら夜中には読まんといてな。
白い
真っ白い
何もない部屋に立っていた
いつの間にこんな場所にいるのか、思い出せへん
扉も窓もない
ただ、白い
足音を立てたつもりなのに
音が出ない
まるで自分が空っぽになったみたいで
嫌な汗が背中をつたう
その時
スピーカーの壊れたみたいなノイズが壁の奥でパチパチと鳴った
ザ…ザザ……ザ……
「やあ」
出た
もう聞き慣れたはずやのに
この声だけは慣れたくなかった
白い壁の一部が“崩れた映像みたいに”歪み
そこに黒い影が滲み出てきた
男か女かわからん
人の形はしてるけど、輪郭が波みたいに震えてた
「ようここまで来たね」
電車の中で聞いた声
画面の向こうから聞いた声
さっきまで確かにスマホにおった声
全部、同じや
「なぁ、君さ」
影が一歩近づく
そのたびにノイズが耳を刺す
心臓がバクバクして呼吸が追いつかへん
「ほんとは、とっくに気づいてるやろ?」
何を、や
聞こうとした瞬間、影の顔がぐしゃっと崩れ
別の顔が浮かんだ
さらに別の顔
次の顔
またその次
まるで“誰かの記憶”を高速再生しているみたいに
知らん人らの顔ばかり続くのに
一瞬だけ
自分の顔も混ざった
やめろ
やめろ
やめろ
動けへん
息が止まりそうや
影が囁く
「夢乃本は“読むもの”やなくて――“視られるもの”なんよ」
白い壁一面に
無数の“眼”がパッと開いた
全部、こっちを見てた
耳元でノイズが爆ぜる
「さぁ、次は君の番や」
白い部屋が一斉に黒く沈んだ
世界がひっくり返るみたいに落ちていった
“視線のホラー”をテーマにしました。
夢乃本の呪いが主人公に直接触れ始め、逃げ場が消えていく流れです。




