一
この物語は都市伝説として語られてきた夢乃本
触れた者は本の中に取り込まれ 自分の人生の続きを書かされると言われている
今回あなたが開くのはその新たな新刊であり 主人公は日常から一歩外れた不条理な世界に巻き込まれていく
句点なしで言葉が途切れず流れ込むような文章表現で 不気味さと夢の中のような境界の曖昧さを描いていく
どうかページをめくる覚悟をしてほしい
夢乃本は読むたびに姿を変え 読者さえも試すから…
昔昔の事、何も無いこの世界に住んでいる
触れてはいけないその本
夢乃本
噂話と言わせており
誰もが口にしていた
そんな都市伝説があったとさ
くだらい
なんだ
この本は…
電車に揺られながらスマホを見ていた
そんな…
やあ
誰だ?
微かに聞こえた
やあ 僕だよ
だから誰だ?
スマホの画面が消えて、真っ暗な壁が見えた
ここはどこだ?
やあ 僕だよ 僕…
だから誰なんだ???
アー アー
叫んでしまった
そんな中
真っ暗な壁にテレビみたいなのが現れた
やあ
画面に現れた
誰だ??
やあ、僕だよ
やあ 僕だよ
黒い画面に浮かぶ白い目がゆっくりと瞬きをする
その度に周囲の闇が脈打つように揺れ 僕の鼓動が巻き込まれていくような錯覚に陥る
ここはどこなんだと問いかけても返事は遅れて返ってくる
それは空気を這うような声で 男にも女にも聞こえず 子供のようでも老人のようでもある不気味な声だった
夢乃本がようやく開いたね と画面の奥でページがぱらりとめくれた
影のような輪郭に乱れた髪 紙よりも白い目がこちらを見つめている
僕はページの管理人
そして君の人生の続きの執筆者
その言葉に背中を冷たいものが走る
なぜ俺のスマホなんだと叫ぶように聞くと 声はくすくすと笑った気配を漂わせる
スマホという窓はもう必要ないよ
ここに来た瞬間 君はページの中に入り込んだ
夢乃本は読む本ではなく 読んだ人間が物語を書かされる本なんだ
ページがパラパラと音を立てて笑うように震える
帰せと言っても声は静かに告げた
結末が書かれなければページは閉じない
だから書いて 君の一行目を
書かないのなら 君自身が書かれる側へ落ちていくだけ
闇の奥で何かが這うような足音が近づいてくる
嫌な気配が肌にまとわりつき 息が浅くなる
逃げ場なんてどこにもない
管理人の白い目がじわりと画面いっぱいに広がり
僕の顔を覗き込むように歪む
では始めようか
ここからが本当の新刊だよ
夢乃本の ね
ここまで読んでくれてありがとう
夢乃本はただの怪談でもファンタジーでもなく 読んだ人自身が物語と向き合う鏡のような存在として描いている
主人公が聞いた僕だよの声は一体誰なのか
管理人とは何者なのか
そしてなぜ人生の続きを書かせようとするのか
これからさらに深い闇と謎へと潜っていく
次の章でも句点なしで夢の中を漂うような独特の空気を続けて描くつもりだ
またページの向こう側で会おう




