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「他に質問はないかな?」


 なるべくリスナーを飽きさせないために、早めに話題の流れを変えていく。


:ミヨリちゃんが使ってた触手みたいなアレなに?

:ムラメサちゃんを拘束して、魔剣を折ったやつな!

:あの影のなかから伸びる触手みたいなのはスキルなの?


 ミヨリが使用していた影の触手について、多数の質問が寄せられる。みんなあの力が気になっているらしい。


「アレは探索者になりたての頃に覚えたスキルだよ。他に使っている人を見たことがないから、たぶんわたしのユニークスキルなんじゃないかな。あの影の力はいろんなことができるから便利なんだよね。ちょっとだけ力を込めたら、魔剣だって壊せるし」


「ちょっとだけ……!」


 ミヨリの説明を聞くと、綾乃がギョッとしていた。


:やっぱりユニークスキルだったか!

:ちょっとだけで魔剣破壊とか、攻撃力すさまじいな!

:ムラサメちゃん青ざめてて草

:触手にからまれてたムラサメちゃん、下手したら肉体を破壊されてた説!

:身体は無事だったけど、心は破壊されたね!


 ミヨリの発言にまたコメントが盛りあがる。


 微笑を浮かべながら流れていくコメントを見ていたら、いつの間にか同接が三万という数字になっていた。


「っ……三万!」


:どうしたやべぇ子ちゃん?

:またビクってなってるwww

:同接が三万いってる!

:ホントだ!

:すげええええええ!

:先日のバズに加えてシルバーダスクの事務所から配信してるからな!


 たくさんの人が見てくれるかもと期待していたが、まさかここまでの数字を叩き出すなんて……。心臓の鼓動がはね上がって、ちょっと息苦しくなってきた。


 精神が限界に達する前に、本題に入ったほうがよさそうだ。

 

「質問はここまでにしようかな。えっと、それじゃあ先日の件でムラサメちゃんはわたしにお礼をしてくれるそうだけど」


 話を振ると、綾乃は表情を硬くしながら応えてくる。


「あ、あぁ。助けてもらったことには感謝している。クランマスターからも協力するようにと言いつけられているからな。わたしにできることなら、なんでもやろう」


:なんでも…………ごくり!

:ん? 今なんでもって言ったよな?

:やめろwww


 綾乃が胸に拳を当てて頷いた。


 それを見て、ミヨリはクスリと薄い笑みを浮かべる。


「わたし普段はソロでダンジョンにもぐっているんだけど、たまにはパーティを組むのも悪くないなって思ったんだ。それを配信できたらいいなって」


「……そ、それは、どういう意味だ……」


「わたしのお願いはね、ムラサメちゃんとパーティを組んで、一緒にダンジョン配信をしてもらうことだよ」


「なっ……!」


「さっきなんでもするって、言ってくれたよね?」


「うぅ……」


 ニッコリと笑いかけると、綾乃は目を泳がせてパクパクと口を開けたり閉じたりする。


:ムラサメちゃんwwww

:金魚みたいになってるムラサメちゃんかわwwww

:ムラサメちゃん「わたしにできることなら、なんでもやろう」

:自爆発言wwww

:ミヨリちゃんとパーティを組めるなんて光栄なことだよ!(大親友)

:さっきからちょいちょい出てくるこの大親友なんだよwww


 返事ができずに言葉を詰まらせている綾乃だったが、ギュッと目を閉じて息を飲むと、ミヨリを見つめ返してくる。


「い、い、いいいいい、いいだろう! パ、パーティを組もうじゃないか!」


:言い方がぜんぜんよくねぇwwwww

:ムラサメちゃん涙目になってない?

:うおおおおおマジか!

:助けた子と助けられた子がパーティ組むとか漫画みたいな展開だな!

:怖がってるのに了承して偉いwwwww

:トラウマがよみがえってるwwwww


 断られたらどうしようと思っていたが、言質を取ることができた。ミヨリは安心する。


 そろそろ疲れてきたので、ミヨリは浮いているドローンカメラに目線を向けてお別れを告げることにした。


「ちょっと早いかもだけど、今日の配信はここまでにするね。次回はムラサメちゃんとパーティを組んで、ダンジョン配信を行いたいと思います。それとよかったらチャンネル登録をお願いします。ご視聴ありがとうございました」


:お疲れ~

:乙~

:パーティでのダンジョン配信楽しみにしてるぞ!

:ミヨリちゃんがんばったね! 偉い!(大親友)

:次の配信でついにミヨリちゃんの伝説が幕を開けるね!(大親友)

:ついにミヨリちゃんの真のすごさを全世界に知らしめるときがきたんだよ!(大親友) 


 配信を終えると、室内に浮かべていたドローンカメラを回収する。


 一気に疲れが押し寄せてきて、ミヨリはソファーに深く腰を落とした。


 フゥと一息つくと、対面にいる綾乃に微笑みかける。


「頼み事を聞いてくれてありがとう。次のダンジョン配信よろしくね、ムラサメちゃん」


「……なんだか取り返しのつかない選択をしてしまった気がする」


 綾乃はがっくりと肩を落とすと、これから起きる未来に不安しかないようで眉尻を下げていた。




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