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底辺配信者だけどダンジョンで人気探索者を助けたら、なぜかやべぇ女として大バズりしてみんなから怖がられている  作者: 北町しずめ


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「まだ遭遇していないモンスターがいるかもしれない。帰りも警戒をおこたらないようにしないとな」


「デーモンナイトと天使がいたボス部屋にも、気をつけないとね。ほとんど足場が崩れていたから、今度は落ちないようにしないと。元通りに修復されるまでには、時間が掛かるだろうし」


 復路での注意点を綾乃と話すと、ミヨリはボス部屋の出入り口を見やる。


 ここから徒歩で地上まで帰らないといけない。そのことに懸念があった。


 配信としては、一番のハイライトである魔王っぽいのは倒してしまった。そのあとに帰り道を歩く映像を流しても盛りあがらない。というか、尻すぼみになって盛り下がってしまう。


 しかもこのダンジョンはやたらと階層が多くて、地上までの道のりが長い。ちんらた歩いていたら、冗長に感じられてリスナーを退屈させてしまう。


 いっそここで配信を切って、終わりにしようか……。


「そうだ。これならいけるね」


 ミヨリの頭のなかに、とある閃きが浮かびあがった。


 帰り道の映像を飽きさせることなく、視聴者たちに楽しんでもらえる方法を思いつく。


 そうと決まれば、早速ミヨリは足元の影から触手を生やす。玲奈と小春の身体に伸ばした触手を巻きつける。もちろん、三台のドローンカメラにも忘れずに触手をからみつかせる。


「うおわっ! ミ、ミヨリくん……!」


「ぎゃあああ! な、なななに? なにミヨリちゃん!」


:って、いきなりなにしてんのミヨリちゃん!

:なんで代表と小春ちゃんを触手で捕獲してんの!

:ミヨリ様が真のラスボス化しちゃうのか!


 急いで帰りたいから二人を触手でつかまえると、コメ欄に動揺が走った。


 唯一無事である綾乃は呆然としつつも、ミヨリに尋ねる。


「……えっと、わたしは?」


「あっ、もしかしてムラサメちゃんも触手でからめてほしかったのかな?」


「い、いや、いい! 遠慮する!」


 首をブンブンと全力で振って、お断りしてくる。


:ムラサメちゃん触手キャンセルwww

:まぁイヤだよねwwww

:選択肢があるなら誰でも拒否するwwww


「よかった。配信としては、みんな同じだと絵的にどうかと思うからね」


 綾乃が触手を断ってくれたことにホッとすると、ミヨリは足のつま先でタンタンッと軽く地面を踏み鳴らす。グニャリと影が歪んでいき、ズズズズズズッと隆起すると、巨大な犬が飛び出してきた。


 ワン太は四本足で地面に立つと、ブルブルッと首を振ってから、八つの赤い瞳でミヨリたちのことを見てくる。


 ミヨリはピョンと跳んで、ワン太の大きな背中に飛び乗る。玲奈と小春、それに三台のドローンカメラも、触手に引っぱられていき宙づりにされた。


 空中でブラブラと揺れている玲奈と小春は、戸惑った表情になる。


:とつぜんデカイ犬が出てきてビビった!

:現場にいるムラサメちゃんたちはもっとビビってるよwwww

:代表と小春ちゃんがロープで宙づりにされた罪人みたいになってるぞwwww

:というかなぜワン太を?

:なんで呼び出したんだ?


「な、なぁミヨリ……どうしてその犬を呼び出したんだ?」


 とてもイヤな予感に駆られながら、綾乃は恐る恐る聞いてみる。


 ミヨリはその問いかけに薄笑いを浮かべて答えると、乗っかっているワン太に声をかけた。


「それじゃあワン太。ムラサメちゃんをおねがい」


 主人からの命令に「ワフゥ!」と吠えると、ワン太は首をひねって綾乃に顔をググッと近づけてくる。


 牙の並んだ大きな口が開くと、綾乃は「うひっ……」と声をもらして凍りついた。


 直立不動になった綾乃の腰のあたりを、ワン太は上下のアゴで挟んでくる。 


 ぶっとい刃物をお腹と背中の突き立てられているような感覚に、綾乃は肝が冷えた。口のなかに飲み込まれたときの恐怖心が、よみがえってくる。


 そのままワン太に持ちあげられていき、綾乃は大きな口に横向きにくわえられる。


:ムラサメちゃんがデッカイ犬にくわえられたwwww

:一瞬食べられるかと思って焦ったわ!

:やめてあげろwwww

:怖すぎだろwwwww

:オイイイイイイ! なにやってんだミヨリイイイイイイ! ムラサメちゃんがワンちゃん用のホネのオモチャみたいになってんじゃねぇえかあああああああ!!!(父より)

:ホントだwwww ムラサメちゃん犬にくわえられたホネみたいになってるwwww

:ムラサメちゃんがホネになったwwww

:というかこれ大丈夫なのか? 鎧を着てるとはいえ、うっかり噛み殺されたりしないよな?


「大丈夫だよ。甘噛みだからね」


:なるほどそうか!(納得した)

:あぁ~、そうかそうか! 甘噛みか!(安心した)

:甘噛みならなんの問題もないね!(うんうんうなづく)

:納得すんなwwww

:大丈夫なわけあるかいwwww

:ムラサメちゃん見てみろwwww 怖すぎてカチンコチンになってんだろwwww

:マジで犬にくわえられたホネみたいになってるwwww


「あ、あわわわわ、わわわわわ!」


 怖すぎてまともに身体が動かせない綾乃は、自分でもよくわからない不安定な声を出すことしかできなかった。


「それじゃあワン太、入り口まで戻ろうか」


 ミヨリが意気込んで呼びかけると、ワン太は綾乃をくわえたままフンと鼻を鳴らす。前傾姿勢になると、四本の足で思いっきり地面を蹴飛ばした。ボス部屋を飛び出していって加速する。これまでの道のりを、猛スピードで逆走しはじめる。


 ミヨリの感知スキルで道を探りながら突き進んでいく。道中で見かけるモンスターたちは疾走するワン太にぶつかって吹き飛び、あるいはミヨリが触手で蹴散らしていく。ちょいちょい見たことないモンスターもいるが、構わずに粉砕する。


 ダンジョンの景色が超高速で流れていき、突っ込む勢いで道を曲がり、踏み入っていないボス部屋みたいなところでボスっぽいのもいたけど、ワン太の体当たりで瞬殺した。


「うひゃあああああああああああああああ!」


「うあああああああああああああああああ!」


「ぎゃああああああああああああああああ!」


 凄まじい風圧を受けながら振り回される三人の絶叫が、ダンジョン全体に反響する。


:うおおおおおおおおおおおい! なんだこれえええええええええええええええ!!!

:やめてあげてえええええええええええええええええええ!!!

:こ れ は ヒ ド イ !

:デ ス ト ロ イ !

:カメラ目線でもありえないくらいスゲぇスピードだってわかる!

:見てて心臓が破裂しそうなほど、やばいスピードなんだが!

:画面内でムチャクチャなことが起きまくってて、見てて頭真っ白になる!

:壁にぶつかる勢いで突っ込んでいって曲がってるから怖すぎなんだけど!

:画面を見てるだけで目がまわって吐きそう!

:モンスターたちが突っ込んできたワン太にひき殺されてるwwww

:触手でも蹴散らしてるっぽい!

:見たことないモンスターがいたかもだけど、消し飛ばされたwwwww

:モンスターたちが皆殺しにwwww

:モンスターたちにとってミヨリちゃん災害そのものやんけwwwww

:ちょっと待て! なんかいまボスっぽいのいなかったか!

:いた! ボスっぽいのがいた!

:ボス部屋っぽかったぞ!

:通ってない階層のボスか!

:途中で一気に下層まで落とされたからな!

:てことは出会ってなかったボス!

:そのボスもワン太にひき殺されて瞬殺されましたwwww

:ひでぇwwww

:見知らぬボス「え? なにおまえらボギャッ!」

:↑マジでそんな感じで消し飛んだwwww

:特に見せ場もなく瞬殺されてしまったボスかわいそうwwww


「あわ、あわわわわわ! うっ……ぐ……!」


 宙づりにされて振り回されながら、目まぐるしい光景にわけがわからなくなった小春はガクリとなる。白目を剥くと、口からブクブクと泡を吹いて意識を失った。


:あっ、小春ちゃんが泡吹いて気絶したwwww

:小春ちゃんがまた気絶してるwwww

:小春アウトォ~!(二回目)


「うああああああああ! あっ、うっ、あっ……!」


 小春と同じように宙づりにされていた玲奈も、さすがに耐えきれなくなったようで、ガクリと意識が暗闇に落ちていった。


:代表もwwww

:代表アウトォ~!

:代表も逝ったかwwwww

:死んではないだろwwwww

:代表これでもまだミヨリちゃんがほしいのかい?

:代表の愛は揺らがないとワイは信じとるでwwwww


 二人とも失神してしまい、残っているのはワン太に乗っているミヨリと、大きな口にくわえられて固まっている綾乃だけだ。


:ワンワンにくわえられた最前線で、このメチャクチャな大進撃を見せられてるムラサメちゃん地獄だろwwww

:ムラサメちゃんだけ特等席だねwwwww

:うれしくねぇwwwww

:だから触手にしときゃよかったんやwwww

:まさかの選択ミスだったwwwww

:ミヨリイイイイイイイイイイイイイイ!!! もうやめろおおおおおおおおおおおおおお!!! ムラサメちゃんがあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!(父より)

:ミヨリ、今日の晩ごはん何がいい?(母より)

:おかんノンキすぎるだろwwwwww

:ここで晩飯の献立を聞くんじゃねぇwwwww

:もっとおとんのこと心配してあげろよwwwww

:ラスボスを倒した直後だっていうのに、こんなすごいこと思いつくだなんてやっぱりミヨリちゃん神しゅぎゅるううううううううううううううううううううう!!!(大親友)

:もうダメェェェェェェェ! もうやめてぇええええええええええ! それ以上は先生をよろこばしぇないでぇええええええ! ミヨリちゃんどこまでしゅごいのおおおおおおおおおお!!!(先生)

:大親友さんと先生が寿命ちぢむレベルで喜んどるwwwww


「うひゃあああああああ! うあわわわわわわ! あ、あああ、ああああ、あっ……ぐっ……ぽ……!」

 

 ワン太にくわえられた最前線で、ダンジョン内を爆走するという刺激がヤバすぎる景色を強制的に見せられていた綾乃は、ついにガクリとなって意識を保てなくなった。


:ワンちゃんのホネが気絶したwwww

:だからホネじゃねぇよwwwww

:誰だよムラサメちゃんのことホネとか言い出したのはwwww

:おとんだよwwww

:ポンコツ騎士団の強火ファンだったwwww

:ムラサメちゃんもお逝きになったwwwww

:全員アウトォ~!

:残りSAN値 ムラサメちゃん0 代表0 小春ちゃんマイナス99999

:小春ちゃんのSAN値wwwww

:ゼロよりもひどいことにwwwww


 ワン太に乗っかったまま、進行方向にいるモンスターたちを粉砕してダンジョン内を超速で逆走していき、配信を盛り下げることなく地上に戻っていく。


 スタート地点までたどり着くと、ミヨリはワン太を影のなかに戻してから、意識を失った三人を連れてゲートをくぐった。


 日の光が照らす地上に出てきたミヨリは、困ったように考え込んでから口を開いた。


「どうやらみんな気を失っているようなので、今回の配信はここまでにします」


 そう言って配信を切ろうとしたら、コメント欄に「アナタが気絶させたんでしょwwww」といった視聴者たちからの多くのツッコミが殺到した。




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