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底辺配信者だけどダンジョンで人気探索者を助けたら、なぜかやべぇ女として大バズりしてみんなから怖がられている  作者: 北町しずめ


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「……本当に、このダンジョンを攻略できたんだね」


 玲奈は広々としたボス部屋を見渡すと、肩の力を抜いて、握っていた剣を腰の鞘に収めた。その表情はどこか儚げで、胸のなかにあるあらゆる感情が満たされていた。


「ミヨリくんがいる時点でメチャクチャになるだろうとは予想していたけど、わたしの想像をはるかに超えて、メチャクチャなダンジョン攻略だったよ」


 玲奈はクスリと笑うと、ミヨリのことを見てくる。


「それでも、かつての仲間たちとは果たせなかった願いを叶えることができた。こうして夢見ていた瞬間を迎えることができた」


 その瞳に抑えきれないほどの感動をたたえながら、玲奈は述懐する。


「ここにいる三人とダンジョンにもぐって、長らく忘れていた冒険の楽しさを思い出せたよ。探索者として駆け抜けた数え切れない冒険の日々を、思い出すことができた」


 ミヨリと綾乃と小春。最後まで共に来てくれた三人の顔を見ながら、玲奈は感謝の気持ちを言葉にする。


 ミヨリは頬をゆるめると、玲奈のほうに向き直る。


「ムラサメちゃんから、昔の玲奈さんが仲間たちと一緒にダンジョン攻略をしている動画を見せてもらいました。あとからわたしも一人で配信を見たんですけどね」


 玲奈が仲間たちと冒険していた思い出の一部。それをミヨリは動画でチェックしていた。


「あの頃の玲奈さんと仲間の人達は、ワクワクしてて楽しそうでした。配信を見ているたくさんの人達に、冒険の楽しさを届けていることがわかりました。ムラサメちゃんが憧れる気持ちもわかります。わたしも玲奈さんの配信を見て、ワクワクしましたから」


 とってもおもしろいダンジョン配信だった。その素直な気持ちを、ミヨリは玲奈に伝える。


「玲奈さんはトップクランのクランマスターで忙しいでしょうけど、もしよかったら、また配信を再開してください。そしてまた、たくさんの人達に冒険の楽しさを届けてワクワクさせてほしいです。それができる玲奈さんは、素敵な探索者なんですから」


 玲奈と一緒に冒険してみて感じたことをそのまま告げると、ミヨリは屈託のない微笑みを浮かべる。玲奈なら、多くの人達に冒険の楽しさを届けることができると信じて。


 玲奈は不意を突かれたように目を丸くして、キョトンとしていた。


 それから顔を伏せてくると、なぜか身体を小刻みに震わせる。


 どうしたんだろう?


 気になるけど、ミヨリとしてはこれで問題解決だ。もともとは玲奈からのしつこい勧誘をどうにかするためのダンジョン攻略だった。『常闇の迷宮』を踏破したことで、玲奈の心残りはなくなったはず。これでわたしのことも諦めてくれる。


 そう思っていたのだが……。


「……っぱり…………しいよ……」


「……玲奈さん? 何か言いましたか?」


 ボソリと玲奈が消え入りそうな声でつぶやいた。そんな気がしたので、ミヨリは問いかける。


 その瞬間だった。玲奈はバッと顔をあげてくると、迫るようにミヨリのもとまで踏み込んできて身体を寄せてくる。


「やっぱりわたしはミヨリくんのことがほしいよ!」


「……え?」


「この『常闇の迷宮』を攻略できたなら、ミヨリくんのことはきっぱり諦めるつもりでいたけど気が変わった! ミヨリくんの活躍を見ていたら、是が非でも手元にほしくなった! ミヨリくんには何がなんでもシルバーダスクに来てもらいたい!」


「いや、あの……」


 目鼻立ちの整ったきれいな顔を寄せてグイグイと迫ってくる玲奈に、ミヨリはたじろぐ。というか怖い。玲奈の目のなかでグルグルと渦が巻いている。どこぞの大親友みたいにおかしくなっていた。


「前にも言いましたけど、わたしはクランに所属するつもりはありません。わたしの憧れの黒野スミレちゃんだって、どこかの集団に所属することは」


「それじゃあわたしがシルバーダスクのクランマスターをやめるよ! クランに所属していなければ、ミヨリくんと一緒になれるよね!」


「え?」


「なっ……! はああああああああああ!」


 耳を疑う発言をしてきた玲奈にミヨリは呆気に取られて、かたわらでそれを聞いていた綾乃は素っ頓狂な声をあげる。


:え? いま代表が代表をやめるって言った?

:言った! 代表が代表をやめるって言ったぞ!

:ええええええええ! 代表が代表じゃなくなるのか!

:代表が代表じゃなくなる? じゃあ何になるんだ?

:ややこしくて言ってることがわかりづらい!

:シルバーダスクを抜けてフリーになるのか代表!

:ちょっ……シルバーダスクのメンバーのSNSが大混乱になってんだけどwwww

:この配信を見てたシルバーダスクの人達がパニクってる!

:ミヨリちゃんのせいで国内トップクランに大激震が走るwwww

:いや、いまの代表興奮しすぎてて精神がまともじゃないだろwww

:たぶんミヨリちゃんに素敵な探索者って言われたことが効いたんだと思うwww

:それで感極まって脳をやられたのかwwww

:代表かわいいwwww

:落ち着いて代表wwww


 玲奈の爆弾発言のせいで、この場だけでなく地上のほうでも大騒ぎになる。さっきから綾乃のスマホには、シルバーダスクのメンバーたちからの連絡がひっきりなしに何件もきまくっていた。


「えっと、とりあえず落ち着いてください。そんなこと、すぐには決められないですよね。ていうかダメですよね。ムラサメちゃんだって困ってますよ」


「うっ……すまない。興奮して、つい軽率な発言をしてしまった。確かにわたしがやめるわけにはいかないね。ちょっと頭がおかしくなっていたよ」


 ミヨリが淡々といさめると、玲奈はビクリとしてから身体を離してくる。額を手で押さえながら、バツが悪そうに目をそらしていた。


:代表が正気に戻ったwwww

:よかったぁ! マジで焦った!

:本当にやめてたらシルバーダスクが大変なことになってたぞ!

:あやうく国内の勢力図に影響が出るところだった!

:代表が代表のままで一安心だ!

:シルバーダスクのメンバーのSNSも「よかったぁ!」って安心してるなwwww

:ミヨリちゃんはトップクランのクランマスターさえもまどわせるやべぇ女!

:狂ったクランマスターを正気に戻したのもミヨリ様!

:いい大人が子供に怒られてるwwww


「けれど、ミヨリくんのことを諦めたわけじゃないよ! キミのことがますますほしくなったのは本当だからね!」


 玲奈は無邪気な子供みたいに目をキラキラと輝かせながら、ミヨリに熱烈な視線を送ってくる。


 なんだかこのダンジョンを攻略する前よりも状況が悪化していた。


「……なぜ?」


 どうしてこうなったのか理解できないミヨリは、誰に問いかけるわけでもなく疑問を口にする。


 その一方で、玲奈が先ほどの爆弾発言を取り消してくれたことに、綾乃は溜飲を下げていた。そして困惑しているミヨリのことを、同情するような目で見る。


:ますます代表に好かれてしまったミヨリちゃんwwww

:いやいやいや! なんで勧誘を断るためのダンジョン攻略が、もっと代表から好かれちゃってんだよwww

:あれだけ規格外の力を間近で見せつけられたら、敬遠するか心酔するかのどちらかだからねwwww

:ムラサメちゃんがすっごいかわいそうな目でミヨリちゃんのこと見てるwwww


 まったく想定していなかった結末を迎えてしまったことに、ミヨリは唇を上向きに曲げながらムムッと唸る。


 そして綾乃は、どうにか無事に『常闇の迷宮』を攻略できたことにホッとするのだが……。


「最深部にたどり着いたことだし、あとは地上まで引き返すだけだね」


「……そうだった。ここから入り口まで引き返さないといけないんだった」


 異界にある光の柱のように、入れば地上まで一気に戻れるような便利な仕掛けは通常のダンジョンにはない。ここからまた帰り道をたどらないといけないことに、綾乃は気が滅入った。


:ムラサメちゃんwwww

:めっちゃガックリしてるなwwww

:ようやく攻略を終えてホッとしたところに残酷な事実を告げられたムラサメちゃんwwww 

:小春ちゃんも「もう勘弁してよ」って顔してるwwww

:さっきまで目を輝かせていた代表もシュンとしとるwwww

:ムラサメちゃんならできるはず! ファイトだ!(父より)

:おとんが娘よりも推しの帰りを待ってるwwww

:ミヨリちゃんが帰ってくるのをわたしも人形たちも待ってるよ!(大親友)

:宮本さんが帰ってくるまで、大親友さんがたくさんのミヨリちゃん人形を出したままなので、早めに戻ってきてくれると助かります! オネガイ イソイデ!(先生)

:ここにきて先生またピンチwww

:ミヨリちゃんが帰ってくるまで大親友ちゃんから解放されない先生wwww

:大親友ちゃんを異常者みたいに言うなwwww

:↑友達を模した人形を大量生産してお喋りしてる子がまともだとでもwww




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― 新着の感想 ―
先生もヤバいがもっとヤバい人物を見て冷静になったのか まあ大量の人形に囲まれてしかもその人形と話す自分の生徒とか悪夢だな
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