78
玲奈は深呼吸をして、気を取り直す。
「これで最後だ。あの魔王っぽいのを倒せば攻略完了だ」
玲奈は熱のこもった視線で綾乃と小春を見ると、腰から剣を抜いた。
魔王がまとう膨大な魔力に気圧されていたが、綾乃も剣を抜き、小春も両手を構える。
玲奈は握った剣に有りっ丈の魔力を流し込でいく。複数の属性が同時に付加されていき、剣が虹のような七色の輝きをまとった。
:代表の剣が光り出した!
:いろんな色が光ってる!
:複数の属性をエンチャントしたか!
:混合魔法エンチャント!
:あれ火力がヤバイことになってんじゃねぇの!
切り札を発動させた玲奈が目を向けてくると、綾乃は頷いた。二人で肩を並べて、駆け出していく。
魔王は玉座に座ったまま、悠然と右手を持ちあげると、綾乃と玲奈を指差してきた。二人の足元に魔法陣が浮かびあがる。
ハッとすると、綾乃と玲奈は両側に分かれて跳んだ。その直後、地面を突き破るように、巨大なツララが生えてくる。
:いきなりでっかいツララが出てきた!
:魔王の魔法か!
:ムラサメちゃんも代表も無事だ!
:貫かれてたら危なかった!
「小春くん!」
玲奈から名前を呼ばれると、小春は魔法を発動。狙いを定めて、両手から光の弾を発射する。
魔王は玉座から立ちあがろうとしない。座したまま、無造作に左手を振るう。たったそれだけの動作で、飛来してきた光の弾を払い除けた。そらされた光の弾は壁に衝突して爆散する。
「ぜ、ぜんぜん効いてない……!」
自分の魔法攻撃がかすり傷さえつけられないことに、小春はたじろぐ。
:小春ちゃんの魔法攻撃を片手だけで弾きやがったぞ!
:小春ちゃんは人気こそないけど、若手ではトップラクスの魔法使いなのに!
:あの光の弾にもかなりの魔力が込められてた!
:それがまったく通じないとか、どうなってんだよ!
魔王の計り知れない戦闘能力に、コメントが荒れる。
魔王は嘆息すると、右手を前に向けてきた。その掌が発火し、紅蓮の火の玉が撃ち出される。
飛来してくる紅蓮の炎に、小春はギョッとした。
すかさず、玲奈は走り出す。小春を庇うために炎の射線上に立つと、七色に輝く剣を振った。斬撃が火の玉に触れて炸裂し、玲奈は後方に吹っ飛ばされる。
尻もちをつかないように左足で踏ん張って体勢を保つが、大量の魔力をそそいだ七色の輝きは剣から失われてしまう。装着した白銀の鎧も黒ずんで、半壊していた。
:代表のエンチャントが消えた!
:あれ一回使用するだけでもすごい魔力を消費するのに!
:たった一発で複数エンチャントを消し去るとか、あの火の玉どんだけ威力高いんだよ!
:鎧着てなかったらダメージもらうところだった!
魔王は続けて、人差し指を立ててくる。玉座の左右にある空間が発光すると、そこに二つの魔法陣が描かれた。バチバチバチッと、双方の魔法陣が音を立てて明滅し、鋭い稲妻が連続で撃ち出される。
「玲奈さん!」
「っ……!」
立ち止まっていては危険だと、直感で理解した綾乃は駆けまわる。玲奈も名前を呼ばれるのに先んじて走り出していた。飛んでくる稲妻は爆音を轟かせて土煙を噴きあげる。それが、間断なく何発も襲いかかってきた。
綾乃と玲奈は息せき切りながら全力疾走することで、辛うじて回避していく。
「やっぱり、かなり強いようだね」
魔王が繰り出す魔法攻撃を眺めていたミヨリは微笑む。今回のダンジョン配信の最後を飾るのに、相応しい強敵だ。
ミヨリも人差し指をピンと立てる。その指先で、バチバチと電撃が弾けた。
:ミヨリちゃんの指先がバチバチいってる!
:雷魔法か!
:ミヨリちゃんの電撃なんだか色が黒くなってない?
:ファイアーボールと同じで黒くできるのか!
影の力をそそぐことで、指先で弾ける電撃が黒く染まり、バチバチバチッと勢いが増していく。
ミヨリは魔王を指差した。
「ばちん!」
そう口にすると、黒い稲妻が閃光となって走る。
炸裂音が響き、魔王が座していた石の玉座が粉々に吹き飛ぶ。展開されていた二つの魔法陣も撃ち消された。
綾乃と玲奈を雷で狙っていた魔王は、攻撃を中断して跳躍。羽織ったローブをはためかせて、地面に降り立つ。黒い稲妻に打たれずに五体満足だ。
:すげえええええええええ!
:速すぎて見えんかったけど、黒い稲妻が玉座を破壊した!
:展開してた魔王の魔法陣も消し飛ばしたぞ!
:影の力でパワーアップさせたのか!
:魔王は仕留められなかったか……!
:ムラサメちゃんたちへの攻撃をやめて、ギリギリのところでよけたっぽい!




