70
:三人とも小春ちゃんを見て困ってるwww
:そういや小春ちゃん気絶したままだったwwww
:小春ちゃん起きてwwww
:小春ちゃんの配信が同接五万いってるよ!
:ミヨリちゃんとムラサメちゃんの配信は?
:ミヨリちゃんは六十五万! ムラサメちゃんは六十万!
:二人との格差wwww
:やっぱ人気者二人との格差エグいwwww
:なんでみんな小春ちゃんの配信見ないんだよwww 俺も見てないけどwwww
:↑見てないのかいwwww
:もう小春ちゃんの配信を見ないのが、一種のネタと化してきちゃってるからねwww
:ていうか小春ちゃん、このままだとミヨリちゃんに首根っこつかまれてズルズル引きずられちゃうwwww
:ムラサメちゃんの二の舞にwww
:今度は小春ちゃんがお荷物(物理)になるwwww
:もしくは触手でグルグル巻きにされて運ばれるぞwwww
チラリと見えたコメントに、ミヨリはビクッとなった。本当に同接が六十五万まで達していた。
いつの間にここまで伸びたのか……。デーモンナイトや天使との戦いや、下層まで落っこちたことが話題になって、大勢の視聴者を呼び込んだようだ。
同接の多さに目がくらみそうになるけど、いまは気絶した小春をどうするのかが先決だ。
ミヨリはかぶりを振るうと、綾乃のほうに目を向けてジーッと見る。
「な、なんだ……」
見つめられると、綾乃はうろたえる。
ミヨリは右手を綾乃のほうに伸ばした。すると、その身体に装着されているたくさんの目がついた漆黒の鎧が、ドロドロと液体状になって溶けはじめる。
「うひゃああ!」
いきなり漆黒の鎧が溶解していき、もともと着ていた白銀の鎧があらわになると、綾乃はその場で跳びはねる。
溶けた漆黒の鎧は綾乃の身体から引きはがされていき、黒い球体となってミヨリの右手のなかに飛んでいった。
:ガイくんを外した!
:外すときも気持ち悪すぎて悲鳴をあげてるwwww
:いきなり鎧がドロドロ溶けるとか怖すぎだろwwww
:よかったね、ムラサメちゃん! これでムラサメちゃんは自由だ!(父より)
:自由をうばってたのはあなたの娘ですwwww
ミヨリは飛んできた黒い球体を右手でつかむ。今度はそれを、倒れている小春に向けて投げつけた。
ベチョリと、黒い球体は小春の身体に付着すると、液状になって飛び散る。小春の身体にはりついた影が、白いローブの上から侵食していき、全身に行きわたる。
影は小春の肉体をつつみこんで、凝固していった。パチパチパチと、表面についた無数の目が開く。小春の身体に、漆黒の鎧が装着された。
:え……?
:小春ちゃんにガイくんを……?
:なにするつもりだミヨリちゃん?
ミヨリはエアコントローラーの手つきになると、親指をクネクネと動かす。
ビクンと、小春の身体がわずかに跳ねる。見えない糸で引っぱられているように右腕が持ちあがり、バシンと思いっきり地面をはたくようにして手をついた。
ググググッとうつ伏せになったまま背筋を伸ばすと、ギシッ、ギシッ、と関節が壊れたロボットみたいな不自然な動きで、身体が起きあがっていく。
小春は両足で大地を踏みしめると、やっぱり壊れているロボットみたいにガシッ、ガシッ、と違和感のある挙動で歩きはじめた。
動いている。動いているが、首はがっくりと真横に傾いていて、白目を剥いたままだった。
:うおおおおおおおおおおおおおおおおいwwwww
:ちょっwwwwww
:なんだこれwwww
:あの鎧、気絶してる人間まで操れるのかよwwww
:リビングデッド小春 爆 誕 !
:おもしろすぎんだろwwwwwww
:ムラサメちゃんからあの不気味な鎧が外れてよかったと、いま心から思えている(父より)
:心から思うなwwww
:おとんは小春ちゃんのことも心配してあげてくださいwww
:そもそもなんで自分の娘よりも他の子を心配してんだよwwww
:ミヨリちゃんは心配する必要がないのでwwww
気絶したまま歩き出した小春を目にして、綾乃は寒気がした。はたから見たら、あのたくさん目玉がついた鎧はおぞましくて、さっきまで自分が身につけていたと思うと改めてゾッとする。
そして綾乃の隣に立つ玲奈は、変な歩き方をする小春を見ると……。
「ブフウッ……!」
がんばって堪えようとしたが、思いっきり吹き出した。
:代表がまた吹いたwww
:代表アウトォ~!
:こんなん近くで見せられたら笑うわwww
:ついさっき格好よく覚悟決めたばかりなのにwwww
:さっきの感動を返してくださいwwww
:操られた小春ちゃんがムラサメちゃんの家に突撃してくる話とかいいわね(先生)
:よくねぇよwww
:こぇええよwwww
:そんなもん突撃させんなwwww
親指をクネクネと動かしながら、小春を操るミヨリは微笑を浮かべて頷く。これで小春も一緒に進むことができる。
「玲奈さん。事前に話していたとおり、未到達の階層の映像も無料公開しますけど、構わないですよね?」
「あ、あぁ……も、もちろんブフッウ……!」
:代表wwww
:玲奈さん笑うの堪えるのに必死でまともに受け答えできてねぇwwww
:ていうか堪えきれずに吹き出してるwwww
:口を手で押さえてプルプルしちゃってるなwwwww
:ここから先の攻略風景も無料公開するのか!
:うおおおおおおマジかぁ!
:入るだけでも困難な伝説のダンジョンの未到達階層の映像とか貴重すぎる!
:ここから先の映像は金にしたらすごい額の情報になるのに!
:未知の階層まで無料公開しちゃうとか、やっぱミヨリちゃんやべぇな!
:探索者からすればまだ開拓できてない領域の情報を無料で配信されてたまったもんじゃないだろwwww
:逆に攻略情報がわかって自分が挑むときに対策を立てやすくなるからありがたいと感じてる探索者もいるはず!
:まぁ、そもそもこのダンジョンは挑戦すること自体が困難なんだけどね!
:…………カネほしい(母より)
:お母さんwww
:カネほしいwwww
:本音がダダもれてるwwww
玲奈から許可をもらうと、ミヨリは小春を操りながら歩き出す。
ここからは、誰も踏み込んだことのない未知の階層だ。冒険の楽しさに胸が踊る。
ミヨリは瞳の奥を輝かせながら、先に進んでいった。




