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今日の登校はいつもより疲れた。
校門を過ぎたら、やたらとみんなからジロジロ見られたし、教室に入れば普段はあまり会話することのないクラスメイトたちに声をかけられた。
「あの動画、やっぱり宮本さんだよね?」
「ムラサメちゃんが泡吹いてたけど、宮本がアレやったんだよな?」
「宮本のこと物静かでなんだか怖いなって思っていたけど、やっぱりやべぇ女だったか」
クラスメイトにまでミヨリがやべぇ女であるというあらぬ誤解が浸透している。
これがバズるということか……。
「ようやくミヨリちゃんが神であることを、世界中の人々が知る時がきたんだね!」
「わたしは神になった覚えはないけど?」
グッタリとしながら自分の席に突っ伏していると、千紗が近づいてきた。
ウェーブのかかった長い髪に、おっとりとした顔立ち。普段は穏やかな喋り方なのに、なぜかミヨリのことになると千紗は異常なくらい熱狂的になる。
今も目の中がグルグルと渦巻いてて、理性がカッとんでいるようなのでちょっと怖い。
「急いで次の配信をしたほうがいいよ! この流れに乗らない手はないからね!」
千紗はグイッと顔を寄せてきて提案してくる。
確かにその通りだ。今はバズって話題になっているけど、その熱がいつまでも続くことはない。そのことは茂則にも指摘された。ここでがんばって固定ファンをつけないと。
ムラサメちゃんの人気にあやかってる気がしないでもないが……せっかくのチャンスだ。ものにしなくては。
「できるだけ早めに配信をするよ」
「うんうん! あっ、でもいつも通りダンジョン配信をやるだけでいいからね。前みたいに下手なウケ狙いをしようとしたらダメだよ」
「……それは反省しているよ」
一風変わったダンジョン配信をしようとして、いろいろとやってみたけどことごとく惨敗だった。過去の失敗が思い起こされて恥ずかしくなる。
もっとも普通にダンジョン配信をやっても過疎っていたけど……バズっている今なら見に来てくれる人もたくさんいるはずだ。
「さっそく今日にでもダンジョンにもぐって……」
放課後の配信についてプランを立てていると、スマホが通知音を鳴らした。
なんだろうと思いながら胸ポケットからスマホを取り出して、画面を覗き込む。
「探索者組合からだ……」
画面には、探索者たちを管理するギルドからミヨリ宛てにメッセージが届いていた。




