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「で、でもわたしよりもすごいプレイヤーなら山ほどいるだろ! 『プレイヤー狩り』と呼ばれているプレイヤーは特に有名で、大暴れしているそうじゃないか!」
綾乃は弁明するように、ダンジョンブレイドのプレイヤーたちの間で取り沙汰されている『プレイヤー狩り』のことを持ち出した。
:プレイヤー狩り?
:ダンブレはオンラインモードをオンにすると、対人戦ができるようになる!
:他のプレイヤーと遭遇して戦えるようになるんだ!
:そんで他のプレイヤーを狩りまくってて、無双してるヤツがいるから話題になってる!
:俺もアイツに狩られた!
:マジであのプレイヤー強い!
:あの『コナカ』ってプレイヤーに出会ったときの絶望感はボス戦以上だ!
『プレイヤー狩り』という異名を持ったプレイヤーが話題になっているのは、ミヨリも小耳にはさんでいた。けれど、そのプレイヤーネームまでは知らなかった。
コメントに表示されたプレイヤーネームを見て、一つの可能性が思い浮かぶ。
「もしかして、それって……」
:どうも~! コナカで~す!(母より)
:……ん?
:……は?
:……へ?
話題になっていたプレイヤー狩り本人がコメントをしてくると、視聴者たちに動揺がひろがっていく。
「やっぱり……」
ミヨリだけは、その事実をすんなりと受け入れることができた。プレイヤーネームを見た瞬間に、ピンときていたから。
:自分用のハードでダウンロード版を購入して、ダンジョンブレイドで遊んでいます(母より)
:他のプレイヤーを蹴散らすの楽しすぎてやめられんwwww(母より)
:逃げてく他のプレイヤー狩るのオモロイwwww(母より)
:ちょっと待ってくれwww マジかwww
:ミヨリちゃんの反応を見るにガチっぽいなwww
:てことは本当にお母さんがプレイヤー狩りかよwww
:アンタかいwwww
:娘が楽しみにしてたゲームで何してんだよwwww
:娘は異様にパッケージ版に執着してたのに、おかんはそこにこだわりないのかwwww
:ゲーム内で異名を得て大暴れしてるミヨママwwww
:他のプレイヤーを虐殺してるwwww
:どんな母親だよwwww
「お母さんまで……」
おそらく香奈子も、ミヨリよりもダンジョンブレイドを先に進んでいる。もしかしたら、ラスボスを撃破しているかもしれない。それを思うと悔しくて、ムムッと唸り声がもれた。
:ミヨリちゃん仲間の探索者と母親にゲームで先を越されてダメージを受けてるwwww
:かわいいwww
:今のところミヨリ様に有効なダメージを与えられるのはゲームと同接だけだからなwww
:どんな攻略法だよwwww
「えっと、どうかしたのかミヨリ?」
スマホ画面を見下ろしながら唸っていると、綾乃が声をかけてきた。
ミヨリは顔をあげて答える。
「その『プレイヤー狩り』っていうの、うちのお母さんだったみたい」
事実を告げると、綾乃は目を丸くする。それから哀れむような眼差しをミヨリに向けてきて、言葉をかけてきた。
「おまえのお母さん、凶悪プレイヤーだったんだな」
:wwwwwww
:そんなセリフはじめて聞いたわwwww
:しかもめっちゃ同情したような顔しながらwwww
:これ友達から言われないセリフナンバーワンだろwwww
思わぬところでダメージを受けてしまったが、ヘコんでなんていられない。配信に集中しないと。
「黒野スミレちゃんなら、楽しみにしていたゲームで先を越されても、くじけない。だ、だから、わ、わたしはわたしのペースで、ダ、ダンジョンブレイドを、た、た、楽しむよ。た、大切なのは早くクリアすることじゃなくて、ど、どれだ、どれだけゲームを楽しめるか、だ、だからね」
:めっちゃ動揺してて草草草!
:声震えちゃってるじゃんねぇかwww
:ミヨリちゃんぜんぜんごまかせてないよwwww
:ゲームで先を越されたからって黒野スミレちゃんを持ち出すなwwww
:ミヨリのそういうところ父さんは嫌いじゃないぞ。見てて落ち着くから(父より)
:おとんwww
:娘が動揺してるのを見て落ち着くんじゃないwww
:おとんは娘が動揺してるのを見て、自分の娘だと確認できてるwwww
ミヨリは何度か息を吐いて、乱れた呼吸を整える。
今のトークで、少しでも視聴者が楽しんでくれたのならいいことのはずだ。きっとそうだ。自分にそう言い聞かせて、歩みを進めていく。
隣にいる綾乃は、とりあえず追及をかわすことができて胸を撫で下ろしていた。




