表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺配信者だけどダンジョンで人気探索者を助けたら、なぜかやべぇ女として大バズりしてみんなから怖がられている  作者: 北町しずめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/55

50




「みんな、戦闘態勢に……!」


 すかさず玲奈は指示を飛ばす。それに先んじて、綾乃は腰から剣を抜いて身構えており、小春も両手を突き出して、いつでも魔法を発動できるようにしていた。


「グゴオオオオオオオオオオオオオオ!」


 ベヒーモスは雄叫びをあげると、四人の探索者を丸ごと粉砕せんと突っ込んでくる。


 猛然と迫ってくるベヒーモスの突進。直撃すれば、重傷はまぬがれない。どんな重装備で守りを固めていても、甚大なダメージを受けることになる。それほどの強敵だ。


「ごめんね。あんまりスタート地点で、時間をかけたくないんだ」


 ミヨリは前に踏み出すと、薄笑いを浮かべた。


 足元にある影がうごめく。そこから複数の黒い触手が生えてきて、直進してくるベヒーモスに向かって一斉に伸びていった。


 ベヒーモスは一瞬だけギョッとして表情をこわばらせたが、そのときには既に数十本の触手が巨体を貫いて蜂の巣にしていた。


「……グッ……ガア……ガ…………!」


 なにが起きたのか理解できず、ベヒーモスは全身を触手に貫かれたまま、断末魔の声をもらす。


 伸ばした触手を引っこ抜いて影のなかに戻すと、巨体が崩れ落ちていく。大きな音がして、土埃が舞いあがった。


 横たわったベヒーモスは、口からダラリと舌を出したまま動かなくなる。もうその瞳に生命の光はなかった。


『常闇の迷宮』の最初の難所をわずか数秒で突破した。それを間近で見ていた綾乃と玲奈は、身構えたまま呆気に取られる。


 一方で両手を構えて固まっていた小春は限界まで目を見開くと。


「うぅえああうおあああああああ! 触手ううううううううううう!」


 はじめて生で見るミヨリの触手に、ビビリ散らかしていた。


:小春ちゃんwwwwww

:小春ちゃんしっかりしてぇえええええ!

:男の人呼んでえええええええええ!

:はじめての触手に小春ちゃんドッキドキwwww

:ワイもはじめて見てドッキドキしてる……

:ミヨリちゃんの恐怖のまとめ動画で予習してきたのにねwwww

:動画で見るのと生で見るのとではやっぱり恐怖感が違うんだろwwww

:リハーサルはしょせんリハーサルということかwwww

:ていうかベヒーモス瞬殺!

:すげえええええええええええええ!

:他のダンジョンでは最下層のボスやぞwwww なんでザコ敵みたいにあっさりやられてんだよwwww

:あぁ……神よ……!(大親友)

:大親友ちゃんこれもう祈ってるだろwwww

¥50000 ベヒーモス:もっと出番ほしかったっス……

:モンスター名義で赤スパすんなwww

:ベヒーモスとして赤スパしてるアホがおるwwww


 ベヒーモスを仕留めると、コメントが大いに沸いた。スパチャまでしてくれた視聴者までいる。


「玲奈さんから事前に情報を聞かされていたのもあるけど、スタート地点のそばに強敵がいるのはアビスゲーではよくあることだからね。そんなに驚きはないかな」


:ゲームと現実をごっちゃにすんなwww

:この子は何を言ってるんだ?

:アビスゲーでの常識を語ってる!

:スタート地点に強敵がいるのがよくあること?

:いや、これガチだから! スタート地点のそばに強敵が配置されてるのはアビスゲーなら常識!

:どうなってんだアビスゲーwww

:ゲームではそうだとしても、現実のダンジョンでいきなり強敵出てきたら普通はビビるだろwwww

:↑ミヨリちゃんが普通だとでも?


 リスナーが喜んでいるようなのでよかった。


 だけど呆然と佇んでいる玲奈たち三人を見て、ミヨリはハッとする。


「もしかして、配信的に考えてちょっとは戦ったほうがよかったですか?」


 テンポを優先して秒で片づけてしまったが、少しは玲奈たちが戦うシーンを視聴者が見たがっていたかもしれない。そのことに気づき、ミヨリは焦りはじめる。


「いや、問題ないよ。苦労せずに倒せるのなら、それに越したことはないからね」


 ははは、と玲奈は苦笑しながら答える。


 それを聞けて、ミヨリは一安心した。


「さてと、それじゃあ……」


 まだやることがある。どうするのかは、そのときの気分次第で決めているけど、このベヒーモスはいただくとしよう。


 ミヨリの足元にある影が、前方に向かって伸びていく。影は何倍にも大きくなって拡張していき、地面に横たわっているベヒーモスのもとまで届いた。


 そして……。


 ズズ、ズズズズズズズズ――――


 沈没船が暗い海の底に沈んでいくように、ベヒーモスが影のなかに引きずり込まれていく。 


「ひぃぃぃ! ホ、ホントにモンスターを食べてる! わ、わたし無理かもしれない! こんなのまとめ動画で予習してても耐えられないよ!」


「配信で見て知っていたが、実際にこの目で見るとヤバいなこれ。……どうしよう綾乃? 想像していたよりも怖い」


「ミヨリとパーティを組むとは、そういうことです。ていうかわたしも怖いです」


:小春ちゃんがもうピンチ!

:やっぱ予習してきても耐えられなかったかwww

:ミヨリ様に対して予習など無意味www

:代表がうろたえておるwwww

:代表しっかりしてwwww

:まだダンジョンに入ったばっかなのにwwww

:モンスターではなく、味方に追い詰められるという異常事態www

:トップクランのクランマスターさえもビビらせるミヨリンwwww

:ムラサメちゃんも、やっぱ怖いみたいだなwwww

:ミヨリちゃんとパーティを組むのは二回目だけど怖いもんは怖いwww

:目の前でモンスターを食いはじめたら怖いだろwwww

:ミヨリとパーティを組むとは、そういうことですwww

:残りSAN値 ムラサメちゃん74 代表72 小春ちゃん31

:小春ちゃんのSAN値がwwww

:一人だけめっちゃ低いwwww

:このまえミヨリがモンスターを料理して食べる漫画がおもしろいって読んでましたwwww(母より)

:このタイミングでなに言ってんだおまえ……(父より)

:おとん困惑www

:俺もおかんのコメントに困惑してるよ……

:この母親にしてこの子ありだなwww


 ものの数秒でベヒーモスの亡骸を影のなかに取り込んでしまうと、ひろげていた影を縮小させていき、足元に戻した。


「それじゃあ、先を急ごうか」


 テンポよくいかないといけない。ミヨリは後ろの三人に呼びかけると、前進していく。


 まだ恐怖心が抜けきっていない三人は、お互いに顔を見合わせると、おぼつかない足取りでミヨリの小さな背中を追いかけていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ