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「アビスから送られてきたメッセージには『我が社の商品を絶賛して頂けるのは大変喜ばしいのですが、あまり無茶をしないように』って書かれていたよ」
:アビスからも釘刺されてて草
:自分の会社のゲームキャラに憧れて探索者になったとか言われても困るwww
:しかもこんなトンデモ配信をしてるやべぇ女の子に言われたらねwwww
アビスソフトから届けられたメッセージの一部を読みあげると、視聴者たちからコメントが返ってきた。
ミヨリはそれを穏やかに微笑んで眺める。そしてスッと表情から笑顔を消すと、悩ましげに考え込んだ。
「……アビスから届いたあのメッセージは、一体どういう意味なんだろうね?」
:…………は?
:ん?
:いや、だから言葉どおりの意味では……
:ゲームキャラの真似して無茶しないでってことでしょ?
:なに言ってるんだ、この子?
ミヨリの一言によって、コメント欄に戸惑いがひろがっていった。
リスナーの反応を確認すると、ミヨリはゆっくりと首を左右に振った。そして浮かんでいるドローンカメラに目を向ける。
「アビスの言葉をそのまま信じちゃダメだよ」
:ちょっと待って! ホントになに言ってるのかわかんない!
:大好きなゲームメーカーの話をしてんだよね?
:やばい! 意味不明すぎて頭が混乱してきた!
当惑する数々のコメントが高速で流れていく。多くの視聴者がミヨリの発言の意味を理解しかねていた。
「みんなダンジョンブレイドの公式PVやホームページの情報は見たかな?」
:もちろんプレイする前に見たよ!
:予習はバッチリだけど……
:どんなゲームなのか知りたくて見た!
「そうなんだね。やっぱり気分を盛りあげるためには、事前にそういった情報に目を通しておかないとね」
ちゃんとアビスソフトが公開した情報をみんな確認していたようなので、ミヨリは満足げに頷く。
「……あれはぜんぶトラップだよ」
:……へ?
:ちょっ……!
:いやいやいやいや!
「アビスの言うことなんて信じちゃダメだよ。公式の情報なんて、ぜんぶ罠だらけなんだから」
:冗談抜きでなに言ってんだよこの子は!
:大好きなゲームメーカーに対してなんでこんな疑心暗鬼なんだ!
:いや、ミヨリちゃんの言うことはガチで正しいぞ!(アビス信者)
:あんまり公式の情報は当てにならない!(アビス信者)
:過去作でも発売前は三十時間でクリアできますって公式が言ってたけどウソだった!(アビス信者)
:実際は百時間以上プレイしてもクリアできなかったよ!(アビス信者)
:マジでそうだから!(アビス信者)
:それがアビスゲー!(アビス信者)
:一斉にアビス信者たちが大量に湧いてて草
:ミヨリちゃんのせいでアビス信者が集まってきちゃったよwwww
:アビスゲーとは一体……!
どうやらミヨリと同じアビス信者たちが流入してきたようだ。同志たちが配信を見に来てくれたことに、気分が高まる。
「今回のダンジョンブレイドでも、やっぱり公式の情報はあまり当てにならなかったよ」
:ホントそれな!
:公式がぜんぜん説明してくれない機能がたくさんある!
:属性ごとに隠し相性があったり、耐性をあげるアイテムには永続効果のものがあったり、特殊能力のある装備が重複可能だったり!
:まだまだ他にも明かされてないシステムがあるっぽい!
:なんでそれを公式が教えないんだよwwww
:PVやホームページの意味ねぇwwww
「いつもアビスは大事なことは教えてくれないからね。アビス信者からすれば、慣れたことだよ」
:慣れるなwww
:プレイヤーに不親切なメーカーだなwww
:その不親切さがアビス信者には受けてる!
:アビスゲーには発見する楽しさがある!
コメント欄に書き込みが増えて盛りあがる。大好きなアビスソフトについてみんなが語りあってくれているのは、見ているだけで楽しい。
「もしもダンジョンブレイドを購入したのなら、すぐにプレイヤー気分は捨て去るべきだよ。みんな自分が何者なのか、ちゃんとわかっているのかな?」
:何者って……
:ただのプレイヤーだけど……?
:ユーザー……?
困惑する視聴者たちから返ってくるコメントは、どれも的外れなものばかりだった。ミヨリは嘆息すると、神妙な面持ちになってドローンカメラを見あげる。
そしてみんなが何者なのか、真実を教えてあげることにした。
「違うよね? ダンジョンブレイドを買ったみんなはプレイヤーじゃないよね? みんなはもうブレイドマスターだよね」
:いやいやいやいやいやwwwww
:そんなものになった覚えはねぇですwwwww
:一応説明しておくと、ブレイドマスターってのはダンジョンブレイドのプレイヤーのことな!
:ゲーム内ではプレイヤーキャラのことをブレイドマスターって呼ぶ!
:やっぱプレイヤーじゃねぇかwwww
真実を伝えると、様々なコメントが流れていった。とりわけ動揺しているものが多く見受けられる。
「アビスソフトは常にわたしたちに問いかけてきているんだよ。ダンジョンブレイドを手に取ったその瞬間から、真のブレイドマスターに相応しいかどうかをね」
:みんなそんな覚悟を持ってゲームしてないよwww
:アビス信者だけど、ミヨリちゃんの発言に戸惑ってしまうワイwwwww
:ミヨリちゃんあんまりゲームうまくないっぽいのに、なんでこんな確信持って語れるんだよwwww
:覚悟ガンギマリの顔つきwwww
:ダンジョンのボスと戦うときよりも真剣なミヨリンwwww
:ミヨリはまだチュートリアル後の最初のボスも倒せてませんwwww(母より)
:おかんwww
:ミヨママwwww
:お母さん内部告発wwww
:最初のボスも倒せてないのに、こんな知ったふうに語ってたのかよwwww
:チュートリアル後の最初のボスもおかしな強さだから仕方ないwwww
:あれ負けイベントかと思ったら、ガチで倒さないといけなくて絶望したwwww
:普通にボス戦やり直さなきゃいけなくてポカ~ンなったわwww
:最初のボスでプレイヤーの心を折りにくる、いつものアビスゲーだったwww
:しかもミヨリちゃんのせいでダンブレが爆売れしたから、いつもよりたくさんの人達の心が折られてるwwww
:ゲームに情熱をそそぐミヨリちゃんはステキだよ!(大親友)
どうやらダンジョンブレイドを購入した多くの人達が、アビスソフトからの洗礼を受けているようだ。ミヨリもはじめてアビスゲーをプレイしたときは、他の一般的なゲームと比べて異質なものだったので衝撃だった。
「わたしも真のブレイドマスターになれるように、日々精進しているよ。どんなに辛いことがあっても、心が折れないようにがんばっている。戦い続けて駆け抜けた先に、必ず大きな感動が待っていると信じてね」
:それゲームしてるだけじゃねぇかwwwww
:【注意】この子、ゲームしてるだけですwwww
:深刻に語ってるけどゲームしてるだけwwww
:お、俺はまだ真のブレイドマスターではなかったというのかッ……!
:↑やめいwwww
ダンジョンブレイドをプレイする際の心構えについて熱く語って聞かせると、みんなおもしろがってくれた。もしかしたら前よりもトークスキルが向上しているのかもと、ちょっとだけ自信がつく。




