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「さてと」


 ミヨリは薄い笑みを浮かべたまま、自分の影を拡張させる。


 横たわっているブルードラゴンのもとまで影を伸ばすと、その亡骸を影のなかに沈めていく。触手も生やしてドラゴンの亡骸にからみつかせて、いつもより速やかに影のなかに引きずり込んでいった。


:ちゃんと取り込んでるwww

:これでまたミヨリ様に新たな破壊兵器がwww

:あんなに強かったドラゴンまで自分の力に変えちゃうとかやばすぎだろwwww

:ミヨリったら拾い食いばかりしてるのね。困った子だわ(母より)

:いやもうこれ拾い食いとかいうレベルじゃなくてガッツリいただいちゃってるだろおおおおおおおおお!(父より)

:ガッツリいただいちゃてるwww

:なんでメシみたいになってんだwwww


 ブルードラゴンの亡骸を取り込むと、伸ばしていた影を足元まで戻す。


 ボスを倒して、最大の見せ場を無事に乗り切ることができた。


 でもまだ配信を終えていないので気を抜くことなく、ミヨリは浮かんだドローンカメラに視線を向ける。


「異界のボスを倒したから、これでダンジョン攻略完了だね」


:おめ!

:おめでとう!

:未発見の裏ルートを情報なしでクリアしやがった!

:伝説だ! 新たな伝説がここに爆誕した!

:めっちゃ怖くてドキドキしたけど、楽しかった!


 視聴者に呼びかけると次々とコメントが返ってくる。同接ゼロだったこの間までは、こんなことはありえなかった。スマホ画面に流れていくコメントを見ているだけで、胸の奥が温かくなる。


 あとは近くにある光の柱に入って、異界から脱出するだけだ。


「それじゃあムラサメちゃん、帰ろう……か?」


 後ろを振り返って、ここまで冒険を共にしてきた綾乃に声をかけるが……ミヨリはポカンとなってしまう。


 視線の先では、白目を剥いて口からブクブクと泡を吹いて気絶している綾乃が、ピクリともせずに倒れていた。


:ムラサメちゃんwwww

:そういえばムラサメちゃんいたなwwww

:途中から完全に存在を忘れてたwww

:ギョロちゃんの肥大化を見て気絶したみたいwwww

:あんなもん間近で見せられたら気が狂うわwwww

:ムラサメちゃんが泡吹いて気絶してるの定期

:気絶はムラサメちゃんの必殺技なのでwww

:ムラサメの必殺技『気絶』wwwww


「…………」


 気を失っている綾乃を見下ろしながら、ミヨリは考え込む。


 もしかしなくてもこれは、わたしのせいだろう。……たぶん。


 パーティの仲間が意識を失っているなら、最後まで面倒を見ないといけない。


 ミヨリは綾乃の首根っこをつかむと、ズルズルと引きずりながら歩き出す。


:またwwww

:だからその運び方wwwww

:ムラサメちゃんが死体みたいになってるwwww

:ムラサメちゃんお荷物(物理)wwwww


 ミヨリは綾乃を連れて、天に向かってそびえ立つ光の柱のなかに踏み込んでいった。


 視界がまぶしい光におおわれていき、身体が浮遊感につつまれる。


 二人での冒険を終えて、地上への帰還を果たした。





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― 新着の感想 ―
おはようございます。 >首根っ子ズルズル せめてもうちょっとこう……触手で宙吊りでも良い(?)から、もうちょい優しく運んであげてもろてもええやろか?ww
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