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「専用武器がなければあの結界は破れない! こうなってはもう逃げるしかないぞ!」


 ブルードラゴンの威圧感におびえる綾乃は強い口調で逃げるように急かしてくる。

 

:ムラサメちゃんに同意!

:マジで逃げたほうがいい!

:勝てないなら早く逃げろおおおおお!(父より)

:わたしはミヨリちゃんを信じてるけど、自分の命が第一だよ(大親友)


「でもあのドラゴンさんは、それを許してくれないみたいだね」


 空に浮かぶブルードラゴンにミヨリは目を向ける。


「ガアアアアアアアアアアアア――――!」


 青い龍は横に大きく裂けた口から咆哮をほとばしらせて、両翼をひろげた。青い光におおわれた全身が輝きを増していく。


 そして巨大なドラゴンの身体から、膨大な魔力が嵐となって放出される。辺り一帯に群生した樹木が紙切れのように吹っ飛んでいき、地形を変えるほどの破壊が巻き起こる。


 綾乃は死を覚悟した。自分の探索者としての人生は、ここで終わるのだと。


 しかし視界が暗闇に閉ざされる。急に真っ暗になったので、綾乃はわけがわからなくなった。


 それはミヨリが足元から飛び出させた防壁だ。影によって形作られた黒い壁がミヨリと綾乃、それにドローンカメラを四方から包んで外部にある破壊の嵐から遮断させている。


 綾乃はまだ自分が生きていることが信じられず、魂が抜けたみたいに立ち竦む。


:いきなり画面が真っ暗に……!

:なんだぁ! どうなってんだぁ!

:ドラゴンが光って嵐を起こしてなかった?

:信じられない魔力量をともなった嵐だ……!

:たぶんミヨリンが影から出した壁で自分たちを包み込んで防御してるっぽい!

:ブルードラゴンがバリアを展開してたように防壁をつくってんのか!

:触手を生やすだけじゃなくて壁まで出せるのかよ!

:デカイ犬も出してたしね!

:ミヨリちゃんのスキルが万能すぎる!

:ていうかすげぇ音がしてる!

:台風よりもデッカイ音!

:画面越しでも耳をふさぎたくなる!


 防壁の向こう側から叩きつけられる激しい風鳴りが徐々に弱まっていき、嵐が過ぎ去っていく。


 敵の猛攻を凌ぐと、ミヨリは築いた防壁を足元の影のなかに戻した。


「なっ……」


 周りの景色がひらけると、綾乃は絶句した。


 緑であふれていた草原が荒廃している。数えきれないほどの樹木の残骸が散らばり、そこらじゅうの大地がえぐれて、広範囲にわたって破壊の爪痕が刻まれていた。


:なんだよこれええええええええ!

:周りの木がぜんぶ吹っ飛んどる……!

:近くに森とかあったのに、丸ごとなくなってる!

:地上だったら都市が崩壊してるレベルだろ!

:災害そのものやん!

:いくらミヨリ様でも、これはどうにもならないだろ……!


 破壊しつくされた異界の景色が映し出されると、コメント欄も恐慌をきたす。ミヨリたちが敵対しているブルードラゴンが桁違いの怪物であることを改めて視聴者も認識させられていた。


「こんなものを見せられても、まだ挑むつもりなのか?」


「もちろんだよ。逃げることはドラゴンさんが許してくれないからね。それに……」


 ミヨリは薄笑いをつくりながら、ブルードラゴンを仰ぎ見る。


「黒野スミレちゃんなら、ここで逃げたりしないよ。スミレちゃんはね、どんな強敵にだって挑んでいく絶対無敵の存在なんだよ。例え相手がドラゴンでも、スミレちゃんなら戦っているはずだよ」


:黒野スミレのやべぇファン!

:え? ちょっ……この子なに言ってんスか?

:誰かこの子にゲームと現実は違うって教えてあげろ!

:ミヨリぃ! 現実とゲームはちげぇからな! 正気に戻れぇぇぇ!(父より)

:お父さんが教えてる!

:お父さんの言うとおりだから!


 憧れの黒野スミレのことを思うと、頭のなかから幸せ成分があふれてくる。そんなミヨリに必死に呼びかけるコメントが高速で流れていた。


 そして大破壊を巻き起こしたドラゴンを前にしても微笑んでいるミヨリを見て、綾乃はドン引きしている。





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