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 異界の草原を突き進んでいくと、強化オーガたちが次々と襲撃を仕掛けてきた。それら全てをミヨリはデコピンだけで片づけていき、短時間で光の柱まで近づいていく。


:異界でもデコピンジェノサイドwwww

:今回の生け贄は強化オーガwwww 

:異界ってこんな簡単に進んでいけるものだっけ……?

:絶対進めない! この配信が異常なだけ!

:俺の知ってる異界とは違う……


 ありえないミヨリの快進撃に様々なコメントが書き込まれていく。同接の勢いも止まらずに伸びつづけていた。


 そのことに緊張しながら歩いていたミヨリだったが、はたと立ち止まる。


「どうしたミヨリ?」


:どうしたのミヨリちゃん?

:ミヨリ様……?

:なんだ? どうした?


「…………」


 同行している綾乃やスマホに表示されるコメントが呼びかけてくるが、ミヨリは黙り込んでいる。


 前を向いたまま足元の影から複数の触手を伸ばすと、それを綾乃の身体にまきつける。頭上に浮かぶドローンカメラにも触手をからみつかせた。


「ひゅわっ!」


 いきなりのことに綾乃は悲鳴をあげる。


:ちょっ、なにしてんの!

:どうした宮本っ!

:なにしてんだ宮本っ!

:いや! マジでなにしてんのミヨリン!

:ミヨリ様! とうとう正気を失われましたかっ!


 コメント欄もパニックになっているが、今は相手にしない。


 遠くのほうでチカッと閃光がまたたく。その直後には、津波のような巨大な青い光の斬撃が目前まで迫ってきていた。


 綾乃とドローンを触手で拘束したまま、ミヨリは横に跳ぶ。光の斬撃は轟音を立てながらミヨリの真横を通過していき、遙か後方で爆発して砂塵を舞いあがらせた。


:うええええぇぇぇぇ! なんだぁ今のぉぉぉ!

:速すぎて見えん!

:カメラもブレブレだったし!

:斬撃だ! 光の斬撃が飛んできた! 

:探索者ニキ解説ありがとう!

:どこから撃ってきてんだ?

:超遠距離からとしかわからん!

:それを事前に感知してよけたミヨリちゃんって……

:神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神!!!(大親友)

:大親友wwww

:だからムラサメちゃんとカメラに触手をまきつけたのか!

:説明くらいしろよビビるわwww

:説明してる時間がなかったんだよ……たぶん

:誰だ! ミヨリ様が正気を失ったなどと疑った不届き者は! 俺だぁ!

:↑おまえかいwwww


 無数のコメントが流れていく一方で、またしても遠方で閃光がまたたく。しかも今回は一度だけではなく、何度も閃光が発せられた。


 いくつもの青い光の斬撃が重なるようにして連続で撃ち込まれる。


 ミヨリは止まらずに動き続けることで、間髪入れずに飛んでくる光の斬撃をかわしていく。


:すっげぇ! これぜんぶよけてんのかぁ!

:たくさん津波みたいな斬撃が押し寄せてきてるのに当たらねぇ!

:またムラサメちゃん触手にブン回されてるwwww

:ホントだ! 「ひゅわあああああああああ!」って聞こえてくるwww

:カメラにもチョイチョイ映ってるwwww

:こんなときに笑わせんなwww

:どんんだけブン回されるんだよwwww

:それがムラサメちゃんの仕事なのでwww

:仕事にすんなwwww


 光の斬撃が飛んでくる方角にミヨリは視線を向けると、人差し指を立てて火を灯した。飛んでくる斬撃をよけつつ、前方を指差して数発のファイアーボールを撃ち込む。


 遠方でいくつかの爆炎が弾ける。猛烈な勢いで飛んできていた光の斬撃が止まった。


:まさかこの距離から敵を狙い撃ちしたの!

:どんだけ感知スキルの範囲が広いんだよ!

:スナイパーかよ……!

:もはや人間技じゃねぇ……!

:ミヨリ様はやべぇ女だから……

:この世にいるかぎりミヨリちゃんから逃れることはできないんだよ(大親友)

:ナチュラルに怖いこと言うなwww


 ミヨリはクスリと微笑むと、両足に力を込めた。


「あそこだね。見つけ……た!」


 膝のバネを使って地面を蹴って草原のなかを疾風のごとく駆け抜けていき、攻撃を仕掛けてきた相手のもとまでたどりつく。影の触手に引っぱられる綾乃の「うああああああああ!」という叫び声が響き渡った。


 ミヨリの目の前には、驚愕する青いオーガがいた。


 異界にいる強化種のオーガだ。だけど他の強化オーガたちよりも大柄で、全身に鋼の鎧を装着している。


 その右手には、青い輝きを帯びた一振りの剣を握っていた。まるでゲームに出てくる聖剣みたいに意匠が凝っている剣だ。あの青い光の斬撃を放っていたのは、この剣でまちがいない。


:急に画面が切り替わった???

:なんだ? どうなってんだ?

:たぶんミヨリンがムラサメちゃんとドローンカメラを持ったまま超速ダッシュしたんだ!

:速すぎて瞬間移動したみたいになってたのか!

:スピードおかしすぎる!

:ていうかオーガ!

:他のオーガたちとは違うぞ!

:鎧着てる!

:青く光ってる剣を持ってる!

:あの青い剣で斬撃を飛ばしてたのか!

:めっちゃビビってね?

:超遠距離にいたはずのミヨリ様が一瞬で目の前まで来たからね!

:ホラー映画よりこぇぇえよ!


 いきなり肉薄していたミヨリに唖然とするオーガだったが、すぐに戦意を取り戻して青い剣で斬りかかってくる。


 でも遅い。ミヨリは足元の影から更に触手を伸ばすと、臨戦態勢に入ったオーガを拘束し、青い剣にも触手を巻きつかせて身動きを封じる。


「その剣、あぶないね」


 ミヨリがうっすらと微笑みかけると、オーガは「グゥッ……!」とうめき声をあげて身を震わせる。


 青い剣にからめた触手に力を入れる。


 ピキッ、ピキッピキッ……!


 青い剣に亀裂が走っていく。


 亀裂は徐々に大きくなっていき、そしてバキンッと音が鳴った。青い剣が折れて、その断片が地面に落ちる。


:出た! 剣破壊!

:剣を破壊するの定期!

:ミヨリ様の得意技!

:どんな得意技だよwww

:強そうな剣だから壊すのもったいないな……

:あの剣があれば、ミヨリちゃんも光の斬撃を放てたかもしれないのに……


 青い剣が破壊されたことが信じられないのか、オーガは目を見張っている。


「グガアアアアアアアア!」


 それでも抵抗しようとミヨリにつかみかかろうとするが、全身にからみついた触手によってまともに動くことができない。


「ぼん!」


 至近距離でオーガを指差して、ファイアーボールを撃ち込む。


 真っ赤な爆炎が炸裂した。装着していた鎧ごとオーガの上半身が吹き飛ぶ。黒煙をあげながら、残された亡骸が地面に倒れる。


:このオーガも瞬殺!

:こいつ他のオーガとは明らかに違ってなかった?

:確かに何かおかしかったな

:中ボスポジション的な?

:異界のモンスターですら誰もミヨリちゃんの相手にならなくて草

:やばいやばいとは思っていたが、想像を遙かに超えたやべぇ女だ!


 青い剣を破壊してオーガを吹き飛ばしたことで、コメントの流れが加速する。書き込みが増えたのを確認して、ミヨリは口元に笑みを浮かべた。


「ミ、ミヨリ~! は、早く! 早くこの触手をほどいてくれぇぇ!」


 すぐそばでは影の触手が身体にからみついたままの綾乃が、泣きそうな顔になって解放を求めていた。


:そういえばムラサメちゃん触手にからまれたままだったwww

:あの触手よっぽど気持ち悪いんだな

:ムラサメちゃんが触手に……じゅるり!

:↑おまわりさんコイツです!


「もう大丈夫だよ、ムラサメちゃん」


 綾乃とドローンカメラを解放すると、自分の影のなかに触手を引っ込める。


 拘束を解かれた綾乃は青ざめながら「ハァハァ」と浅い呼吸を繰り返す。精神的に一杯一杯のようだ。


 そんな綾乃を心配して、ミヨリは声をかける。


「よっぽど怖かったんだね」


「……あぁ、本当に怖かった……」


:ムラサメちゃん飛んでくる斬撃よりもミヨリちゃんの触手のほうが絶対怖かっただろwwww

:ブン回されてたしwwww

:会話が噛みあってねぇぞオイwww

:異界のモンスターよりもミヨリ様のほうが怖かった件wwww


 コメントからツッコミが入りまくる。


 もしかしたら綾乃のことをちょっと乱暴に扱いすぎたかもしれないと、ミヨリは反省する。


 綾乃の呼吸が整うと、一緒に歩き出して異界の攻略を再開する。


 光の柱は、もうすぐそこだ。





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