【番外編】精霊様は、此処にいた……!
私はルキディア王女の肩にちょこんと乗っている。
見た目は、純白のように白い毛を携えたモフモフボディに、特徴的な少し灰色をした長い耳が二本。
瞳は虹色に輝いていて吸い込まれてしまいそうなほど美しい――と、いわれている。
重さはない。
なぜなら、精霊だからだ。
私は、過去に傷ついたところをルキディア王女に救われてから、見守っていた。
ただ、驚かれるかもしれないから隠匿魔法で姿を消している。
彼女は、学校を卒業してからモフモフライフを夢見ていた。
今日は、レイという男の護衛と私の庭であるモフモフの棲家へきている。
彼女が好きそうな白いモフモフをまとった兎が近づいてきた瞬間。
私の中で、いままで感じたことのない感情が膨れ上がる。
――気づいたら、兎を威圧していた。
『この娘に近づくこと許さぬ……』
顔面蒼白で逃ていく兎と、放心するルキディア王女に気が付いて我に返る。
脇目も振らず逃げ出した、私よりはモフモフボディではない後ろ姿と、レイに慰められるルキディア王女。
やってしまったと思った。
ただ、それ以降も威圧は止められず、肩を落とすルキディア王女に申し訳なく耳が垂れる。
◇ ◇ ◇
次は、ルキディア王女たちが遺跡に赴いたとき。
モフモフに懐かれるという魔道具ヘレイリオをつけた瞬間。
私の気持ちは昂った! なんだろうか、この感情は……これが、魔道具ヘレイリオの力だと気づいたとき。
私の威圧は一時的に半径10メートルへと伸びていた。
しゃがみ込むルキディア王女は、チャコラという獣人の娘に泣きついている。
またも、申し訳無さに私の自慢である耳が垂れた。
◇ ◇ ◇
最後は、まさかの私が気紛れに助けた人魚たちへ残した首飾りを再び見る機会が訪れる。
今更すぎて姿を見せられなかったルキディア王女へ良い機会だと、私は顕現してみせた。
実際は、ルキディア王女の肩から祭壇の前へと移動しただけに過ぎない。
私は、言いたかったことを口にして満足した。
◇ ◇ ◇
そして、最後のとき。
ついにルキディア王女へ姿を見せられて、最初の一言を口にした瞬間――。
『キュゥゥ……キュッ、キュキュ』
これは、誰の言葉だ?
私のすぐそばから聞こえてくる愛らしい鳴き声。
私は耳を疑った。
だが、ルキディア王女の反応からして私だと分かる。
まさか、人の子の言葉を介せなくなっていたなんて……。
あのとき祭壇ではしっかりと会話をした。
なのに、何故……。
ただ、ルキディア王女も喜んでいるから一旦考えることをやめた。
私も半年以上ルキディア王女と生活して、気持ちを抑えられるようになる。
そんなとき、彼女にお願いされた。
ついに、そのときがくる。
「精霊様、宜しいですか?」
ルキディア王女へ再確認されるほど、私は独占欲の塊だったようだ。
私は小さくうなづき、力を弱める。
すると、ルキディア王女たちが何度も口にしていた半径5メートルを過ぎた。
当然、威圧をしていない私はか弱いモフモフたちを怖がらせないよう姿も消している。
大サービスで気配も消すという、我ながら完璧だ。
精霊の加護を与えた私は、本当なら彼女の笑顔を守りたかったのに……。
だいぶ先回りさせてしまった――。
モフモフに囲まれて、愛でるルキディア王女はレイと婚約を結んだときと同じ幸せな笑顔を浮かべて私を抱きしめてくれる。
ああ……ようやく、彼女を幸せに出来た。
実は、精霊様はこんな感じだった!
というシーンを一部抜粋して書いたオマケになります。
少しでも可愛いと思って頂けたら嬉しいです。